医療法人社団北野朋友会 松戸脳神経内科
[パーキンソン病 med.front]
2023年10月6日公開/2023年10月作成
- ●理事長:金坂 俊秀 先生
- ●院長:島田 潤一郎 先生
- ●開設:1992年
- ●所在地:千葉県松戸市旭町1-160
日本初の神経内科単科クリニック
複数の専門医を結集しPDの早期発見・治療に尽力
「日本初の神経内科単科クリニック」として1992年に開業した医療法人社団北野朋友会松戸脳神経内科。外来に特化しているのが大きな特徴で、神経内科専門医による外来診療をほぼ毎日4診体制で実施し、約500人のパーキンソン病(PD)患者を継続的にサポートしている。「一流の医療を街の中へ」「患者さんの訴えは常に正しい」を理念に地域医療に尽力して30年余り。充実した検査体制による早期診断・迅速治療を基本に、開業医などからの依頼による確定診断やセカンドオピニオンなどにも対応。現在は、より早期の介入を目指し、特に潜在患者の掘り起こしに注力している。
1. クリニックの概要
「一流の医療を街の中へ」を理念に掲げる
脳神経内科の高度な外来専門クリニック
医療法人社団北野朋友会松戸脳神経内科は、脳神経内科専門医療機関として1992年に開業し、2022年に30周年を迎えた。創業者の北野邦孝先生は、「一流の医療を街の中へ」「患者さんの訴えは常に正しい」という理念に基づき質の高い医療を実践。現在までに4回、「Best Doctors in Japan」に選出されている著名な医師だ。長らく理事長兼院長を務めてきたが、2019年9月に退任し、以降は顧問として診療に参加している。
後任として現在、組織を率いるのは、金坂俊秀理事長と島田潤一郎院長だ。両名は、「北野前理事長の考えに賛同する多くの専門医の協力を得ながら、少しずつ成長することができました」と、松戸脳神経内科のこれまでを振り返る。
金坂理事長は同クリニックについて、「一言で言えば、脳神経内科の高度な外来専門クリニックです。神経疾患の患者さんは、千葉県の房総方面や銚子方面、埼玉県、茨城県といった遠方からも来られています」と紹介。ただし、神経疾患限定というのではなく、生活習慣病の治療を含めて健康管理も行うなど地域住民の主治医としての一面も持っていると語る。
初診患者の多くは、他の医療機関の医師からの紹介、患者同士の口コミ、インターネット検索などによって松戸脳神経内科に辿り着く。最寄駅であるJR・流鉄流山線馬橋駅からは1.6kmほど距離があるが、同駅と松戸脳神経内科を結ぶ専用シャトルバスが、診療時間帯に20分おきに往復しているので通院は大変便利である。
2. 医療の特徴
7名の専門医がほぼ毎日4診体制で診療
より早期に患者を拾い上げ進行を遅らせる
島田院長は松戸脳神経内科の医療の特徴として、充実した人員体制で外来に特化して診療を行っていることを挙げ、「常勤の専門医が4名、非常勤の専門医が3名、合計7名の専門医が、ほぼ毎日4診体制で患者さんを迎えているのは、クリニックとしてはかなり珍しいと思います。専門医が複数いることの最大のメリットは、専門医同士で相談し合えることです。パーキンソン病患者の治療は主治医制ですが、パーキンソン病と一言で言っても、一般的な症状とは違うケース、進行の仕方が珍しいケースなど典型例に当てはまらないケースも多々ありますので、そういったケースについては特によく相談しながら診療を進めていきます」と説明。「7名の医師は同じ脳神経内科の専門医でも専門分野や経験が異なるため、個々の患者を診る視点も一人ひとり違い、それが参考になります」と利点を語る。
4名の常勤医が一堂に会するのは、月に1回の画像カンファレンスの時だ。ここでは興味深い所見が見られたケースなどについて皆で検討し意見交換する。
在籍する医師が関連している医局は千葉大学、北里大学、順天堂大学など。非常勤医は千葉大学2名、順天堂大学1名だ。「院内だけでなく、こうした医局の専門医との連携も非常にスムーズです。これも専門医が揃っている当クリニックの強みだと思います」と島田院長は言う。
一医師の立場から見た同クリニックの魅力は、「軽症のうちに病気を発見し、できる限り生活満足度を上昇させることに力点を置いた診療ができること」と島田院長。神経疾患の多くは完治が難しく、大学病院をはじめ大病院では重症の患者を診ることが多いが、「それよりずっと前の段階で私たちが病気を発見し、早期から介入することで、患者さんにより長く元気でいていただくことが大事なポイントだと考えています」と話す。
一方、病気が進行し、入院が必要な検査や治療を受けることになった場合などは、速やかに前述した大学病院や地域の市中病院につなぐ。
過去1年間(2023年5月時点)に同クリニックを利用したパーキンソン病患者は524人。この中には初診のみで終わった患者も含まれる。継続して通院している患者は約500人くらいだという。
3. 検査体制
総合病院並みの検査設備・人員体制で早期発見し、
連携先病院での核医学検査も活用し慎重に診断
早期発見のための検査体制も充実している。MRI、CT、超音波検査、脳波検査、末梢神経生理検査、骨密度測定などの装置が揃い、総合病院並みの検査機能を持っている。特に超音波に関しては、腹部、血管、体表臓器などすべての領域で認定資格を持つ超音波検査士を外部から招聘して精度を高めている。
検査部門のスタッフは、放射線技師と臨床検査技師の合計で常勤だけで4名いる。検査体制の充実は、神経疾患のみならず、全身の病気の早期発見につながっている。パーキンソン病の疑いで来院した患者でも、検査によって別の病気が発見されることもある。
パーキンソン病の確定診断のために用いるMIBG(meta-iodobenzylguanidine)心筋シンチグラフィーとDAT(dopamine transporter)スキャンの2つだけはクリニック内にないため、同じ松戸市内の松戸市立総合医療センターに依頼している。
島田院長によれば、これらの検査が必要になるのは、診断に迷うケース、患者の年齢が若い場合、患者がより慎重な診断や治療を希望している場合など。そういう場合は詳細な検査を行い、客観的な証拠をより多く集めてから治療を開始するという。
同クリニック内の検査だけで済む場合は、即日診断・即日治療開始が原則で、近年はMRIの検査枠を増やすなど体制をさらに強化している。外部に監査を依頼した場合でも、概ね2〜3週間後には治療が始められる体制が整っている。
4. パーキンソン病の治療
問診を重視し病状や経過を把握
神経疾患の経験豊富な看護師、薬剤師が活躍
島田院長は、「パーキンソン病を治療するうえで最も重要なのは問診です。初診では特にじっくり、困っている症状やこれまでの経過などを患者さんにお聞きします。これもあったあれもあった、そういえば5年前から気になっているなど、世間話のように会話をし、こちらから問いかけることで気づいていただけることも多々あるので時間を十分かけます。そして身体所見を取ってある程度診断をつけてから、各種検査をします。検査はある意味では裏付けといえます」と、問診を重視する姿勢を語る。
初診患者に問診票の記入を促したり、足りない部分を加筆してもらったりといったやりとりは看護師が行っている。ここで十分な情報が記入されたものを医師が見て、その内容を参考にさらに詳しい問診を行うといった流れが基本だ。診察室や検査室への患者の案内、付き添いなども看護師の役割。特定疾患や介護保険の申請の案内、心理的サポートなども看護師が行っている。
松戸脳神経内科の看護師は5名おり、新型コロナウイルス感染症が流行する以前まで、院内でほぼ隔月で行われていた、専門医持ち回りによるパーキンソン病勉強会で知識や技術を身につけてきた。また、日々、多くのパーキンソン病患者に接しながら、専門医の診療を通してOJTを積み重ねている。
「パーキンソン病は治療薬のある病気ですが、回復は難しい神経難病であり、診断された患者さんは多かれ少なかれショックを受けられます。そのため、診断時からしっかりと心理的に寄り添っていくことが非常に重要だと思っています」と島田院長は言う。
問診、診察、検査が終わったら暫定診断のかたちで家族も含めて患者への説明を行い、希望を聞きながら治療を組み立てていく。患者に高齢者が多いこともあり、初診患者の多くは家族とともに来院するという。
来院のきっかけは、手が震える、歩きにくい、姿勢が悪くなったなど、自覚症状がほとんど。こうしたパーキンソン病の典型的な症状のある患者は比較的診断がしやすい。一方で、眠れない、イライラがひどいといった悩みがあって来院した患者に、パーキンソン病が見つかることもある。
その後は病状や患者の希望に合わせて定期的に通院してもらい、薬物療法や生活指導を中心に治療していく。また、より詳細な検査が必要であれば前述した通り連携先病院に検査を依頼する。
薬の説明は薬剤師が行う。松戸脳神経内科には院内薬局があり、薬剤師が常駐している。金坂理事長は、「パーキンソン病患者の場合、治療を進めるうえで院内薬局は有効」と話す。処方する薬剤自体が多く、専門性の高い薬剤が多いため、普段から脳神経内科領域の薬に接している薬剤師の方が、より適切な説明やアドバイスができるからだ。
島田院長も、「近年は貼付剤も増えており、薬の作用だけでなく、皮膚のケアなども含めてアドバイスできることが大事です。その点、脳神経内科に特化した薬剤師はマイナートラブルへの対応も得意ですし、迅速に対応できますから、患者さんも、私たち医師も安心して任せられます」と言う。
5. 地域連携
患者にとって最も良い手段を選ぶのが連携の基本
確定診断、セカンドオピニオンで開業医をサポート
地域連携に関する基本的なスタンスとして金坂理事長は、「患者さんにとって最も良い手段は何か、どこの医療機関で治療を受けていただくのが一番良いかが当然優先されます。ですから、当クリニックで治療を継続することにこだわることはありません」と話す。
入院を要する検査や治療、院内にない特殊な検査が必要な場合などは連携先医療機関につなぐことを前述したが、入院を必要とする治療の代表的なものにDBS(Deep Brain Stimulation:脳深部刺激療法)がある。この場合は治療実績の豊富な順天堂大学医学部附属順天堂医院、千葉大学医学部附属病院を中心に、患者の居住地や通いやすさに合わせて紹介先を選定し、患者情報を共有しながら対応する。
紹介先の選定などは基本的に各医師に一任されている。主治医が判断に迷った場合のみ他の医師がアドバイスする。また、術後は併診のかたちで同クリニックの医師も治療に関わっていく。
このほかリハビリテーションが必要な患者に地域のリハビリテーション病院を紹介し一定期間入院してもらったり、足腰が弱るなどの理由で通院困難となった患者の治療は訪問診療医に引き継いでいる。脳神経内科専門の訪問診療医は松戸市内にはいないが、神経疾患の診療経験が豊富な総合内科医は近隣にもおり、そうした医師に依頼するようにしているという。
反対に、開業医などから診断や治療、セカンドオピニオンを依頼されるケースも多々ある。セカンドオピニオンの依頼には、開業医が診断に迷っているケース、治療効果が出にくいケースなどが含まれる。「パーキンソン病は神経疾患の中でも特に診断・治療に関する専門知識や経験が求められる疾患です。複数の専門医と充実した検査体制を擁する当クリニックには、専門医療機関としての機能の発揮、それによる一般の医療機関の負担を軽減する役割が求められていると思っています」と専門医の役割の重要性を金坂理事長は強調する。
6. 今後の課題・展望
潜在患者を医療につなげるためにも
専門性を維持しつつ利用しやすいクリニックを目指す
島田院長は、「医療機関にはそれぞれ役割があり、その役割を果たしながら地域で患者さんを診ていくことが大事です」としたうえで、「当クリニックの大きな役割は患者さんの掘り起こしです。まだ医療に結びついていない患者さんをより軽症のうちに見つけ出し、治療につなげていく部分で力を発揮したいと思います」と、地域での立ち位置をあらためて語る。そのためには「これまで以上にいつでも、ちょっとした悩みだけでも相談に来てもらえるような、患者さんにとって利用しやすい存在になりたい」と語る。
潜在患者を掘り起こすための有効な手段としては、口コミの効果を挙げ、「長く通われている患者さんが、近所の方やご友人に当クリニックを勧めてくださるケースが多々あります。これからも口コミで伝えていただけるような医療機関であり続けるためにも、とにかく目の前の一例一例を大切にして、丁寧に治療していきたいと思います」と、決意を込めて語る。これと併行して、「ホームページの充実など、時代に合ったアピールの強化も考えています」と金坂理事長が続ける。
今後については、「開業以来の理念をしっかりと継承し、質の高い医療を提供し続けていきたい。そして、患者さんがより良い状態で日常生活を送っていただけるようにお手伝いをすることを責務と考え、地に足のついた取り組みを重ねていきます」と金坂理事長。求められる役割を十分に自覚しつつ、さらなる発展を目指していく。
KKC-2023-00688-1
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