KYOWA KIRIN

このサイトは、日本国内の医療関係者(医師、薬剤師、看護師、技師・技士等)を対象に、弊社が販売する医療用医薬品を適正にご使用いただくための情報を提供しています。国外の医療関係者、一般の方に対する情報提供を目的としたものではありませんのでご了承ください。

第4回 有意水準と仮説検定

  

クイッククイズ

コイン投げゲームで5回連続ウラが出ました。コインはイカサマ?

イカサマの判断基準

計子先生

前回は、ばらつきの「ものさし」である分散と標準偏差の話をしたけど、「ばらつき=標準偏差」をものさしにして、自分の順位がどのくらいかを評価する...この感覚を身につけられるといいわね。
さて、今日は「上位何%?」という考え方をさらに発展させて、仮説検定の基本的な考え方を説明するわ。

新太郎くん

仮説検定...論文でよく見かける「有意差あり/なし」を検定する方法ですよね?
なんとなく聞いたことはあります...。

計子先生

では、まず「コイン投げゲーム」を例に説明するわね。
これがゲームのルールよ。

ゲーム用のコインを投げて

オモテが出た:新太郎くんの勝ち
ウラが出た:計子先生の勝ち

計子先生

まず、1回目。ゲーム用のコインを投げてウラが出ました。
私の勝ちね。ゲームを続ける?

新太郎くん

まあ、1回ぐらいは負けるかも。続けます!

計子先生

では、2回目もウラが出ました。さらに3回目もウラ。
続けますか?

新太郎くん

ちょっと怪しくなってきたけど、続けます。

計子先生

なるほど...。では4回連続ウラが出たら続ける?

新太郎くん

そのゲーム用のコインがなんか怪しいですね。
ウラばかり出るようなコインではないかとイカサマを疑っちゃいます。

計子先生

大事なことは、起こった出来事(コイン投げで連続して負ける)について、最初は「イカサマはなくて、ただ運が悪かった」で納得できたけれど、負け続けると「偶然負けたのでなくて、イカサマだから負けた」と考えが変わるところよ。

新太郎くん

ウラが3回連続で出るくらいまでなら偶然かもしれないけど、4回続くと偶然とは思えない、ってことですよね。

計子先生

そう。もちろん、どこで考えが変わるかは人それぞれよ。
2連続で負けたらもう「イカサマだ!」って思う人もいるでしょうし、ギャンブル好きな人であれば、5連敗しても「偶然だ!」って勝負を続けるかもしれない。
ただ、どこかに「我慢の限界」があるんだということは、何となくわかるでしょ?

新太郎くん

僕の場合は、4回が「我慢の限界」だったってことですね。

解説【4-1】

「我慢の限界」まで 負けたのは偶然で、コインにイカサマはない
「我慢の限界」以降 負けたのは偶然ではない。コインにイカサマがあったせい。

有意水準と仮説検定

計子先生

さっきの話にあった「我慢の限界」の考え方を広げたものが、仮説検定よ。
我慢の限界は人それぞれ違うけど、仮説検定では、確率を使って線引きをするのよ。
具体的には、「偶然n連敗した」すなわち「コインにイカサマがないとき、n回続けてウラが出た」ことが、どのくらいの確率で起こるのかを計算するの。
さあ、さっそく計算してみて。

新太郎くん

イカサマがなければ、1回投げてウラが出る確率は1/2ですよね。
だから、n回続けて出る確率は(1/2)nです。

計子先生

そのとおり!

新太郎くん

でも、今は「イカサマがある」ことを疑っているのに、どうして「イカサマがない」と考えるんですか?

計子先生

いいところに気がついたわね。大事なポイントよ。

1 :「コインにイカサマがない時に、n回続けてウラが出る」
2 :「コインにイカサマがある時に、n回続けてウラが出る」

1番は、確率を計算することができるわ。
「イカサマがない」のならば、1回投げてウラが出る確率は1/2ですからね。
でも、2番はどう?
確率を計算できる?

新太郎くん

イカサマがある以上、ウラが出る確率は1/2ではないんでしょうけど...いくつになるかはよくわかりません。

計子先生

わからなくて当然ね。
「イカサマがある」とき、わかることは「1回投げてウラが出る確率は1/2ではない」ってことだけで、具体的な数値をあてはめることができないわ。「イカサマなし」なら、1回ごとの確率は1/2に決まるわ。

イカサマがあるときに、観測された出来事
(n回続けてウラが出る)が起こる確率
計算できない
[「(1/2)nではない」しかわからない]
イカサマがないときに、観測された出来事
(n回続けてウラが出る)が起こる確率
計算できる
[(1/2)n]

新太郎くん

本当はイカサマを疑っているけど、それだと計算を進められないから、いったん「イカサマがない」と仮定するんですね。

計子先生

そうね。その上で、起こった出来事(n連敗)がどのくらい珍しい出来事かを判定するの。なお、「コインにはイカサマがない(偶然起きた)」と仮定することを 仮説(null hypothesis)、「コインにはイカサマがある(偶然ではない)」と仮定することを対立仮説(alternative hypothesis)と呼ぶのよ。

計子先生

「対立」はともかく、「帰無」はほとんど馴染みがない言葉かもしれないわね。ややこしいけど、帰無仮説は「偶然起きた」、対立仮説は「偶然ではない」ということを、しっかり覚えておいてね。

解説【4-2】

帰無仮説

  • コインにはイカサマはない(偶然起きた)
  • 新薬の効き目は既存のものと変わりない

対立仮説

  • コインにはイカサマがある(偶然ではない)
  • 新薬の効き目は既存のものとは違う

帰無仮説が正しい場合

  • コインにはイカサマはなく、偶然n連敗した
  • 新薬の効き目は既存のものと変わりなく偶然、効き目に差が出た

対立仮説が正しい場合

  • コインにイカサマがあったから、n連敗した
  • 新薬の効き目は既存のものと違うから、効き目に差が出た

統計の本では通常、帰無仮説をH0、対立仮説をH1と記載する。

有意水準と仮説検定

新太郎くん

わかりました。では、「我慢の限界」の線引きはどうするんですか?

計子先生

一般的には、「我慢の限界」は5%に設定するの。
すなわち、偶然起こる可能性が5%を下回ったら、「偶然起きた」という帰無仮説自体が誤りだったと考えるの。
この「我慢の限界」5%を、有意水準と呼ぶのよ。

我慢の限界 : 有意水準(通常5%)

偶然起こる確率が有意水準以下なら、帰無仮説自体が誤りと判断

新太郎くん

だとすると、有意水準5%を下回ったら、帰無仮説「イカサマがない」が誤りで、「イカサマがある」という対立仮説が正しいってことですか?

計子先生

そのとおり!
帰無仮説と対立仮説は、「偶然起きた」「偶然ではない」と対になっているから、帰無仮説が否定されれば、対立仮説が正しいと結論できるのよ。
このことを、「帰無仮説を棄却(reject)して、対立仮説を採用する」と表現するの。

帰無仮説のもと、起こる確率が有意水準以下
→帰無仮説を否定(棄却)
→対立仮説を採用

計子先生

では問題です!
例えば5回続けて負けたときに、帰無仮説を棄却できるでしょうか?

新太郎くん

まず、コインにはイカサマがないっていう帰無仮説を仮定するんですよね。
そうすると、5連敗する...5回続けてウラが出る確率は2分の1の5乗で(1/2)5 = 1/32=0.03125。
これは5%=0.05より小さいから、帰無仮説は棄却できます。
ですから対立仮説を採用できる。すなわち「コインにはイカサマがある」といえます。

計子先生

そのとおり!
解説【4-3】の「帰無仮説を仮定」→「帰無仮説のもとで、観測された現象が起こる確率を計算」→「有意水準を下回っていたら、帰無仮説を棄却して、対立仮説を採用」の流れは、すべての基本になるので、しっかり理解しておいてね。

解説【4-3】

仮説検定の流れ

  • 1)

    帰無仮説(イカサマなし)を仮定

  • 2)

    帰無仮説のもとで、観測された現象が起こる確率を計算
    (ウラが5回続いて出る確率を計算
    →(1/2)5 = 1/32=0.03125)

  • 3)

    有意水準5%を下回っていたら、帰無仮説を棄却し、対立仮説(イカサマあり)を採用
    (0.031<0.05(=5%)より、帰無仮説棄却、
    対立仮説採用、よって「コインにはイカサマがある」)

研究デザインの種類

帰無仮説を棄却できない場合

計子先生

では問題です!
帰無仮説のもとで計算をして、例えば、「起こる確率が10%」だったらどうなるでしょう?

新太郎くん

10%ってことは、有意水準の5%より大きいですよね。
だから、帰無仮説が正しい、「コインにはイカサマはない」ってことになりますか?

計子先生

残念ながら不正解よ。
実は「帰無仮説(偶然起きた)のもと、偶然起こる確率が有意水準を上回ったら、帰無仮説を採用して、対立仮説(偶然ではない)を棄却する」...これは不正解なのよ。

新太郎くん

えっ!? 同じようにみえるのに、どうしてですか?
帰無仮説か対立仮説か、正しいのはどちらか1つではないのですか?

計子先生

確かに、帰無仮説か対立仮説、正しいのはどちらか1つだけよ。
でも、一方の仮説を棄却できるのは、観察された現象(=n連敗)が、仮説のもとで起こる確率が有意水準を下回ったときだけだったわよね?

新太郎くん

はい、そうです。

計子先生

だから、対立仮説(偶然ではない)を棄却できるのは、「対立仮説のもとで、観察された現象(ウラがn回連続で出る)が起こる確率が、有意水準を下回ったとき」だけよ。この確率、計算できる?

新太郎くん

対立仮説が正しいということは、「コインにイカサマがある」ってことですよね。
そのもとでn回続けてウラが出る確率...これは、計算できなさそうです。

計子先生

そうなの。通常の仮説検定で、対立仮説を棄却することはできないのよ。
もちろんこの場合、すなわち帰無仮説のもとで、現象が起こる確率が有意水準を上回った場合も、対立仮説は棄却できないの。

解説【4-4】

帰無仮説を棄却できないとき

対立仮説のもとに観測された現象が起こる確率:全く不明
→対立仮説は棄却できない!

新太郎くん

なるほど...では、有意水準を上回ったときはどう結論すればいいんですか?

計子先生

「帰無仮説が正しい」でもなく、もちろん「対立仮説が正しい」でもなく、「どちらが正しいかまだわからない」が適切な結論なのよ。

すなわち、「コインにイカサマがあるかどうかはわからない」が結論になるの。
例えばハイキングに行ったと想像してみて(解説【4-5】参照)。
道が二股に分かれていて、正しい道はどちらか一本だけ。
左の道を「帰無仮説(偶然起きた)」、右の道を「対立仮説(偶然ではない)」としましょうか。
そして、左の道が正しい確率が5%を下回ったら、左へ行く選択肢は捨てて、右の道を選ぶのが「帰無仮説を棄却して、対立仮説を採用」した状態ね。
一方で、左が正しい確率5%以上、今のように10%になってしまったら、左という選択肢は捨てられないけど、右を選んだ場合の情報は何もない。
だから、結論としては「右を捨てて、左の道を行く(帰無仮説を採用、対立仮説を棄却)」ではなく、「分かれ道でそのまま立ち往生(どちらの仮説も棄却できない)」になってしまうの。

解説【4-5】

帰無仮説を棄却できない場合

対立仮説・帰無仮説、どちらが正しいかはわからない(コインにイカサマがあるかどうか、まだわからない

正規分布グラフ

帰無仮説を棄却できる場合

帰無仮説を棄却して、対立仮説採用
(コインにイカサマがある!)

正規分布グラフ

新太郎くん

「どちらか一方が正しい」のは間違いないけれど、「どちらが正しいかはまだわからない」ってことですね。

計子先生

そのとおり。
薬の評価で言えば「有意水準を上回る=既存のものと差がない=既存のものと同等」とは言い切れないので、注意してね。

片側検定と両側検定

計子先生

さて、復習です。コイン投げゲームの例で5連敗したとき、どのように仮説検定をしてましたか?

新太郎くん

まず帰無仮説「コインにイカサマはない」と仮定して、その上で5連敗する確率を求めました。
1/2を5乗して0.031で、有意水準の5%より小さいため、帰無仮説を棄却して、「コインにはイカサマがある」と結論しました。

計子先生

そうね。実は、この計算過程にはもう一つ「暗黙の了解」が狭まっているの。

新太郎くん

暗黙の了解?

計子先生

詳しく説明すると、「相手がイカサマをコインに仕込んだ以上、相手が勝つようなイカサマになっている」ということよ。

新太郎くん

それは、当然ですよね。勝つためにイカサマするんですから 。
実際イカサマされたほうは5連敗しましたし。

計子先生

コイン投げなら、もちろんそうなるわ。
でも、薬の効き目を判断するときは、少し慎重に考えなければならないの。

新太郎くん

どういうことでしょうか?

計子先生

新しい薬と今までの薬を比較したとき、必ずしも新しい薬のほうがよく効くとは限らないわ。
実際に臨床試験をしたら、今までの薬のほうがよく効いた...という例もあるの。

計子先生

このように、確率が上がるか下がるかわからないような場合には、実際に観測された「5連敗」だけでなく、全く逆の状況、すなわち「5連勝」も考える必要があるのよ。 計算できるかしら?

新太郎くん

え〜と、5連敗する確率も5連勝する確率も同じ1/32だから、1/32+1/32で、6.3%...これだと、有意水準を下回らなくなっちゃいますね。だから、「イカサマがあるかどうかはわからない」が結論でしょうか?

計子先生

そのとおり!
先ほどやった5連敗だけを考える検定を片側検定、5連敗と5連勝の両方を考える検定を両側検定と呼ぶのよ。
薬の評価の場合には、「確実によくなる」保証はないことがほとんどだから、特別な事情がなければ両側検定を使うのよ。

解説【4-6】

片側検定:起こった出来事と同じ方向のみを考える

コインゲームで5連敗(5回連続ウラが出た)
新薬は既存薬よりよく効いた

両側検定:起こった出来事と逆方向も考える

コインゲームで5連敗 or 5連勝
新薬は既存薬よりよく効いた or 既存薬より効き目が悪かった

新太郎くん

わかりました。
今の例だと、片側検定だと帰無仮説を棄却できたけど、両側検定だと帰無仮説を棄却できないんですね。

計子先生

そうね。基本的には、両側検定のほうが「厳しめ」の検定になるの。
ここでの「厳しめ」とは、帰無仮説を棄却しにくい、実験データで言えば、「差があることを示しにくい」ということになるのよ。

新太郎くん

せっかくの実験なのに、差が出にくい検定をしないとダメなんですか?

計子先生

厳しいようにも思えるんだけど、片側検定だけで結果を出したら、「確実に良くなる保証がどこにある?」と突っ込まれることになるわよ。
「文句のつけどころがない」結果を出すためにも、やはり両側検定をすべきね。

新太郎くん

なるほど!
わかりました!

KK-16-11-16526

年末年始休業のお知らせ

下記の期間は年末年始休業とさせていただきます。
2019年12月28日(土)~ 2020年1月5日(日)
期間中はご不便をおかけいたしますが、ご容赦くださいますよう何卒お願い申し上げます。

おすすめ情報

  • おすすめ情報は、協和キリンのウェブサイトにおける個人情報の取扱い方針に基づき、お客様が閲覧したページのアクセス情報を取得し、一定の条件に基づき自動的に表示しています。
    そのため、現在ご覧いただいているページの情報との関連性を示唆するものではございません。

くすり相談窓口

弊社は、日本製薬工業協会が提唱するくすり相談窓口の役割・使命に則り、くすりの適正使用情報をご提供しています。
弊社医薬品に関するお問い合わせは、下記の電話窓口で承っております。

フリーコール

0120-850-150

受付時間 9:00~17:30
(土・日・祝日および弊社休日
を除く)

※お電話の内容を正確に承るため、また、対応品質の維持・向上等のため通話を録音させていただいております。あらかじめご了承ください。

お問い合わせ