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若手腎臓内科医のための英語論文投稿術

第1回 国際学術誌の編集長に聞く

Kidney International 編集長 Pierre Ronco先生のプロフィール

南學先生: 本日は、腎臓学の世界的権威であり、またKidney International の編集長を務めるPierre Ronco先生とともに、腎臓内科医が英語論文を執筆・投稿する際のエッセンスについてお話ししたいと思います。まずは、腎臓内科医であるRonco先生が、これまでどのようなキャリアを積んでいらっしゃったのか、バックグラウンドなどご紹介いただけますでしょうか。

Ronco先生: 私が医師としてスタートした研修医時代は、国際腎臓学会(International Society of Nephrology:ISN)の共同創設者でもあるGabriel Richet先生が率いるパリのテノン病院 腎臓内科に在籍し、数多くの臨床経験を重ねました。Richet先生は、"Nephrology"という名称を初めて提唱したJean Hamburger先生の最初の弟子であり、臨床のみならずトランスレーショナル・リサーチにも尽力した研究者でもあります。彼はフランス国立衛生医学研究所(INSERM)のユニットを創設し、世界的な名声を獲得しました。そこは研究に最適な場所であり、私は幸運にもさまざまな研究に携わることができました。そして、パリのパスツール研究所において免疫学の教育を受けた後、テノン病院に戻り、免疫学のバックグラウンドをもった腎臓内科医として研究および診療の両方に従事しました。現在は、欧州のなかでも最も古い大学の1つであるフランスのソルボンヌ大学において腎臓学の名誉教授も務めています。

南學先生: Ronco先生のご専門は糸球体疾患ですね。

Ronco先生: はい。特に膜性腎症の病態生理の解明と新規治療法の開発に力を注いでいます。なかでも、小児膜性腎症における中性エンドペプチダーゼ(neutral endopeptidase:NEP)と呼ばれる新規ヒト自己抗原の同定1)は、その後のホスホリパーゼ A2受容体(phospholipase A2 receptor:PLA2R)の特定2)へとつながる大きな発見となりました。この分野において私たちが発表した論文は、すでに200報を超え、臨床医学の発展にも寄与してきました。

南學先生: また、Ronco先生は国際的にも幅広く活動されており、日本腎臓学会の国際名誉会員でもいらっしゃいます。

Ronco先生: 南學先生、ありがとうございます。日本腎臓学会の国際名誉会員として認められたことは、とても光栄なことです。私が国際的な経験を積めたのは、もう1人の恩師、長年にわたってISNの事務局長であったClaude Amiel先生のおかげです。それ以来、私は30年以上にわたり、ISNのさまざまな活動に携わり、たとえば、ISN評議員、4回の国際腎臓学会総会(World Congress of Nephrology)のプログラム委員長(1995年マドリード、2009年ミラノ、2015年ケープタウン、2017年メキシコシティ)、そして現在はKidney International の編集長を務めています。ISNからは、腎臓学の分野で世界的に顕著な貢献をした研究者に贈られるJean Hamburger賞も授与されました。Jean Hamburger賞は、過去にRichet先生も受賞されており、テノン病院は、この名誉ある賞の受賞者を2人も輩出している世界でも珍しい病院です。

基礎科学と臨床科学をつなぐ
"トランスレーショナル・ジャーナル"を目指して

南學先生: Ronco先生が編集長を務めていらっしゃるKidney International が、どのような雑誌であるかをご紹介いただけますか。

Ronco先生: Kidney InternationalKI ReportsKI Supplements を備えたISNの機関誌の1つで、私は2018年から編集長を務めています。腎臓学に関するあらゆる領域を網羅した国際学術誌で、世界70カ国以上から論文が寄せられます。本誌は2つのパートから構成され、前半は教育的な要素を含む雑誌部分で、腎臓学やその他の分野で発表された重要な論文や各分野の世界的な専門家によるレビューなどを扱い、また、Journal ClubNephrology Digests は、重要な論文やタイムリーなトピックに関する論争(Controversies )や論説(Editorials )を読者の皆様にお届けしています。後半は原著論文のパートで、毎月10~12報の論文が掲載されます。難しい症例はImages in NephrologyMake Your Diagnosis で紹介しています。
私は、Kidney International が基礎科学と臨床科学を融合させた"トランスレーショナル・ジャーナル"であることを強調します。腎臓専門医、特に若手医師にとって、基礎科学と臨床科学の橋渡しとなるような雑誌を目指しています。ISNの機関誌であるKidney International は、腎臓病、そのメカニズム、治療法を網羅するグローバルジャーナルであり、この目標を達成するため、一般的な関心事を扱うNephrologie sans FrontieresPolicy Forums のカテゴリーも設けています。

南學先生: ありがとうございます。Ronco先生が編集長としてリーダーシップをとられるなかで、Kidney International のインパクトファクターは急上昇しましたね。

Ronco先生: 私が編集長に就任して以来、インパクトファクターは約2.5倍になりました。この背景として、投稿論文の質の高さ、編集委員チームによる質の高い査読、若手医師が興味を引くような優れた専門家によるレビュー論文の執筆依頼、Kidney Disease Improving Global Outcomes(KDIGO)ガイドラインとの提携などが貢献しています。

南學先生: 良質な論文を掲載し、影響力の大きな雑誌であり続けるためには、適切な査読プロセスと公正な判断が欠かせません。そこで次回は、医学雑誌における査読のプロセスについてお話を伺いたいと思います。

文献

  1. 1) Debiec H, et al. N Engl J Med 2002; 346: 2053-2060.
  2. 2) Beck Jr LH, et al. N Engl J Med 2009; 361: 11-21.

KKC-2024-00698-1
2024年10月作成

若手腎臓内科医のための英語論文投稿術

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