Drug Information
5-FU[よくある医薬品Q&A]
投与法・投与計画(用法・用量)
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5-FU軟膏の1回の塗布量は?
55th PDR(米国医薬品情報集)によると、病巣面をカバーできるよう十分な量を塗布するとされ、使用文献では、厚めに塗布すると記載されています1)。
なお、一般的な抗腫瘍外用剤の標準的な塗布量は、患部100cm2につき1~2.5gとされています2)。
[参考文献]
1) 石原和之:臨床皮膚科 25 (10), 995-1002 (1971) [002-106]
2) 斉藤隆三:皮膚病診療 19 (増), 25-34 (1997) [015-998]2021年6月更新
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5-FU軟膏の皮膚がんに対する一般的な使用方法は?ODT療法とは?
5-FU軟膏適量を1日1~2回、綿棒等を用いて正常皮膚に付かないように患部に塗布し、瘢痕治癒したら塗布を中止します。単純塗布でもよいですが、閉鎖密封療法(ODT*)を行うことが望ましいとされています。
潰瘍の形成や出血などが認められた場合には、5-FU軟膏の塗布を中止し適切な処置を行います。
*ODT療法(occlusive dressing technique)とは、皮膚の病巣に外用薬を塗布し、その上にプラスチックフィルム(ラップ等)をかぶせて、周囲を絆創膏で固定し密封する方法です。薬剤の局所での効果を効率的にする目的で用いられます。ODT療法の特徴は、下記の通りです1)。
- 治療薬剤と病巣面の接触が密になる。
- 軟膏が衣服やその他で擦り採られることがないため、無駄なく利用される。
- 汗や皮脂の貯留が表皮の浸軟化に役立ち、薬剤の経皮吸収を増進する。
- 密封することにより、血流の増加、温度の上昇のような有利な変化をもたらす。
- 密封により角質層の水分量が増加し、経表皮性吸収の増大と毛嚢脂腺系の経皮吸収が促進される。
[参考文献]
1) 今日の皮膚外用剤、高野正彦著者、南山堂、東京、1981、pp626-6322021年6月更新
KK-18-08-23195 - 治療薬剤と病巣面の接触が密になる。
相互作用
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5-FUとワルファリンカリウムとの相互作用の機序は?ワルファリンカリウムの投与量の調節方法は?
相互作用の機序は諸説ありますが、5-FUによりワルファリンカリウムの代謝酵素であるCYP2C9の合成が阻害され、ワルファリンカリウムの効果が増強すると推察されているものがあります1,2)。
海外報告によると、併用により早ければ3日後、概ね2~4週間後にプロトロンビン時間の数倍~十数倍の延長が認められています1-5)。また、プロトロンビン時間の延長を認めずに消化管出血を見た報告もあります6)。
併用時にはプロトロンビン時間を密にモニターしながら、ワルファリンカリウムの減量、中止あるいは5-FUの中止を行いますが、調整方法は報告により異なります。Kolesarらは週1回のモニターを推奨しています7)。また、Chlebowskiらは投与開始3日目にワルファリンカリウムの用量調節を行い、用量が安定したら週1回モニターしながら、必要時ワルファリンカリウムの用量を調節しています6)。
Kolesarらによると、5-FUを併用した5例ではワルファリンカリウムを平均44%(18~74%)減量したとしています7)。Carabinoらは併用時にはワルファリンカリウムを20~70%減量する必要があり、また5-FU投与終了後30日以内はプロトロンビン時間を標準域に維持するため、逆にワルファリンカリウムを増量するとしています8)。
[参考文献]
1) Brown MC:Chemotherapy 45 (5), 392-395 (1999) [016-005]
2) Brown MC:Pharmacotherapy 17 (3), 631-633 (1997) [016-006]
3) Aki Z, et al.:Am J Gastroenterol 95 (4), 1093-1094 (2000) [016-007]
4) Wajima T, et al.:Am J Hematol 40 (3), 238 (1992) [012-719]
5) Scarfe MA, et al.:Ann Pharmacother 28 (4), 464-467 (1994) [016-008]
6) Chlebowski RT, et al.:Cancer Res 42 (11), 4827-4830 (1982) [003-954]
7) Kolesar JM, et al.:Pharmacotherapy 19 (12), 1445-1449 (1999) [016-009]
8) Carabino J, et al.:Am J Health Syst Pharm 59 (9), 875 (2002) [016-010]2021年6月更新
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5-FUとフェニトインの相互作用の機序は?フェニトインの投与量の調節方法は?
機序は明確ではありませんが、5-FUによりフェニトインの代謝酵素であるCYP2C9の合成が阻害され、フェニトインの血中濃度が上昇すると推察されているものがあります1,2)。
5-FU誘導体での事例も含めた国内外の報告によると、併用時のフェニトイン中毒(ふらつき、歩行困難、錯乱等)は、概ね併用1~6ヶ月後に認められています1-5)。
併用例の報告によると、フェニトイン血中濃度をモニターしながら、5-FUあるいは5-FU誘導体の適宜中断や減量とフェニトインの減量を行っています1-4)。併用時のフェニトインの用量は報告により異なりますが、併用前の1/3~2/3用量です2,4,5)。フェニトイン中毒発症後、フェニトインをカルバマゼピンに変更し、化学療法を継続している例もあります1)。
[参考文献]
1) Konishi H, et al.:Ann Pharmacother 36 (5), 831-834 (2002) [016-011]
2) Gilbar PJ, et al.:Ann Pharmacother 35 (11), 1367-1370 (2001) [016-012]
3) 原田英昭,他:鳥取医誌 18 (2), 197-199 (1990) [011-131]
4) 原 富英,他:九精神医 38 (1), 36-41 (1992) [009-857]
5) Wakisaka S, et al.:Fukuoka Acta Med 81 (4), 192-196 (1990) [016-013]2021年6月更新
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副作用・安全性
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5-FUによる白質脳症は、どのような症状ですか?また、投与中止後に回復しますか?
5-FUによる白質脳症は大脳白質の萎縮、変性を伴う脳症で、初期症状として、歩行時のふらつき、言語障害、めまい、しびれ、傾眠傾向や異常行動、物忘れ等の精神症状の頻度が高くなります。経過中には昏睡~無動無言、昏迷~傾眠、せん妄等の意識障害、健忘、見当識障害、意味不明の言動、構音障害、動作緩慢、眼振、痙攣、振戦等の精神神経症状が見られることが多くなります1)。
投薬中止後も一定期間は進行しますが、その後改善傾向を示します。初発症状の段階で中止した場合には、ほぼ完全に回復することも少なくないとされます。しかし、重篤な後遺症を残すこともあり、重症例では死亡の転帰をとることもあります。対処方法はまず5-FUを中止し、例えば痙攣に対しては抗痙攣薬の投与等を行います1)。
[参考文献]
1) 赤沢修吾ら編、癌化学療法時のemergency、先端医学社、東京、1998、pp123-1442021年6月更新
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重篤な下痢の処置方法は?
海外で提唱されている、がん治療による下痢の治療に関するガイドラインによると、grade 3,4の重篤な下痢、または、中等度以上の腹痛などのリスク因子を有する場合に対しては、補液と抗生剤に加えて、オクトレオチド(持続性ソマトスタチンアナログ)100~150μgの1日3回連日皮下注射または25~50μg/h静注を初期投与量として投与することを推奨しています1)。
<参考>
なお、CTCAE v4.0では、下痢の重症度(grade)は以下のように規定しています。
Grade 3: ベースラインと比べて7回以上/日の排便回数増加、または、 便失禁、または、入院を要する、または、ベースラインと比べて人工肛門からの排泄量が高度に増加、または、身の回りの日常生活動作の制限
Grade 4: 生命を脅かす、または、緊急処置を要す
[参考文献]
1) Benson AB, et al.:J Clin Oncol 22 (14), 2918-2926 (2004) [027-210]2021年6月更新
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5-FUによる手足症候群とはどのようなものですか?
5-FUによる手足症候群は手・足・爪を好発部位とし、軽度のものは紅斑、色素沈着に終わりますが、高度なものは疼痛性に発赤腫脹し、知覚過敏、歩行困難、物がつかめないなどの症状を訴えて水疱、びらんを形成します。やがて手掌足蹠は角化、落屑が著明になって亀裂を生ずるようになり、爪は著明な変形を残すこともあります。発現頻度は5-FUの投与方法に関与し、長時間の持続点滴法による発現率が高いとされます1)。また高い血中濃度が持続すると出現しやすいようですが、短期間投与で出ることもあり個人差も大きいとされます1)。
対策として軽度な皮膚変化では投与続行は可能ですが、剥脱性皮膚炎、疼痛を伴うようになれば一時的に中止もしくは減量します。局所はステロイド剤外用で2~3週にて軽快することが多いですが、ステロイド内服も有用です。またピリドキシン(ビタミンB6)投与が有用とする報告もあります2)。
[参考文献]
1) Lokich JJ, et al. :Ann Intern Med 101, 798-800 (1984) [010-346]
2) Fabian CJ, et al. :Invest N Drugs 8, 57-63 (1990) [010-179]2021年6月更新
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