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がん薬物療法に携わる薬剤師

2017年05月18日登載/2017年05月作成

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  • 奥田 真弘 先生

    奥田 真弘 先生

    三重大学医学部附属病院
    薬剤部 薬剤部長
    教授

  • 岩本 卓也 先生

    岩本 卓也 先生

    三重大学医学部附属病院
    薬剤部 副薬剤部長
    准教授

  • 日置 三紀 先生

    日置 三紀 先生

    三重大学医学部附属病院
    薬剤部 がん薬物療法管理室主任
    がん専門薬剤師
    妊婦・授乳婦薬物療法認定薬剤師

がん薬物療法管理室にがん薬物療法業務を一元化
専門薬剤師育成、患者指導充実など教育・臨床両面に成果

【より安全に効果的に実施することを目的にがん薬物療法の業務を一元管理】
三重大学医学部附属病院
奥田 真弘 先生

奥田 真弘 先生
「教育的視点で業務体制を見直すことは薬剤師のキャリアプランの構築にもつながり有意義だと感じています。また、教育体制をしっかり構築したうえで増員することも肝心です」

日置 三紀 先生

日置 三紀 先生
「小児がんに対しては小児薬物療法認定薬剤師が中心となり、抗がん剤や支持療法薬の晩期毒性に考慮しながら薬剤の投与量、期間などについての処方提案を行っています」

 140年の歴史を持つ三重大学医学部附属病院(685床・伊藤正明院長)は「最先端医療が安全に受けられる患者様中心の病院」を基本コンセプトに診療機能の充実を図り、2012年1月には新病棟を、15年5月には新外来棟を相次いでオープンし、名実ともに"三重県の医療における最後の砦"としての役割を果たしている。これに伴い、がん医療においても質的向上と量的拡大の両面からの整備がさらに進められ、がんの診療機能を集約したがんセンターでは「多職種・多業種の連携」をベースに日々の診療活動に取り組んでいる。

 一方、三重県では医師を核に緊密な地域連携が構築されており、がんに関しても進行がんや希少がんに罹患した患者は県内各地の医療機関から「都道府県がん診療連携拠点病院」と「小児がん拠点病院」に指定されている同大学病院に送られてくる。そのため、入院患者の6割以上をがん患者が占める。こうした背景の中、薬剤部でもがんにかかわる薬剤業務の比重が年々大きくなっており、「要所となる部署にはがん専門薬剤師など専門資格を取得した者を配置しています。また、診療報酬の面においても他の領域より先行しているため、薬剤部ではがん医療をパイロット的な存在として位置づけ、インフラを含め診療体制の充実に力を注いでいます」と薬剤部長の奥田真弘氏は語る。

 薬剤部では新外来棟が完成したのを機に15年8月に「がん薬物療法管理室」を新設し、がん薬物療法にかかわるすべての業務(レジメン審査・管理・監査、抗がん剤の調剤・調製、患者指導など)を一元管理し、化学療法をより安全に効果的に実施できるよう努めている。この部署ではがん専門薬剤師である主任の日置三紀氏のもと6名のスタッフが活動しているが、固定されている薬剤師は日置氏のみで、残りの6名(常勤1名、1年目2名、2年目2名、レジデント1名)は2~4カ月単位で各部署をローテートする業務形態をとる。その理由について奥田氏は「薬剤部に在籍している57名の薬剤師のうち、1年目が13名、2年目が9名と若手が多く、レジデントも5名います。そのため人材育成も喫緊の課題となっており、15年に教育的視点を重視した業務体制に再編成しました」と説明する。

 オールラウンドプレイヤーをまず育成するために、1、2年目の薬剤師とレジデントは各部署を短期間で何度も回りながら、さまざまな薬剤業務をまんべんなくトレーニングできる仕組みに変更したのだ。ちなみに、若手薬剤師の配置を決めるのは各部署の責任者である8名の主任たちで「一人ひとりの経験や力量に応じてきめ細かく配置してくれるので、確実に人材が育っています」と奥田氏は評価する。

【がん薬物療法に早期から従事できるメリットを専門薬剤師の育成につなげる】

 日置氏によると、2年目の薬剤師はすでに全員が一通りのがん薬物療法管理室の業務を経験しているので即戦力になるとともに1年目やレジデントの教育係としての役割も担ってくれているという。「抗がん剤の調製業務には1年目の秋から従事してもらいます。最初のローテートでは調製技術をまず教え、レジメン監査まで経験させています」と日置氏は説明する。最終的には患者指導や処方提案にもかかわれる薬剤師の育成をめざしているため、外来化学療法室のベッドサイド業務も指導法を工夫しながら早めに体験させている(写真1)。

 「外来化学療法室では、その場で患者さんの状態や状況を把握したうえで、ニーズを的確に捉えて介入する必要があり、さらに介入後のフォローも入院と違って十分にできないため、経験の少ないがん種ではとても難しい面があります。そこで、若手薬剤師にはできるだけ病棟でサポートしたことのあるがん種の患者さんを受け持ってもらうようにしています」(日置氏)。また、タイミングが合えば同じ患者を継続的にサポートさせることもある。

岩本 卓也 先生

岩本 卓也 先生
「免疫チェックポイント阻害薬をはじめ新しい機序の薬剤が登場し、発現予測が難しい副作用への対応も迫られています。これからはリサーチマインドを持つ薬剤師が一層求められてくるでしょう」

 「中央業務以外の業務を比較的早い時期から経験できるシステムのメリットを生かし、ある特定の分野においてリーダーとなるような専門薬剤師の育成にもつなげていきたいと考えています」と奥田氏は語る。薬剤部ではもともと専門薬剤師の育成に熱心に取り組んでおり、がん分野に限っても日本医療薬学会がん専門薬剤師研修施設、日本病院薬剤師会がん薬物療法認定薬剤師研修施設に認定され、院外からの研修生も多数受け入れてきた。16年末現在、がん指導薬剤師1名、がん専門薬剤師3名、がん薬物療法認定薬剤師1名、緩和薬物療法認定薬剤師1名、小児薬物療法認定薬剤師1名等、多数のスペシャリストが在籍している。

 副薬剤部長でがん指導薬剤師として後進の育成にあたる岩本卓也氏は、「専門薬剤師をめざす者には資格取得に必要な症例を確保できる病棟に配置するなど考慮しています。また、資格審査では患者にどう介入したのかを問われますが、そうした審査ポイントがしっかりわかっている専門薬剤師から指導が受けられることも大きなメリットの一つです」と話す。14年に他院から移ってきた日置氏は「ここは専門薬剤師の資格を取得するうえで指導者、設備体制ともに恵まれていると強く感じました。若手薬剤師の中には自分が専門薬剤師になれると思っていない人もいますが、このような環境が用意されているからこそ、早めに意識してもらえるよう資格取得をめざすことを積極的に働きかけています」(日置氏)。

写真1

写真1

新外来棟の新設を機に外来化学療法室のスペースも拡大され、
病床数が13床から33床に増床された。
すべてのがん種に対応し月500~600件の治療を実施する。

【保険薬局薬剤師を対象とした勉強会「レジメンカフェ」で顔の見える関係に】

 一方、入院患者の6割以上をがん患者が占める中、専門薬剤師をめざす者に限らず、どの薬剤師にもがん薬物療法にかかわる専門知識は不可欠となってくる。そこで薬剤部では、とくに若手薬剤師が必要な知識を学ぶことができるようさまざまな研修の場を利用している。「たとえば、緩和ケアは緩和薬物療法認定薬剤師が全職員を対象に定期的に実施している研修会(院内緩和ケアセミナー)を通して基本的な知識を身に付けさせています」(岩本氏)。また、同大学病院のがんセンターでは高度なチーム医療の実践をめざし「Tumor Board」と呼ばれる多職種による症例検討会を開催している。ここでは集学的治療を必要とする症例を対象に診療科横断的に検討を行い、治療方針を決めていくことが主に行われており、その議論の過程を聞くことは薬剤師にとっても有益なので、薬剤部では若手薬剤師にもTumor Boardへの参加を奨励している。

 さらに16年5月から月1回、若手薬剤師と保険薬局薬剤師を対象とした「レジメンカフェ」と呼ばれる勉強会も開催する(写真2)。その狙いについて発案者の日置氏は「がん専門薬剤師一人でかかわれる患者数には限りがあります。患者さんに日進月歩のがん薬物療法を適切に提供するためには、若手薬剤師や保険薬局薬剤師も巻き込みながら地域ぐるみでサポートする体制を作り上げることが重要だと思ったのです」と語る。そして、この勉強会はオープンな関係のもと気軽に何でも話し合える場にしたいとお茶を飲んだりお菓子をつまんだりしながら学ぶことのできるカフェ形式にこだわった。「セミクローズドの会ながら毎回約50名(院内約30名、院外約20名)の薬剤師が集まり、継続的に参加してくれる人も多いです」と日置氏はカフェ形式の効果について語る(写真3)。

 この勉強会を通して保険薬局薬剤師と"顔の見える関係"を築くこともできたので、日常の薬薬連携にも変化の兆しが現れている。たとえば、保険薬局薬剤師が抗がん剤に対する疑問を直接電話で問い合わせたり、患者の服薬や副作用の状況について書いたメモをお薬手帳に貼ったり、薬剤部が15年2月から保険薬局向けに開始した「トレーシングレポート」を提出したりすることが徐々に増えている。

 「注射薬を主体とした外来化学療法を継続的に受けている患者さんのうち、約84%のお薬手帳にはレジメンのシールを貼り、15年5月から臨床検査値(25項目)の情報も提供し始めたので、保険薬局も当院の治療内容を把握しやすくなりました。しかし、経口抗がん剤ではこうした対応が遅れているので、このレジメンカフェを通して保険薬局との情報提供や情報共有も一層図っていきたいと考えています」と日置氏は新たな目標を語る(写真4)。

【抗がん注射薬自動調製装置APOTECA Chemoを導入し、看護師の曝露対策にも貢献】

 がん薬物療法管理室に業務を集約して効率を図ったことは患者指導の充実にもつながっている(写真5)。薬剤部では15年7月より「がん患者指導管理料3」の算定を開始。その件数は月を追うごとに伸びており、16年8月の実績では月65件となっている。当初は初めて化学療法を受ける患者、レジメン変更となる患者、医師から指導の依頼がある患者を算定対象としていたが、16年7月より入院から外来に移行する患者にも拡大した。「日常生活に関して自分で注意しなければならないことも多いため、指導する必要性が高いと判断しました」(日置氏)。この算定開始後、処方や検査の提案件数、疑義照会件数も増加してきており、薬剤部では「きめ細かい対応につながっている」と評価する。

 また、外来での患者指導を一手に引き受ける日置氏によると、外来化学療法室で治療する患者への面談率は90~95%を推移し、そのサポートは初回投与時だけでなく化学療法継続中はほぼ毎日継続されている(写真6)。「1人につき5分前後の面談時間になることが多いですが、不安が強い人には15~20分ほどの時間を割くようにしています」(日置氏)。経口抗がん剤を単独使用する患者の場合は保険薬局に対応してもらうことが多く、日置氏をはじめ院内の薬剤師が患者指導を行うのは主治医からの依頼があったときだけに限る。「次回外来受診の際、患者さんにがん薬物療法管理室に寄っていただき、問題なく服用できているかどうかを確認し、必要に応じて追加の支援を行っています」(日置氏)(写真8)。

 こうした現状の中、奥田氏は患者や家族の相談に随時応じることのできる「薬剤師外来」の必要性を痛感し、近い将来、設置したいと考える。ただ、「枠を持たない今の支援スタイルは小回りが利くので、多くの患者さんにかかわれる利点があります。薬剤師外来になると問題のある患者さんを抽出したうえで限定的にサポートすることになるため、その隙間からこぼれる患者さんがないように仕組みを考えていきたい」と日置氏は言う。

 一方、薬剤部では抗がん剤の調製業務の効率化にも力を入れてきた。12年の新病棟開設を機に抗がん注射薬自動調製装置APOTECA Chemoを導入。13年2月より本格的に稼働し始め、腫瘍内科で使用する抗がん剤の調製を皮切りに徐々に対象を拡大してきた。「他社の自動調製装置より対応できる抗がん剤の種類が多いうえに1調製を約6分間で行うことが可能なので、現在は入院化学療法で使用する薬剤の6割以上をAPOTECAで調製しています」と岩本氏は説明する。このAPOTECAの操作にも多くの薬剤師を携わらせてきたので、今ではほとんどの薬剤師が他の自動調剤・調製装置と同じようにAPOTECAを使いこなす(写真9)。
 「APOTECAによる調製では薬剤パックへの表面曝露がないことがわかっており、調製する薬剤師だけでなく患者さんに抗がん剤を投与する看護師の安全を守ることにも貢献しています」(岩本氏)。

写真5

写真5

がん薬物療法の一元管理によって業務の効率化が図られ、
外来化学療法室のベッドサイドに出向く時間も増えた。
看護師と緊密に情報交換・共有を行いながら患者のケアにあたる。

【臨床にヒントを得た研究活動にも意欲的に取り組み新たなエビデンスを創り上げる】

 教育、臨床と薬剤部の活動において特筆すべきことは多いが、大学病院の使命である研究活動に関しても臨床の中からリサーチ・クエスチョンを拾い出し、日常診療に役立つ研究成果を上げている。その一例としてカルボプラチンの副作用であるアナフィラキシーショックの出現時期を予測した研究がある。この研究を率いた岩本氏によると、この薬剤を投与していて添付文書に記載されている条件や頻度よりもアナフィラキシーショックを起こす患者が多いことに気づき、発現しやすいタイミングを見つけるために研究を開始したという。

 研究を進める中、カルボプラチンの投与を繰り返すと患者の血液中に存在する特異的IgEと結合するようになることがわかり、この原因解明をもとに8回目以降の投与でアナフィラキシーショックが起こりやすくなることを突き止めた。この研究成果は添付文書の改訂にも反映され、同大学病院のみならず世界中の抗がん剤治療の現場で役立っている(写真10)。

 薬剤部では現在も研究を続け、患者の血液検体を測定することによって事前にアナフィラキシーショックの発現を予測することも可能になってきた。ゆくゆくは臨床応用に発展させ、先進医療Bの認可を取ることも視野に入れる。「この研究では薬剤部教員として磨いてきた研究的視点や実験技術を存分に生かすことができました。また、現在、新しいがん治療として注目されている『免疫チェックポイント阻害薬』の効果、副作用のバイオマーカーについても研究をスタートさせている。研究する知識と技術を持ち合わせ、臨床現場に出ている薬剤師は少ないので、これからも率先してリサーチ活動に取り組み、当院から新たなエビデンスを創り上げていきたい」と岩本氏は意欲を見せる。

 最後に奥田氏は「当薬剤部は若手が多く、ベテランや中堅の薬剤師に過重な負担がかかっているのが実情ですが、がん医療においてもサスティナブルに対応できるようあらゆる工夫を凝らしながら、これからも人材育成に一層力を入れていきたい」と締め括った。がん薬物療法のプロフェッショナルとしての責任を果たすべく、三重大学医学部附属病院薬剤部がその歩みを止めることはない――。

写真10

写真10

外来化学療法室で使われている注意カード。
カルボプラチンの投与回数が多い患者の点滴台には、
この注意カードをぶら下げてスタッフ全員で用心するが、
患者に余計な不安を与えないようカードは親しみやすいイラストで表示。

参考文献:Iwamoto T, Hirai H, Yamaguchi N, Kobayashi N, Sugimoto H, Tabata T, Okuda M:Cancer Sci. 2014 Nov;105(11):1472-9

KK-17-03-17856

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