KYOWA KIRIN

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第1回 臨床研究のデザインとエビデンスレベル

  

クイッククイズ

臨床研究にはエビデンスの強さにレベルがあります

新太郎くん

計子先生! ちょっと相談に乗ってください。
A薬に関する論文を集めているんですが、いろんな試験の論文があります。どういう論文を参考にすればいいんでしょうか。

計子先生

ひとつの基準は、エビデンスレベルの高い研究デザインの論文ね。

新太郎くん

デザイン?

計子先生

そう。一口に臨床研究と言っても、信頼性の高い研究からそうでもない研究まで、いろいろあるの。まず、臨床研究のデザインとエビデンスレベルについて調べてみる必要があるわね。

解説【1-1】

研究デザインの種類には、
①症例報告
②症例集積
③症例対照研究
④コホート研究
⑤比較臨床試験
⑥ランダム化比較試験(RCT)
⑦メタアナリシス

などがあり、どれを採用するかによって、研究から得られた結果の信頼性に違いがある。
この順番がエビデンスの強さを示している。

研究デザインの種類

「症例報告」と「症例集積」

新太郎くん

でも、どうしてこの順番になるんですか?

計子先生

そうね。症例報告は、例えば「ある薬(仮にA薬とする)を服用して病気が治った人が1人いた。」という一番単純な研究のことね。

新太郎くん

「ある人がA薬を服用したら病気が良くなった。だから、薬は効いた。」ということですかね?

計子先生

う〜ん、実はちょっと違うの。正しくは「A薬を服用したら治った人がいた」ということね。
もしかしたら、他の治療もしていて病気は治りかけていて、そのタイミングでたまたま薬を飲んだだけの人かもしれない。
詳しくはこのノート 1で説明してるわ。

新太郎くん

なるほど、「A薬を服用したら病気が治った」ではなく「A薬を服用して治った人が1人いた」が正しいんですね。

計子先生

そういうこと。では「A薬を服用して治った人が1人いた」という症例報告だけで「治る!」と言ってしまってよいと思う?

新太郎くん

さすがに1人だけだと、「A薬でこの病気は治ります」とは言いきれませんね。

計子先生

そうよね。1人だけのデータでは、他の人がA薬を服用して病気が治るとは言えないわ。

新太郎くん

ではたくさん集めればいいのでしょうか?

計子先生

では例数を増やして、「この薬を飲んだ人を10人連れてきた。6人は病気が治って、4人は変わらなかった。」とすると...?

新太郎くん

人数が多い方が信頼性が高そうですね。

計子先生

そうでしょ。このように症例をたくさん集める研究を症例集積と呼ぶの。
ところで、この症例集積で「A薬を服用して病気が治った」と言ってしまってよいと思う?

新太郎くん

10人中4人は治っていないわけだし、、、難しいですね。

計子先生

病気の人は、病気を治そうとして薬物治療以外にも何かしてるかもしれないわ。
あるいは、他の薬も飲んでいるかもしれない。

新太郎くん

なるほど。では「A薬を服用していない人」との比較をしないと、正しい評価はできないということですね。

計子先生

そのとおり!
「A薬を服用していない人(達)」という対照群をおくことが重要なのよ。

対照群のある「コホート研究」と「比較臨床試験」

計子先生

対照群のおき方には2通りあるの。
例えば、タバコとがん発症率の関係を調べたいとするわね。
まず1つ目は、とくに制限をせずに100人のグループに協力をお願いして、「タバコを吸う人」と「タバコを吸わない人」に分けて評価する方法で、これをコホート研究(cohort study)と呼びます。

新太郎くん

「制限をせずに」ということは、どういうことですか?

計子先生

観察者が100人のグループのうち誰がタバコを吸うか吸わないかをあらかじめ決めず、グループの人に自由に選んでもらう、ということよ。

新太郎くん

自由に選んでもらうと研究がやりづらくなりませんか?
喫煙者が100人中20人しかいなかったりすると評価が難しくなる気がしますが...

計子先生

確かにそのとおりね。
でも、「タバコとがん発症率に関係があるか?」を調べたいときに、「あなたは10年間毎日タバコを吸ってください。あなたは10年間一本もタバコを吸わないでください。」なんて指示はできないでしょ?
生活習慣や遺伝子など、調整しづらい・調整できない要素の影響を評価する際に、このコホート研究が使われるの。

新太郎くん

なるほど...。ところでつまらない疑問なんですが、若い人はあまりタバコを吸いませんよね。喫煙群がお年寄りばかりで非喫煙群が若い人ばかりなどになったら、研究結果に偏りがでませんか?

計子先生

つまらないどころかとても重要な疑問よ!
喫煙とがんの関連性を調べようとして、実は調べようとする因子(喫煙)以外の因子(年齢)ががんの発生率に影響を与えてるかもしれないわね。
このように調べようとする因子以外に、病気の発生に影響を与える因子を交絡因子と言うの。
このような場合、年齢が調査に影響を与えないようにデータを補正する必要があるのよ。

計子先生

対照群のおき方のもう1つは、「研究に参加してくれた人(=被験者)を2つのグループに分けて、一方には【評価したいもの】を与え、他方には与えない」方法で、これを比較臨床試験と呼びます。
【評価したいものを与える群】を介入群、そうでない群を対照群と呼ぶのよ。

新太郎くん

コホート研究も介入群と対照群があると思うのですが...

計子先生

そのとおりよ。でも比較臨床試験の場合、「評価したいもの」を与えるか与えないかは被験者自身が自由に決められず、グループ分けの際にあらかじめ決められてしまうのよ。

新太郎くん

被験者にとっては少し厳しいですね。

計子先生

そうね。ただその分、研究の信頼性は高くなるのよ。

解説【1-2】

  • コホート研究

    1つのグループを追跡し、例えば「タバコを吸う群」、「吸わない群」とで比較。タバコを吸うか吸わないかは自由に選べる。

  • 比較臨床試験

    被験者を「評価したいものを与える人(介入群)」と「与えない人(対照群)」に分け、調査を実施する。

タバコを吸うか吸わないかは自由に選べる

「ランダム化比較試験(RCT:Randomized Controlled Trial)」

計子先生

ランダム化比較試験(RCT)は、単一研究の中では最も信頼性が高く、ランダム化は「無作為に」という意味よ。
ランダム化比較試験には2つの「ランダム=無作為」の概念が含まれているの。
まず、被験者をランダムに選ぶランダム抽出。そして、選んできた被験者を介入群と対照群にランダムに振り分けるランダム割付よ。

新太郎くん

2つのランダムですか?
違いがよくわかりませんが...

計子先生

「どうしてランダム化が必要か?」を考えたらわかりやすくなるかしら。
まず、ランダム化抽出だけど、被験者が年齢の若い男性だけなのに「この薬はみんなに効きます!」と言うのは無理があるわよね?

新太郎くん

「みんなに効く」と言いたいなら、女性もお年寄りも含まれていないとおかしいですよね。ランダムに選べば老若男女、いろんな人が自然に含まれるってことでしょうか?

計子先生

そのとおり!
次にランダム割付だけど...例えば、薬の効き目を評価するときに、軽症の人を実薬群(すなわち介入群)、重症の人を対照群に振り分けたらどうなるかしら?

新太郎くん

軽症の人ばかりの実薬群のほうが、治る人が増えてしまいそうですね。

計子先生

そういうこと! 

意図的にグループ分けすると、正確な評価ができなくなるの。
これを防ぐためには、実薬群と対照群どちらに行くかをランダムに振り分ける必要があるの。これがランダム割付よ。

解説【1-3】

  • ランダム化比較試験(RCT)

    対照群をおいた比較試験のうち、被験者を選びだすこと(抽出)・被験者を介入群と対照群に振り分けること(割付)ともにランダムに行われている試験。 英語表記はRandomized Controlled Trial なので略してRCTと呼ばれることも多い。

ランダム抽出とランダム割付

RCTなど複数の臨床研究の結果を統合するメタアナリシス

新太郎くん

ところで、「メタアナリシス」というのをある論文で見たのですがどんな研究ですか?

計子先生

医学的介入が最も適正に評価されるのがランダム化比較試験なんだけれど、それが複数実施されている場合にはその結果を統合して解析する研究があるのよ。それがメタアナリシスで、最もエビデンスレベルが高い研究とされているの。

新太郎くん

薬の「効果があった」という研究と「効果がなかった」という研究が混ざっている場合はどうなるんですか?

計子先生

さまざまな数学的な手法を用いて複数の結果を統合して、「効果がある」/「効果がない」というような結果を出すの。
この数学的手法はとても複雑なのよ。それにメタアナリシスを行う際には、統合する前の個々の研究のエビデンスレベルが高い研究を選ぶことが重要だけど、エビデンスレベルが高いだけでなんでも統合できるわけではないわ。

新太郎くん

エビデンスレベル以外に何が条件なのでしょうか?

計子先生

例えば、ある薬のRCTで「日本の若年男性に対するRCT」と「アメリカの既往歴のある高齢女性に対するRCT」があった時、さて、これらは統合できるかしら?

新太郎くん

それぞれのRCTの被験者の条件が違いすぎて単純には統合できそうにないですね。

計子先生

このように「統合」できる研究を選んでこないと、そもそもメタアナリシスが成り立たなくなってしまうのよ。

解説【1-4】

メタアナリシスは既存研究を統合する研究。過去に行われた複数の臨床試験の結果を統計学の手法を用いてまとめ、結果を導き出す。

メタアナリシスイメージイラスト

まれな疾患の原因を調べるときなどに役立つ「症例対照研究」

計子先生

いままで紹介した「コホート研究」や「RCT」とは対照の考え方が少し異なるけれど、まれな疾患の原因を調べたいときに使われる研究で、症例対照研究というものがあるの。

新太郎くん

「対照」が異なるってどういうことですか?

計子先生

コホート研究やRCTでの「対照」は、「介入がなかった人」、すなわち「A薬を服用しない人」だったでしょ?一方で症例対照研究での「対照」は、「結果が起こらなかった人」、すなわち「(病気が)治らなかった人」をさすのよ。

新太郎くん

「薬を服用する人」と「服用しない人」ではなくて、「治った人」と「治らなかった人」を比較するんですね?

計子先生

そのとおり!だから「治った人を10人(症例)、治らなかった人を10人(対照)連れてきて、A薬を服用したかどうかを聞いた。すると治った人では10人中6人が、治らなかった人では10人中2人が、A薬を服用していた。」という表現になるのよ。コホート研究やRCTと比較すると、他の薬の服用や薬物療法以外などのA薬以外の要素の影響は少し大きくなっているから信頼性は少し落ちるわね。

新太郎くん

同じ「対照」でも少し意味合いが違うんですね!
でも、信頼性が落ちるなら、コホート研究やRCTをやった方がいいんじゃないですか?

計子先生

確かにそうね。例えば、高血圧や心筋梗塞などの原因を究明するにはコホート研究が適しているわよね。
一方、1万人に1人しか発症しないようなまれな疾患を調べるときは、「大勢のまだ病気にかかっていない人を追跡調査する」のと、「すでに病気にかかっている人を探してきて過去の生活習慣を調査する」のでは、後者のほうが効率的でしょ?

新太郎くん

1万人に1人しかかからない病気だったら、もうすでに病気にかかっている人を探してきたほうがはるかに調査費用も時間も節約できますね。

計子先生

コホート研究やRCTより信頼性は落ちるけど、知りたいことに応じて適切な研究デザインを選ぶことが大事なのよ。

新太郎くん

研究デザインにはいろいろあって、信頼性にもずいぶん差があることがわかりました!

計子先生

また何か疑問点があれば、遠慮なく聞いてね!

ノート1 症例報告

「薬を服用したら治った」 「薬を服用して、治った人が1人いた」 上記の文言はあまり変わらない表現にみえるが、実は異なる。

「薬を服用したら治った」という表現には、 (1)「今から誰かに薬を服用させたら、その人が治った」(前向き)と (2)「以前、薬を服用したことのある人を調べたら、その中に治った人がいた」(後ろ向き) という2通りの可能性がある。

「症例報告」はどちらかというと(2)のような研究スタイルを指している。

ノート2 臨床試験と臨床研究の違い

臨床研究とは:
病気の予防、診断や原因究明、治療方法の改善等のために、ヒトを対象として行われるすべての研究。観察研究と臨床試験からなる。
臨床試験とは:
医薬品や医療機器、外科的手技などの治療を試験的に施し、有効性や安全性を調べる臨床研究。
治験とは:
厚生労働省に「医薬品」や「医療機器」として認めてもらうことを目的として行う臨床試験。
臨床試験と臨床研究の違い

(出典:東大病院 臨床研究支援センター webページ 「臨床試験とは」)

KK-16-04-13990

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