グラン[よくある医薬品Q&A]
臨床効果
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効果発現(回復)までにどのくらいの日数(期間)継続するべきですか?
効果は患者さんの骨髄の状態によって大きく影響されます。
一般に好中球は骨髄で産生されて、一旦貯蔵され、血中に放出されるまでに約2週間かかるとされています。
グランには好中球を放出する作用もあるため、グラン投与によって産生された好中球が血中に出てくるまでに早くて5日程度かかります1)。
患者さんの骨髄の状態によっては効果発現までに14日以上を要する場合もあります。
また、投与翌日頃、一過性に好中球が上がることがありますが、これは放出促進作用によるもので、期待する好中球産生作用によるものではないため、この時に投与を中止するべきではありません。
<参考>
効果の現れにくい状態
・強い化学療法を行っている
・化学療法のクールが進んでいる
・高齢
・癌が骨髄に浸潤しているなど
[参考文献]
1) Watanabe M, et al. : Anal Biochem. 1991; 195: 38-44 [017-904]2025年10月更新
MA-2023-225 -
継続投与しても効果が得られない場合、何日で無効とすべきですか?
G-CSF投与に対する反応は個々の患者さんの骨髄の状態によって異なります。骨髄が低形成に陥っていて回復しない場合や骨髄の大半が腫瘍細胞の浸潤により置換されているような場合は、本剤投与によっても反応がみられないことがあるため、一律に投与期間を設定できません。
<参考>
無効例と判断するには抗癌剤投与後の好中球減少症、再生不良性貧血(AA)、骨髄異形成症候群(MDS)、特発性好中球減少症ならば通常2週間位と考えられます。先天性好中球減少症では1ケ月投与、特発性好中球減少症では3~4週間投与しても好中球の回復がみられない場合は、無効と判断する一つの基準と考えられます。また、先天性好中球減少症では感染症を抑制できる程度に好中球を増加させる必要があるとの報告1)もあります。他にも承認外の報告ですが、重症AAでは400μg/㎡でスタートし、1200μg/㎡まで増量して効果が認められた事例と認められなかった事例の両方があるとの報告2)もあります。
1) 日本医事新報, 3596, 128-128 (1993)
2) 小島 勢二,他:臨床血液, 31(7) 929-936 (1990)2025年10月更新
MA-2023-225
用法及び用量(投与法・投与計画)
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がん化学療法による好中球減少症に対して、皮下投与と静脈内投与(点滴静注を含む)で用量設定が異なるのはなぜですか?
グランの国内Phase I試験において1.0μg/kgの30分点滴静注と0.5μg/kg、1.0μg/kgの皮下投与を検討した結果、皮下投与は、点滴静注と比較して血中濃度を長く維持し、好中球数増加効果は30分点滴静注の1/2~1/3の投与量で同等の効果を示すことが認められています1),2)。
このことから、皮下投与は静脈内投与(点滴静注を含む)の半量で用量設定されています。
[参考文献]
1) 東 純一,他:臨床医薬 5 (11), 2231-2252 (1989) [018-091]
2) 承認時評価資料2025年10月更新
MA-2023-225 -
抗がん剤の投与前後24時間以内にグランを投与してはいけない理由を教えてください。
グラン(G-CSF製剤)を抗がん剤と同時に投与すると、G-CSFによって分化・増殖過程に入った好中球系前駆細胞が抗がん剤によってより大きな障害を受け、逆に過度の好中球減少を起こす可能性があるためです。
G-CSF製剤を抗がん剤投与当日まで、もしくは同時に投与した例では、G-CSF製剤を投与しない、あるいは同時に投与しなかった場合に比べ、好中球減少が強く生じていることが報告されています1)。
[参考文献]
1) Meropol NJ, et al. : J Natl Cancer Inst 84 (15), 1201-1203 (1992) [018-310]2025年10月更新
MA-2023-225 -
がん化学療法による好中球減少症に対する投与期間に目安はありますか?
承認された用法及び用量上、投与期間の制限はなく、投与中止の基準は好中球数で規定されています。
添付文書には以下の記載があります。
7.用法及び用量に関連する注意
<がん化学療法による好中球減少症>
7.4 本剤の投与により、好中球数が最低値を示す時期を経過後5,000/mm3 に達した場合は投与を中止するが、好中球数が2,000/mm3以上に回復し、感染症が疑われるような症状がなく、本剤に対する反応性から患者の安全が確保できると判断した場合には、本剤の減量あるいは中止を検討すること。2025年10月更新
MA-2023-225 -
皮下投与部位は揉んだほうがよいですか?
特に揉む必要はありません。
2025年10月更新
MA-2023-225 -
「静脈内投与の場合はできるだけ投与速度を遅くすること」と記載されているのはなぜですか?
G-CSF製剤の投与患者において、静脈内投与時にショック様症状を認めたために次回から点滴静注に変更したところ、同様の症状を認めなかったとの報告がある1)ことから設定されました。
ワンショット静注は避けて、できるだけ緩徐に投与し、投与後しばらくは患者の様子を観察して、血圧低下などのショック様症状が起こらないことを確認してください。
[参考文献]
1) 太田 健介,他: Int J Hematol 54(Suppl.1), 228-228 (1991) [018-307]2025年10月更新
MA-2023-225 -
輸液フィルターを使用してもよいですか?
輸液フィルターの使用はお勧めしておりません。
グランはタンパク製剤であり、輸液容器、ルート及びフィルターの材質により吸着することが報告されています1,2)。
[参考文献]
1) 矢後 和夫,他:病院薬学 24 (6), 697-703 (1998) [018-068]
2) 矢後 和夫,他:病院薬学 22 (4), 359-363 (1996) [018-067]2025年10月更新
MA-2023-225 -
放射線同時併用化学療法を行う際に、グランを投与してよいですか?
放射線を同時に併用して化学療法を行う際のグラン投与はお勧めできません。
G-CSF 適正使用ガイドライン 2022 年 10 月改訂 第 2 版では、がん薬物療法と同時に放射線療法を行う場合に,G-CSF の予防投与や治療投与を行わないことを弱く推奨するとされています 推奨の強さ:2(弱い) エビデンスの強さ:D(非常に弱い)1)。
[参考文献]
1) 日本癌治療学会 :G-CSF 適正使用ガイドライン 2022 年 10 月改訂 第 2 版, 180-183 (2022)2025年10月更新
MA-2023-225 -
ジーラスタを投与した後に、グランを追加投与してもいいですか?
NCCNガイドライン Hematopoietic Growth Factors (Version 1.2025 Therapeutic Use of MGFs (MGF-4))には、「ペグフィルグラスチムの予防的投与を受けている患者における発熱性好中球減少症に対するフィルグラスチムの治療的投与を検討した研究はない。しかしながら、ペグフィルグラスチムの薬物動態データは、好中球減少症時に高値を示しており、G-CSFの追加投与は有益ではない可能性があることを示唆しているものの、好中球減少症が長く遷延する患者では、G-CSFの追加投与を考慮する」と記載されています。
2025年10月更新
MA-2023-225 -
経口抗がん剤の投薬中に、グランを投与しても良いですか?
〈再発又は難治性の急性骨髄性白血病に対する抗悪性腫瘍剤との併用療法〉の適応時を除き、経口、注射、いずれの抗がん剤の場合でも、抗がん剤投与前後24時間以内のグラン投与は避けてください。
グラン(G-CSF製剤)を抗がん剤と同時に投与すると、G-CSFによって分化・増殖過程に入った好中球系前駆細胞が抗がん剤によってより大きな障害を受け、逆に過度の好中球減少を起こす可能性があるためです。2025年10月更新
MA-2023-225 -
点滴静注時の希釈率や点滴速度に規定はありますか?
点滴静注時の希釈率や点滴速度について特に規定はありません。
院内のルールに沿って通常通り点滴してください。なお、持続点滴静注では輸液量が多くなり、グランの輸液バッグや点滴ルート、フィルター等への吸着が懸念されるため、長時間の投与は推奨できません。
<参考>
臨床試験では100mLの生食もしくは5%ブドウ糖に混和し30分かけて滴下していました1)。
1) 坂田 優、他:臨床医薬, 6(2) 327-335 (1990) [018-096]2025年10月更新
MA-2023-225 -
分子標的薬(抗体医薬品)と同時投与は可能ですか?
分子標的薬(抗体医薬品)との同時(同日)投与については、未だ十分なエビデンスがありません。
安全性を考慮して、投与前後24時間以内の本剤投与は避けることを推奨します。2025年10月更新
MA-2023-225
重要な基本的注意等
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ショック等を予測する方法はありますか?
添付文書には以下の記載があります。
8. 重大な基本的注意
<効能共通>
8.2 過敏症等の反応を予測するために、使用に際してはアレルギー既往歴、薬物過敏症等について十分な問診を行うこと。[9.1.1、9.1.2、11.1.1参照]2025年10月更新
MA-2023-225
配合変化・安定性
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グランは他の注射剤と混和して投与してもよいですか?
グランを投与する場合は他剤との混注を行なわないようお願いします。なお、点滴静注に際しては、5%ブドウ糖注射液、生理食塩液等の輸液に混和してください。
添付文書には以下の記載があります。
14. 適用上の注意
14.1 薬剤調製時の注意 点滴静注に際しては、5%ブドウ糖注射液、生理食塩液等の輸液に混和する。また、本剤を投与する場合は他剤との混注を行わないこと。2025年10月更新
MA-2023-225 -
凍結した場合、解凍すれば使用可能ですか?
貯法(凍結を避け10℃以下に保存)を逸脱した製品の使用は推奨できません。凍結はフィルグラスチムの変性を誘引し、これが有効性や安全性に影響する可能性があります。
2025年10月更新
MA-2023-225 -
アンプル製剤(注射液)の室温下での安定性を教えてください。
以下のデータを取得しています。
なお、貯法(凍結を避け10℃以下に保存)を逸脱した製品の使用を推奨するものではありません。各試験の目的を踏まえてデータを参照してください。2025年10月更新
MA-2023-225 -
ピロー包装有無で光の影響は異なりますか?
以下のデータを取得しています。
本剤の保管にあたって、光の影響にご注意ください。できるだけ使用直前までピロー包装からシリンジを取り出さないでください。添付文書には以下の記載があります。
20.2 できるだけ使用直前までピロー包装からシリンジを取り出さないこと。
※内袋、内装包装=ピロー包装2025年10月更新
MA-2023-225 -
ピロー包装開封後もしくはピロー包装から出したあとの安定性を教えてください。
◆フィルムとチップキャップを外していない場合
薬液の無菌性は担保されています。ピロー包装開封後も、ピロー包装に戻して箱に入れ、貯法通り冷暗所(遮光下、凍結を避け、10℃以下)で保管すれば、使用期限まで使用は可能です。できるだけ早いタイミングで使用してください。
◆フィルムとチップキャップを外した場合
アンプル製剤であればアンプルカットしたのと同じ状態です。無菌性は担保できなくなります。
なお、添付文書上「できるだけ使用直前までピロー包装からシリンジを取り出さないこと。」と記載しています。2025年10月更新
MA-2023-225 -
注射用蒸留水と混和することはできますか?
添付文書にある通り、生食もしくは5%ブトウ糖以外の輸液との混和は推奨していません。
2025年10月更新
MA-2023-225
製剤学的事項
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グランシリンジにはどのような注射針を使用すればよいですか?
グランシリンジ専用の注射針はありません。
JIS規格に適合し医療機器認証のある注射針であれば使用可能です。2025年10月更新
MA-2023-225
その他
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在宅自己注射のために保険薬局で交付可能ですか?
平成22年4月よりG-CSF製剤が保険薬局で交付可能となりましたが、在宅自己注射指導管理料を算定している患者(再生不良性貧血(AA)と先天性好中球減少症の患者)に限られます。
但し、再生不良性貧血では承認されている用法は点滴静注のみのため、点滴静注での自己投与が可能な場合に限られます。2025年10月更新
MA-2023-225