KYOWA KIRIN

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【鉄則その8】 定常状態平均薬物血中濃度&最高最低血中濃度

定常状態平均薬物血中濃度はバイオアベラビリティ×塩係数×投与量/投与間隔を分布容積×消失速度定数で割って求める。定常状態最高最低血中濃度は平均血中濃度に1回投与時の血中濃度振幅の半分を足す、あるいは引くことで求める。

CASE

加藤さんは男性60歳、体重60kg、本態性高血圧です。公務員の加藤さんは50歳から降圧薬を服薬しています。肝・腎機能は正常でお酒は飲みませんが、タバコはどうしても止めることができず、現在も30本/日の喫煙を続けています。今年いっぱいで定年の加藤さんは、第2の職場を目指して体調コントロールに燃えていますが、タバコはやめる気がないらしいです。

[処方内容]

  1. ベニジピン塩酸塩錠4mg
    1錠
    1日1回 朝食後 服用
    14日分
  2. ジゴキシン錠0.25mg
    1錠
    1日1回 朝食後 服用
    14日分

「加藤さん。ごはんはおいしく食べられていますか?」
「うん、食欲不振なんてどこの話かと思うくらい食事がおいしいね」
「それはいいことですね」
「食後の一服は特においしいから、今日も絶好調です」
「そうですか! どうやらジゴキシン中毒はなさそうですね」
「なんだ、食欲の質問は副作用チェックだったのですか」
「そうですよ。ところで加藤さん、血圧はいかがでしたか?」
「はい、ちゃんと下がっています。今日は130/80mmHgで、先生にほめられました」
「それは良かったですね。処方は前回と同じですね」
「はい、そうです」
「先日あった、むくみはとれたようですね」
「体重が落ちてきて、大分軽くなったような気がします」
「前回から、ジゴキシン錠0.25mgが投与されたのでしたね。心臓の様子はいかがですか?」
「大分、楽になりました」
「前回は心不全を合併していて、心胸郭比(CTR)は63%でしたね」
「はい、"少し心臓が大きくなっている"と言われました」
「今日、X線写真は撮らなかったのですね」
「はい、レントゲンはなしですが、心電図はとりました。"大丈夫"とのことでした」
「そうですか、良かったです」
「今日は前回から出ている新しいくすりの血中濃度をはかるとかで、採血がありましたよ」
「そうですか。ジゴキシンの血中濃度ですね」
「どうして血中濃度をはかるのですか? ほかのくすりはそんなことしないのに」
「ジゴキシンというくすりは、血中濃度が狭い振り幅で効いているのです。だからその振り幅を超えると中毒になるし、下回ると効かなくなるから、血中濃度を振り幅のなかにおさめないとならないからですよ」
「なるほど、そうなのですか」
「採血の結果、もし振り幅を超えていたら、先生から電話がいくと思いますので、今回は0.25mg1錠を今まで通り飲んでくださいね」
「はい、わかりました」
 とのことでした。

薬物動態解析

 さて、加藤さんのジゴキシン定常状態平均血中濃度Cssaveおよび定常状態最高血中濃度Cssmax、最低血中濃度Cssminはどのくらいなのでしょうか? 血中濃度を推測し、評価をしてみましょう。

定常状態平均血中濃度の求め方

 定常状態とはどういう状態でしょうか? それは、体循環に入ってくる1時間当たりの薬物投与量が、体外に出ていく1時間当たりの薬物消失量に等しい状態をいいます。つまり、

F×S×Dose/τ = Cssave×CL

F:バイオアベイラビリティ
S:塩係数
τ:投与間隔時間
CL:薬物クリアランス

です。ここから、定常状態平均血中濃度Cssaveについてみると、

Cssave =

F×S×Dose/τ
CL

となります。ここに出てくる薬物クリアランスCLは、くすりが分布する場所Vdから1時間当たり、どのくらいの薬物が消失するかという値です。ここでさらに、1時間当たりに消失する薬物の割合を表す消失速度定数Kelという薬物動態値が登場します。すなわち、薬物クリアランスCLは分布容積Vdと消失速度定数Kelの積として表すことができます。

CL = Vd×Kel

従って、定常状態平均血中濃Cssaveは、

Cssave =

F×S×Dose/τ
Vd × Kel

と表すことができます。
 ところで、消失速度定数Kelは、1時間あたりにくすりが消失する割合を表し、消失半減期t1/2とは反比例する次のような関係にあります。つまり、消失半減期がわかれば、消失速度定数Kelの推測は可能です。

Kel =

0.693
1/2

定常状態最高・最低血中濃度の求め方

 ところで、平均血中濃度Caveだけで判断できることは少ないのです。そこで定常状態血中濃度および最高・最低血中濃度が必要になる場合が多くなります。それはどうして求めるのだろうか? 定常状態最高血中濃度Cssmaxは定常状態平均血中濃度Cssaveに1回投与時の血中濃度のふり幅の半分を足し、逆に、定常状態最低血中濃度Cssminはふり幅の半分を引いて得られます。つまり下記の通りです。

Cssmax&Cssmin = Cssave ±

F×S×Dose
Vd

×


加藤さんの血中濃度の推測

 ジゴキシンの薬物動態値を示します。

  • 1. 治療域:0.8~2.0μg/L
        (CHF:慢性心不全 0.5~1.0μg/L)
  • 2. 消失速度定数Kel:0.017/hr
  • 3. 分布容積Vd:9.5L/kg
  • 4. バイオアベイラビリティF:0.75
  • 5. 塩係数S:1.0

 ここから、まずは加藤さんのジゴキシン定常状態平均血中濃度を求めてみましょう。

Cssave =

  F×S×Dose/τ 
Vd × Kel

          

  0.75×1.0×0.25mg/24hr  
9.5L×60kg×0.017/hr

  0.8μg/L = 0.8ng/mL

 慢性心不全(CHF)の場合の治療域は0.5~1.0μg/Lですので、ちょうどよい血中濃度です。次いで、定常状態最高血中濃度Cssmaxと定常状態最低血中濃度Cssminを求めてみましょう。定常状態平均血中濃度Cssaveは0.8μg/Lなので、下記の式で計算できます。

Cssmax

     

= 0.8μg/L +

   0.75×1.0×0.25mg  
9.5L×60kg

 ×

  1 
  2 

= 0.8μg/L + 0.00016μg/L = 0.80015μg/L


Cssmin

     

= 0.8μg/L -

   0.75×1.0×0.25mg  
9.5L×60kg

 ×

  1 
  2 

= 0.8μg/L - 0.00016μg/L = 0.79984μg/L

 これで、加藤さんのジゴキシンの血中濃度の振り幅は、Cssmin~Cssmax=0.799μg/L~0.800μg/Lだとわかりました。振れ幅は非常に小さく、定常状態平均血中濃度付近で推移していくことがわかります。これは、ジゴキシンの分布容積Vdが9.5L/kgと非常に大きいので、血中濃度の振り幅が小さくなるためです。つまり、血中濃度の振り幅の律速は分布容積だということです。
 こうして得た、加藤さんのジゴキシン定常状態平均血中濃度および定常状態最高・最低血中濃度の推測値は、加藤さんの検査結果の評価に役立ちます。
 このように、定常状態平均血中濃度および定常状態最高・最低血中濃度を推測ことは大切であり、多くの有用な情報を得ることができます。

結論

  • 定常状態平均薬物血中濃度Cssaveは下記の式で表される。

      

    Cssave =

      F×S×Dose/τ  
    Vd×Kel

  • 定常状態平均血中濃度に単回投与時の血中濃度の半分を足すと、定常状態最高血中濃度になり、半分を引くと定常状態最低血中濃度になる。

      

    Cssmax&Cssmin = Cssave ±

      F×S×Dose  
    Vd

     ×

      1 
      2 

  • 消失速度定数は単位時間当たり、くすりが消失する割合であり、消失半減期と反比例し、 Kel=0.693/t1/2 の関係にある。

コラム

消失速度定数と消失半減期の関係

 一次速度過程が成立するくすりの消失は片対数グラフ上の下向き直線で示されます。この直線の傾きが消失速度定数で、大きい(傾きが急)とくすりは早く消失し、小さいとゆっくり消失します。In10とIn5の縦軸の大きさはIn10-In5で、横軸は血中濃度が半分になっているので、t1/2です。従って、消失速度定数Kel=(In10-In5)/t1/2になります。

Kel =(ln10/5)/t1/2 = In(2/1)/t1/2
        =(In2―In1)/t1/2 =In2/t1/2 =0.693/t1/2

このように、消失速度定数は

Kel = 0.693/t1/2

となり、消失速度定数は比例定数0.693で消失半減期と反比例する関係になります。つまり、消失半減期がわかれば消失速度定数がわかります。

図1消失速度定数Kelは消失半減期と反比例

消失速度定数Kelは消失半減期と反比例 消失速度定数Kelは消失半減期と反比例

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