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ヒスロンH[よくある医薬品Q&A]
副作用・安全性
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ヒスロンH「禁忌」の項に「ホルモン剤(黄体ホルモン、卵胞ホルモン、副腎皮質ホルモン等)を投与されている患者」が記載された理由は?また、「~ホルモン等」とされているのはなぜですか?
1989年3月に血栓症に関する「警告」の設定、および「使用上の注意」の改訂を行い注意喚起しています。
主に避妊薬として用いられた黄体ホルモン、卵胞ホルモンや、副腎皮質ホルモンによる血栓症の発現、及び血栓症発症の危険性の増加等は従来より報告されています。ヒスロンHは高単位の黄体ホルモン製剤であり、これらのホルモン剤を投与されている患者に投与することにより、血栓症発現のリスクが更に高くなると考えられるために設定されました。
現在、添付文書に血栓症の記載があるホルモン剤(薬効別分類 24 ホルモン剤に分類される薬剤)は、黄体ホルモン、卵胞ホルモン、副腎皮質ホルモンが中心ですが、男性ホルモンとの合剤、脳下垂体ホルモン剤にも血栓症の記載が見られるため「等」と記載されました。2023年8月更新
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ヒスロンHによる血栓症の発症機序は?
ヒスロンH投与中には、血液凝固能、血小板凝集能の亢進等が報告されていますが、明確な血栓症発現との関連は解明されていません1)。
血栓症の発現には、ヒスロンH自身の作用の他に付加的な危険因子として、がんそのものの病態、手術の影響、糖尿病、高血圧、高脂血症等血栓症のリスクの高い合併症、および化学療法剤等の併用薬剤の関与が考えられます1-4)。がんの病態との関連としては、がん細胞自体による凝固因子や血小板の活性化等が報告されています2)。手術侵襲による凝固線溶系の変化は生理的なことであり、術後1週間は凝固亢進状態となり、少なくとも1ヶ月は慎重な観察が必要です2)。また、化学療法剤はタンパク合成に抑制的に働くため、タンパク合成亢進作用のあるヒスロンHとの併用による凝固線溶関連タンパク産生系のバランスの崩れが原因とする報告もあります5)。
ヒスロンH投与中の血栓症は、これらの要因が複雑に絡み合って発現しているものと考えられます。
[参考文献]
1) 血栓症と酢酸メドロキシプロゲステロン, 1-18 (1995) [012-033]
2) 塚田理康 :医薬品の副作用 97-103 (1990) [010-784]
3) 厚生省薬務局安全課 :医薬品研究 23(5), 664-671 (1992) [012-031]
4) 小山博記,他 : Breast Cancer Today 8(3), 2-10 (1992) [012-030]
5) Abe O, et al.:Surgery Today 25(8), 701-710 (1995) [012-034]2023年8月更新
MA-2023-205 -
ヒスロンHによる血栓症を予見することは可能ですか?
ヒスロンH投与中に、多くの凝固線溶パラメーターの変動が見られることが、国内外において報告されていますが、それらの変動は正常範囲内のものも多く、血栓症発現との関連は明確ではありません1)。また、国内の研究において、アンチトロンビンIII、プロテインCが正常範囲を越えて上昇することが報告されましたが、これらの上昇は直接凝固亢進状態を示すものではないと考えられています2,3)。このため、ヒスロンHによる血栓症の発現をパラメーターのみで判断することは出来ません。現状では有効な予知因子は存在しないため、FDP、D-ダイマー、PIC等の検査を実施し治療方針を決定する必要があると思われます。
また、血栓症の前駆症状としての頭痛、めまい、腹痛、下肢腫脹、下肢疼痛等が報告されており、ヒスロンH投与中はこれらの症状の観察を十分に行うことが重要であると考えられます。
添付文書には以下の記載があります。
<8. 重要な基本的注意>
8.1 本剤の投与により脳梗塞、心筋梗塞、肺塞栓等の重篤な血栓症があらわれることがあるので、以下のことに注意すること。[1.、2.1、9.1.1、11.1.1参照]
・投与に際しては、FDP、α2プラスミンインヒビター・プラスミン複合体等の検査を行い、異常が認められた場合には、投与しないこと。
・投与に際しては患者の状態を把握し、血栓症発現の危険因子の有無について十分に注意すること。
・投与中は定期的にFDP、α2プラスミンインヒビター・プラスミン複合体等の検査を実施し、異常が認められた場合には投与を中止すること。
[参考文献]
1) 血栓症と酢酸メドロキシプロゲステロン, 1-18 (1995) [012-033]
2) JABCSG,JCOG : Jpn J Cancer Res 84(4), 455-461 (1993) [011-835]
3) Abe O, et al. : Surgery Today 25(8), 701-710 (1995) [012-034]2023年8月更新
MA-2023-205 -
ヒスロンHの閉経前患者の月経に及ぼす影響は?
月経は卵胞ホルモンと高単位の黄体ホルモン等により調整されているので、合成黄体ホルモン製剤であるヒスロンHが投与された場合、月経に影響します。黄体ホルモンが血中に持続すると妊娠持続状態と類似した状態となるので、月経不順、無月経、月経間隔遅延、月経過多など種々の症状が発現します。
2023年8月更新
MA-2023-205