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がん薬物療法に携わる薬剤師

2017年03月07日登載/2017年01月作成

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  • 岸野 亨 先生

    岸野 亨 先生

    埼玉医科大学病院 薬剤部 部長
    (元埼玉医科大学総合医療センター薬剤部 部長)

  • 佐野 元彦 先生

    佐野 元彦 先生

    埼玉医科大学総合医療センター  薬剤部主任
    がん指導薬剤師、
    がん専門薬剤師、
    緩和薬物療法認定薬剤師

外来化学療法における診察前面談や "治療日誌"を活用して
がん患者の副作用を把握し、処方提案につなげる

【県内唯一の高度救命救急センターを持つ救急の拠点】
埼玉医科大学総合医療センター

埼玉医科大学総合医療センターは、1985年の開院以来、川越市を含む埼玉県中央部の二次医療圏最大規模の中核病院として機能している。県内唯一の高度救命救急センターを持ち、埼玉県のドクターヘリ基地病院として救急の拠点となるほか、総合周産期母子医療センターも併設しており、日常の診療から高度医療まで住民に頼りにされる存在だ。

 病床数は2016年3月の救命救急センターの新棟完成により1,053床となった。36の診療科があり、外来患者数は1日約2,100人に上る。

がん医療に関しては2007年に地域がん診療連携拠点病院に指定され、罹患者数の少ない種類のがん患者やさまざまな疾患を併発しているがん患者にも積極的に対応している。

【1993年より病棟の薬剤師常駐を推進】

 同センター薬剤部の特筆すべき活動として挙げられるのが、20年以上前から病棟業務を重視してきたことだ。すでに1993年末から産婦人科で1日8時間病棟業務を開始し、以来、常駐する病棟を徐々に拡大してきた。産婦人科病棟で最初に病棟薬剤師となったのが岸野亨氏。「就職以降、薬剤師は病棟でも専門性をアピールできると考えていましたが、服薬指導やミキシングのような想定内の仕事だけでなく、それ以上の貢献ができるのではと思い、病棟担当になったときから8時間常駐して、仕事を創り出すようにしてきました。そして、徐々に回診や治療の立ち会い、患者さんの相談などが増えてきました」と薬剤師の病棟業務の幅を拡大してきた当時を振り返る。

 その後、2000年に病棟薬剤師の配置が一気に進み、2004年から全病棟に8時間常駐となった(図1:形成外科は2007年に新病棟として独立)。「セーフティマネジメントへの意識が高くなり"安全で質の高い医療を提供し、地域から信頼される医療機関を目指す"という基本理念のもと、職員全員が一致団結して医療安全に取り組みました。私を含めて薬剤師の意識も向上し、病棟業務や注射薬の調剤のチェック機能もレベルが上がったと思います」(岸野氏)。

 現在では新設の病棟も含めてすべての病棟に薬剤師が1名常駐し、病棟の医療チームの一員として、なくてはならない存在となっている。また、後述するように、患者への薬の説明、レジメンの管理や登録、注射用抗がん剤の払い出しや調製はすべて薬剤師が責任を持つ仕組みができ上がっている。
 さらに、薬剤部で注射薬リスクマネジメント集を作成したり、病棟スタッフの薬の勉強会を主宰するなど、病棟における医療安全への新たな取り組みはいまも継続している。

図1 埼玉医科大学総合医療センターにおける薬剤師の病棟業務の拡充

埼玉医科大学総合医療センターにおける薬剤師の病棟業務の拡充

※埼玉医科大学総合医療センター薬剤部ホームページより作成

写真1

薬剤部内の入院注射薬混合室

薬剤部内の入院注射薬混合室。
入院患者の抗がん剤はすべてここで調製する。

【外来化学療法における薬剤師の問診が好評】

 同センターのがん医療を引っ張っているのが、日本医療薬学会のがん指導薬剤師、がん専門薬剤師、日本緩和医療薬学会の緩和薬物療法認定薬剤師、日本静脈経腸栄養学会の栄養サポートチーム専門療養士の資格を持つ、佐野元彦氏である。2006年に埼玉県立がんセンターから転職してきた直後から外来化学療法室の立ち上げを担当し、同年10月のオープン以来、外来化学療法に携わっている。

 外来化学療法室は15床で、佐野氏を含む薬剤師3名と看護師7名が担当し、医師は常駐していないが、各診療科からその日の緊急時対応担当医があらかじめ決められている。化学療法は、初回は入院で導入し、その後は外来で対応するのが原則となっており、1日平均28件、月650件ほどを受け入れている(写真2写真3写真4)。

 外来化学療法を受ける患者には、採血後に血液検査の結果が出るまでの約40分を利用して、外来化学療法室にて薬剤師と看護師が面談を実施している(写真5)。面談時にはすべての患者で、バイタル(体温、血圧、動脈血酸素飽和度など)を測定し、有害事象の有無等を確認する。とくに経口内服抗がん剤については薬剤師が内服の状況を聞き、有害事象の発現状況などを確認している。「この面談の結果を担当医に書面や電話で伝えます。例えば、血液検査のデータの変化で気になる点についてコメントを入れたり、味覚障害の訴えがあれば血中亜鉛濃度の測定を提案したりします」。薬剤師や看護師からの情報を参照して担当医が検査や診察項目を追加することも多く、「医師が頼りにしてくださっているのを感じます。また、患者さんにも"医師の診察時よりゆっくり話せる"と好評です。私たちも自宅での様子や気になることなどを含めた患者さんの状況を深く継続的に知ることができ、有益な情報を得られます」(佐野氏)。がん患者指導管理料3の算定となるケースも多い。

 患者に対する電話でのフォローをまめに行うことも患者や医師からの信頼を厚くしている。オピオイド開始時は服薬から3日目くらいに電話をかけ、服用の確認、眠気、吐き気・嘔吐、ふらつきや便秘などの副作用をチェックする。「電話でオピオイド服用後に副作用を訴えた遠方の患者さんに電話でアセスメントして来院までの数日間、OTCを代替薬として服用してもらい事なきを得たこともあります」。担当医との間で薬の種類によっては患者さんの状況に応じて、中止しても良いケースをあらかじめ取り決めているのも特徴だ。「レゴラフェニブやトリフルリジン・チピラシル塩酸塩を服用している患者さんには1〜2週間に一度来院してもらいます。その間、電話でのやりとりによっては、医師と事前に取り決めた対応を指示することもあります」(佐野氏)。

 消化管一般外科、ブレストケア科、産婦人科、呼吸器外科、緩和ケアチーム、医療ソーシャルワーカー(MSW)とは月に1回合同カンファレンスを開催し、そこでは薬剤師や看護師が外来化学療法中の患者でさらなる介入が必要と思われるケースや有害事象の対応策などを取り上げて、情報共有をする。

 薬剤部では、抗がん剤のセット準備は、薬歴の記載と集計表作成が1名、医薬品集計表に基づく集計作業が1名、調剤と監査で各1名の合計4名の薬剤師が携わる。また、ミキシングの際には2名の薬剤師が調製と払い出し時に目を通している。院内の注射抗がん剤は年間365日薬剤師が調製しているのも特徴だ。

写真2

外来化学療法室

病院の3階のエレベーターホールのそばに位置する外来化学療法室

写真3

写真4

写真5

外来化学療法室内の問診を行う面談室

外来化学療法室内の問診を行う面談室。
緩和ケアチームとともに"がんの治療と痛みの相談室"を開設しており、
その面談もここで行う

【患者とのコミュニケーションを支えるオリジナルの治療日誌を作成】

 外来化学療法において、その継続の鍵となる副作用への対応には、患者にもかかりつけ薬局にも治療内容を理解してもらうことが欠かせない。そこで、佐野氏は若手の薬剤師数名とともに、患者が自ら体調を記入し、レジメンも貼り付けられる独自の"治療日誌"を制作した(写真6)。

 しびれや吐き気、便秘といった、抗がん剤や分子標的薬の主な副作用を危険度に応じて赤黄青の3色に分けて患者に記入してもらい、赤であれば電話連絡か受診、黄や青の症状であれば次の来院時に薬剤師や看護師が話を聞いて、医師に伝える。

 この治療日誌を開き、実際に記入することによって患者は自らが受けている治療を知り、体調との関係を把握することができる。また、レジメンそのものが貼られているため、かかりつけ薬局が服薬指導をしやすいメリットもある。

 患者が訴えた副作用の症状については口頭説明とともに薬剤部で作成したオリジナルのA4サイズのリーフレットを手渡す。このリーフレットの作成は薬学部実習生の「外来化学療法実務実習」の課題としても使われており、実習生には抗がん剤による主な有害事象から1つを選び、「自分や家族ががんになった場合にどのような情報がほしいかを考えながら、色合いや文字の大きさなども工夫してリーフレットを作成してもらいます」(佐野氏)。それを薬剤師とともにブラッシュアップし、患者に説明をさせて、フィードバックを受ける(写真7)。「中には夢中になりすぎて1時間も患者さんと話す学生もいます。そんなときには、初デートが終わり帰宅して緊張から開放されてからの脱力感を例に、服薬指導後の患者状態を説明します。すなわち、患者さんが白衣を着たほぼ初対面の医療従事者の説明に集中して耳を傾け、自分の状態を一生懸命細かく伝える作業はとてつもないエネルギーを使います。その作業から開放された後の患者さんの疲労感を想像してもらい、説明の時間にも十分配慮するようにと指導しています。」(佐野氏)。

写真6 治療日誌

治療日誌
治療日誌
治療日誌

副作用の評価は危険度により、青黄赤に色分けされている。

写真7

写真8

外来化学療法室作成のさまざまな患者向けオリジナルリーフレット

薬剤部が作成した「化学療法をお受けになる患者様へ」はじめ、
外来化学療法室作成のさまざまな患者向けオリジナルリーフレットが用意されている。

【レジメンの審査・管理で中心的役割を果たす】

 レジメンの審査や管理についても薬剤部の果たしている役割は大きい。レジメンの審査は3段階を経て行われている(図2)。第1段階は、まず薬剤部管理室が抗がん剤適正使用検討委員会の事務局として、各診療科から提出された書類の不備をチェックする。そして問題がなければ、第2段階の、医師2名・薬剤師1名による審査Bに移る。ここでは提出されたレジメンの妥当性などを精査し、結果を事務局が取りまとめて申請診療科に報告する。続いて第3段階として、抗がん剤適正使用検討委員会副委員長を含む4名の医師のうち2名と、薬剤部長・次長・佐野氏のうち1名の計3名からなる審査Cで再度審査書類をチェックし、問題がなければ同委員会委員長に報告してすべての審査結果を受け仮承認とする。同委員会は2カ月に一度、薬剤部の司会進行のもとに開催され、レジメン審査の結果や外来化学療法室の運用状況などを佐野氏から報告する。最終的には病院長も参加する診療部長会議で仮承認から承認となりレジメン登録される。

 仮承認された、あるいは承認されたレジメンの実際の使用にあたり、医師は患者一人一人についてレジメンの種類、休薬期間、予定コースや使用期間などが書かれた抗悪性腫瘍薬使用届と患者の同意書のコピーを薬剤部に提出。薬剤部ではこの書類を担当者と係長および次長がチェックし、薬剤部長が決裁して治療開始できるシステムを用いている。

 「当センターにはエビデンスの乏しい希少疾患なども来院することから、その都度、レジメンの妥当性を評価するため多くの審査員の目を通しております。この仕組みができてから、レジメン審査の質が上がると同時に、他診療科への治療に興味を示す審査員も増えました。またレジメン審査に中堅の薬剤師や医師を入れることで人材育成にもつながっています」(佐野氏)。

図2 レジメン審査の流れ

レジメン審査の流れ

※埼玉医科大学総合医療センター作成

【薬剤師としての専門性を示すことで、チーム内での存在感を増す】

 薬剤部には、現在73名の薬剤師が所属しており、そのうち日本病院薬剤師会生涯研修履修認定薬剤師は49名、日本病院薬剤師会実務実習指導薬剤師が22名(4名が2016.3.31期限)と資格取得にも積極的だ。「薬剤師の仕事へのモチベーションが上がると同時に、実習を受けた学生が勉強させてもらえると卒業後に就職を希望してくれるので、一石二鳥です」(岸野氏)。

 前述したように薬剤師が患者の副作用の状況を把握して処方提案をしたり、血中濃度測定のオーダを促したりできるのも、このような資格取得が一役買っている。「薬剤部では、日本病院薬剤師会が推奨するプロトコールに基づく薬物治療管理(Protocol Based Pharmacotherapy Management:PBPM)を実践しています。そのためには、医師や看護師に対して薬剤師は一定のスキルがあることを示す必要があると考えています。たとえば抗菌薬血中濃度測定オーダ(TDMオーダ)は、日本病院薬剤師会または薬剤師認定制度認証機構が認証した生涯研修の認定薬剤師を有し、さらに薬剤部が主催する抗菌薬血中濃度モニタリング研修会を終了した薬剤師がTDMオーダできることとして、診療部長会で承認を得ました。薬剤師がシミュレーションしたデータを見せながら投与量や投与間隔の変更、薬剤の変更、投薬の中止を医師に提案するとほぼ9割は通ります」(岸野氏)

 その一方で、緩和薬物療法認定薬剤師は3名、日本医療薬学会のがん専門薬剤師、がん指導薬剤師は佐野氏だけで、がんの専門性を高めていくのが目標でもある。佐野氏は、埼玉県内唯一のがん指導薬剤師。2012年に埼玉がん薬物療法研究会(Saitama Society of Oncological Pharmacotherapy:SSOP)を設立し、年2回、ワークショップを通じて地域のがん医療に関する認識を統一し、がん専門薬剤師、がん指導薬剤師などの資格取得を支援する活動を始めた。「様々ながん種に関する課題症例を提示してレジメン内容や有害事象の対応などを話し合い、総合討論を行います。数か月後に課題がん種の専門医師に症例解説をしてもらいます。今後は同様のワークショップをがんに関わりの薄い薬剤師にも広げ、地域のがん医療のレベルアップを図りたいと考えています。まずは現在行っているワークショップでファシリテーターを増やして、いずれは県内の各地域で研究会を開催できるようにしたいですね」(佐野氏)。

 佐野氏は子どものときからの薬害による持病の治療で医療に興味を持ち、薬学部に進学、製剤を研究していた。博士課程在籍時には急性骨髄性白血病で骨髄移植を経験した。「治療中には医師や看護師の言葉や態度に一喜一憂しました。そのときに"顔の見える薬剤師"になりたいと強く感じました」。この想いが今の佐野氏の薬剤師としての情熱を支えている。

【地域薬局との薬薬連携を推進】

 同薬剤部の今後の課題として、岸野氏と佐野氏とも地域の薬局との薬薬連携の重要性を強調。すでに地域の薬局とは、さまざまな疾患の薬に関する調剤方法や指導内容の向上(統一化も含める)のための研究会を開いている。 実際、佐野氏が経口内服抗がん剤の服薬指導の講習も行っており、治療日記も利用されている。「このような活動を数年間続けて来て、お互いの壁は少しずつ低くなってきたと感じます。ただ、研究会などに来るメンバーはいつもあまり変わらない。さらに来てもらえる人たちを広げて、地域全体でレベルアップする方法を考えなくてはなりません」(岸野氏)。

 薬剤部のモットーは"患者さんのニーズにいかに近づけるか"と"いつも笑顔で一生懸命"。「患者さんと医療スタッフから信頼される薬剤師になっていくには、病院の中で何ができるのかをみんなでもっとアイデアを出し合い、薬剤師がいろいろな分野に首を突っ込んでいきたい」と熱く語る岸野氏。同センターで薬剤師が活躍するフィールドはますます広がりそうだ。

KK-17-01-17048

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