~乾癬患者の希望について考える~患者背景を考慮した
最適な治療選択とは
近年、様々な治療薬や治療方法が登場し、患者さんの希望に
そった乾癬治療を選択することが可能となってきました。
治療効果や安全性、投与頻度など、何を重要視するかは、
患者さんによって様々ですが、最適な治療選択を行うために、
乾癬治療において患者さんが重要視することについて、
ご解説いただきます。
- 監 修
-
医療法人社団
もとまち皮ふ科クリニック
院長 本間 大 先生
乾癬治療全般について
[ 乾癬治療に対して患者・医師が重要視する項目 ]
乾癬治療に対して患者さん・医師が重要視する項目を調査した報告です。
患者さんに対して調査した結果では、「90%改善度」の相対的重要度スコア(RIS)が21.4と、他の項目よりも重要度が高かったことが示されました(図1)。
M.-L. Schaarschmidt et al., Acta Derm Venereol. 2018; 98: 200-205.(改変、作図)
[ 乾癬治療に対して患者が重要視する項目と年齢との関係 ]
患者さんが重要視する項目と年齢の関係について検討した結果、年齢が高いほど、「軽度の有害事象」、「治療を受ける場所」の重要度が高かったこと、年齢が低いほど「90%改善度」の重要度が高かったことが示されました(図2)。このことから患者さんの年齢による生活スタイルや社会とのかかわり方が治療に求めるものに違いをもたらしている可能性が考えられます。
- 目的
- 中等度から重度の乾癬に対して、全身療法の特性に対する医師と患者の重視する項目を比較する。
- 対象
- 2015年9月1日から2016年8月31日の間に、ドイツの乾癬患者団体「Deutscher Psoriasis Bund e.V.」の会員誌を通じて募集した患者と5つの施設で治療を受けた患者で、18歳以上の局面型皮疹を有する乾癬患者222例。ドイツの乾癬ネットワーク「PsoNet」に参加している、及び/又は施設で働いている医師78名。
- 方法
- 患者が乾癬治療に対して重要視する項目をコンジョイント分析を用いて評価した。コンジョイント分析の対象となる構成項目は「治療の効果(90%改善度·75%改善度·重度の有害事象·軽度の有害事象·効果が出るまでの時間)」と「治療の方法(治療を受ける場所·治療頻度·投与方法·検査の頻度·薬剤費)」であり、各構成項目は4つのレベルに分けられた。次に構成項目·レベルをもとに複数の治療属性の選択肢を用意し、各選択肢の患者·医師評価を集計した。また、各選択肢の患者評価と年齢の相関を算出した。
- Limitation
- コンジョイント分析として用いられる離散選択実験は理論的なものであり、認知的に難しい場合がある。募集方法には選択バイアスの可能性があり、患者コホートは不均一で、皮膚科医の治療や全身療法を受けていない患者もいた。約48%の患者は医師によって確定診断または疑いのPsAとされ、患者の自己評価の限界を反映している可能性がある。皮膚科医のみを対象としているため、他の専門医の見解は含まれていない。サンプルサイズは中程度で更なる検証が必要。
RIS(Relative Importance Score):相対的重要度スコア
M.-L. Schaarschmidt et al., Acta Derm Venereol. 2018; 98: 200-205.(改変、作図)
生物学的製剤治療について
[ 生物学的製剤に対して患者が重要視する項目 ]
生物学的製剤に対して患者さんが重要視する項目は、「重度の有害事象(RIS=17.3)」、「90%改善度(RIS=14.0)」が挙げられました(図3)。
Christian Kromer et al., PLoS One. 2015; 10(6): e0129120(改変)
CC BY 4.0: https://creativecommons.org/licenses/by/4.0/
[ 生物学的製剤に対して患者が重要視する項目と年齢との関係 ]
患者さんが重要視する項目と年齢の関係について検討した結果、年齢が高いほど、「重度の有害事象」及び「ACR20」の重要度が高かった一方で、年齢が低いほど、「50%改善度」、「90%改善度」及び「効果が出るまでの時間」といった効果に関する項目の重要度が高かったことが示されました(図4)。
Christian Kromer et al., PLoS One. 2015; 10(6): e0129120(改変)
CC BY 4.0: https://creativecommons.org/licenses/by/4.0/
[ 生物学的製剤に対して患者が重要視する項目(働き方別) ]
働き方別に患者さんが重要視する項目を検討した結果、フルタイム勤務者はパートタイム勤務者と比較して「90%改善度」に、非労働者と比較して「効果が出るまでの時間」に有意差が認められ、フルタイム勤務者では効果に関する項目を重要視していたことが示されました(図5)。
- 目的
- 生物学的製剤による治療の効果と治療の方法に関して患者が重視する項目を明らかにし、社会人口統計学的、社会経済学的因子および疾患の重症度がそれらの重視する項目に与える影響を検討する。
- 対象
- マンハイム大学医療センター皮膚科の外来で治療を受けた18歳以上の中等症~重症の乾癬患者 200例。
- 方法
- 患者が生物学的製剤に対して重要視する項目をコンジョイント分析を用いて評価した。コンジョイント分析の対象となる構成項目は「治療の効果(50%改善度・90%改善度・効果が出るまでの時間・治療効果の持続性・軽度の有害事象・重度の有害事象・ACR20)」と「治療の方法(治療を受ける場所・治療頻度・投与方法・治療期間)」であり、各構成項目は4つのレベルに分けられた。次に構成項目・レベルをもとに複数の治療属性の選択肢を用意し、各選択肢の患者評価を集計した。また、各選択肢の患者評価と年齢の相関を算出した。
- Limitation
- ドイツの単一の大学病院の外来で治療を受けた中等症~重症の乾癬患者のみを対象としたので、より大規模なコホートと多施設で検証されなければならない。コンジョイント分析で用いる離散選択実験は理論的なものであり、実際の患者は異なる選択をする可能性がある。
RIS(Relative Importance Score):相対的重要度スコア
Christian Kromer et al., PLoS One. 2015; 10(6): e0129120(改変)
CC BY 4.0: https://creativecommons.org/licenses/by/4.0/
まとめ・結語
乾癬治療や生物学的製剤に対して患者さんが重要視する項目は、「90%改善度」、「重度の有害事象」及び「効果が出るまでの時間」などでした。また、重要視している項目は、年齢や働き方によって異なり、年齢が低い患者さんやフルタイムで働いている患者さんは効果に関連する項目の重要度が高かったことが示されました。
治療を選択する際には年齢や働き方などの患者背景を考慮し、患者さんが治療に対して求めていることなどを診療の中で把握し、患者さんが望む治療ゴールをかなえられる治療方法や薬剤を患者さんとともに選択することが重要と考えられます。
2026年4月作成
KKC-2026-00251-1

