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国立研究開発法人 国立精神・神経医療研究センター病院
[パーキンソン病 med.front]

2023年11月6日公開/2023年11月作成

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病院外観
  • ●病院長:阿部 康二 先生
  • ●開設:1940年12月
  • ●所在地:東京都小平市小川東町4-1-1

最先端の脳神経内科を中心とした
「PMDセンター」でPD患者を全人的にサポート

国立研究開発法人 国立精神・神経医療研究センター/NCNP病院は、精神・神経・筋・発達障害の4領域を核として、高度先進医療と臨床研究推進を担う国内唯一の精神・神経ナショナルセンター病院である。パーキンソン病(PD)の治療は、各分野の専門医の揃った脳神経内科で担うほか、関連部門の力を結集したパーキンソン病・運動障害疾患センター(PMDセンター)を組織し、PD患者を全人的にサポート。研究にも力を注ぎ、PD医療のレベルアップ、均てん化にも尽力している。

1. 病院の概要 病院と研究所が一体となった
国内唯一の精神・神経ナショナルセンター

髙橋 祐二 特命副院長/脳神経内科診療部長

髙橋 祐二 特命副院長/脳神経内科診療部長

1940年12月、傷病兵の中の精神疾患患者を受け入れる傷痍軍人武蔵療養所として開設され、1945年に厚生省(当時)に移管されて以降は国立の高度医療センターとして、一般の人々に精神・神経医療を提供し続けている。2010年4月に独法化され、同年9月にセンター新病院竣工。病院と研究所が一体となった「国立研究開発法人 国立精神・神経医療研究センター(National Center of Neurology and Psychiatry:NCNP)病院」(以下、NCNP病院)となったのは、2015年4月のことである。

「国内唯一の精神・神経分野のナショナルセンター病院である当院は、国立の施設としての政策医療の推進、研究開発法人としての他機関との連携による疾患の解明・克服に向けた研究、研究によって生まれた診断技術や治療法の実際の医療への展開など、さまざまな特徴的なミッションを担っています」と、特命副院長でもある脳神経内科の髙橋祐二診療部長が紹介する。

2. 脳神経内科の特徴 モットーは「地域に愛される最先端の脳神経内科」
院内外と連携して治療と研究を推進

脳神経内科では、「地域に愛される最先端の脳神経内科」をモットーに、神経難病を中心に専門的な医療を提供している。「『最先端の脳神経内科』であることは、我々の存在意義の重要な部分です。一方で、専門医療機関として地域に貢献することも大きな役割。これらを両立させることを目指しています」と髙橋診療部長は言う。

同科に所属する医師は18名で、各分野の専門家が結集。各種ガイドラインの筆者、関連学会の役員などが名を連ねている。また、医師たちの出身大学がバラエティに富んでいるのも、いかにもナショナルセンターの脳神経内科らしい一面だ。

「診療科間の連携がたいへん緊密であることも、精神・神経分野に特化した比較的小所帯の病院ならではの当院の特徴だと思います。たとえば、神経疾患の患者さんの中には精神症状で困っておられる方も多いのですが、そういう場合は脳神経内科の医師と精神科の医師が協力して多面的・多角的に対応します。同様に他の診療科とも気軽に相談し合い、協力し合える関係ができています。また、看護部、薬剤部、栄養管理部、リハビリテーション部といった各部門との連携もスムーズで、疾患の治療だけでなく患者さんの生活全体をサポートしていく体制ができているのは大きな強みだと感じています」と語る髙橋診療部長。「当院に赴任してちょうど10年。診療科間や部門間の垣根を感じたことはこれまでほとんどありません」と言う。

脳神経内科と神経研究所との連携によるさまざまな研究も進められている。たとえば疾患メカニズムの解明など基礎研究の分野では、同科から患者の検体や質の高い診療情報を提供し、神経研究所で活用してもらっている。髙橋診療部長の専門である遺伝学の分野では、PDをはじめとした神経疾患の遺伝子解析なども進められている。また、双方の連携によって生まれ、すでに市場に出ている医薬品もある。こうした成果の背景には、バイオバンクやブレインバンクが十分機能するなど臨床と研究を結びつける基盤が整ったNCNP病院の特徴的な環境がある。

同科の受診者数は増加傾向にあり、2022年度には初めて新患の数が年間2,000人を超えた。そのうちPD・パーキンソン症候群の人は約500人(約25%)となっている。

3. 専門外来・PMDセンター 患者の入口は「パーキンソン外来」
PMDセンターでは多職種で患者をサポート

PDは神経難病の中でも比較的多い疾患ということもあり、脳神経内科の医師全員がPD患者に高いレベルの外来診療を提供している。また、専門医による「パーキンソン病専門外来」を毎日行っており、他院からの紹介患者の窓口になったり、確定診断や最先端医療を求める患者を受け入れたりしている。

一方、PDの診療に、脳神経内科を中心とした関連する診療科と多部門が総力をあげて取り組むべく設置されている組織に、パーキンソン病・運動障害疾患センター(Parkinson disease & Movement Disorder Center:PMDセンター)がある。同センターは、NCNP病院が組織する11の専門疾病センターの1つである。

「患者さんの入口はパーキンソン病専門外来であり、PMDセンターでは、プログラム入院や定期的なリハビリテーションなど多職種がかかわってより質の高い診療を提供するためのデザイン、体制づくりから、入院医療、退院後のサポートまで行っています。初診から外来通院を続けておられる患者さんには脳神経内科の医師が継続して対応し、PMDセンターは少し進んだ段階で、入院を機にかかわり始めることが多くなっています」と、専門外来とセンターの役割の違いを髙橋診療部長が説明する。

ただし、2021年度からは新たに、PDや運動障害疾患の患者・家族からの相談にPMDセンター所属の看護師やソーシャルワーカーが随時、専門的に応える取り組みも始まっており、相談対応という意味では比較的早期からかかわるケースも増えてきている。

「病状はさほど進んでいない段階でもお困りごとのある患者さんが多いことから、この取り組みを始めました。外来担当の医師を介して介入を求められることもあります。院内のほかのソーシャルワーカーや退院調整看護師も協力してくれています。せっかく当院のような専門施設に来ていただいているのですから、何でも気軽に相談していただきたいと思っています」と同センターの相談業務について紹介するのは、花井亜紀子看護師長だ。相談窓口は、医療連携福祉相談部・地域連携医療福祉相談室に置いている。

花井看護師長は緩和ケア認定看護師、難病看護師の資格を持ち、難病患者の緩和ケアにも注力している。また、医療連携福祉相談部入退院支援係長も兼務するなどさまざまな役割を担っている。

同センターでは、DBS(脳深部刺激療法)などのデバイス補助療法、パーキンソン病の腰曲がり治療(姿勢異常治療プログラム:MADI)などもそれぞれのエキスパートを中心に積極的に実施。MADIについては、長年に渡り姿勢異常の研究に取り組む医師を中心に、治療プログラムや特殊なリハビリテーション入院を提供。また、治療法の研究も進められている。

睡眠障害センターとの連携でPDの睡眠障害の治療にも取り組んでいる。また、同院はRBD(REM睡眠行動異常症)患者の画像検査、血液・脳脊髄液検査の結果から、PDのバイオマーカーを探す多施設共同研究(J-PPMI研究)の中心でもある。J-PPMI研究は、NCNP病院の元病院長でPDの臨床医としても広く知られた故村田美穂医師の発案で始まった研究だ。

4. PMDセンターの「3つの核」 臨床・研究・人材育成が3大ミッション
メディカルスタッフによる研究も強力にサポート

PMDセンターではこうした診療や研究も含めてそのミッションを、「3つの核」として掲げている。「臨床の核」「研究の核」「人材育成の核」である。「臨床の核」には、個々の患者に対する最善の医療の提供、そこで出てきた課題の解決、エビデンスの蓄積による医療モデルの構築と発信による医療の均てん化などが含まれる。

「研究の核」は、病院・研究所の各部門、バイオバンク、ブレインバンクなどとの連携により病態を解明し、治療薬シーズや新たな診断法の開発などを実現することで、アンメット・メディカル・ニーズを解決すること。また、院内外のレジストリ(疾患登録システム)などに取り組み、多施設共同研究のハブになることも「研究の核」の一環である。

「人材育成の核」とは、こうした臨床や研究を通して医療従事者、研究者を育成し、スペシャリストを輩出することである。「人材育成では、医療の実践や、院内で定期的に行われている多職種連携カンファランスへの参加などOJTを重視しています。私が特に強く若い医師たちに伝えているのは、各スタッフの専門性をリスペクトすることの大切さです。当院には医師だけでなくそれぞれの職種に各分野のスペシャリストがいます。その方々から学べるだけ学ぶことが重要で、学ぶ機会を増やすようにもしています。また、学会発表や論文執筆のサポート、特に医師以外の職種に対するサポートにも力を入れています」と髙橋診療部長が教育に対する姿勢を語る。

専門資格の取得も推進しており、現在は、日本パーキンソン病・運動障害疾患学会(MDSJ)が認定する「パーキンソン病療養指導士」の資格を、看護師をはじめ多くのメディカルスタッフが順次取得している。

学会発表や論文執筆のサポートという点では、花井看護師長も大きくその恩恵を受けているそうで、「論文の内容についても研究費の面からもサポートをいただいた結果、大きな成果を挙げることができました」と感謝する。ここでいう成果とは、2021年11月に開催された「第9回日本難病医療ネットワーク学会学術集会」で、「日本難病医療ネットワーク学会賞最優秀演題賞」を受賞したこと。演題は「パーキンソン病及び関連疾患の治療選択〜当センター患者の医療的ケアの実態調査〜」だ。

「神経難病患者さんやご家族の医療的ケアの選択支援に取り組みながら、思い悩む姿をたくさん見てきました。そんな中、実際にはどれくらいの方がどんな医療的ケアを実施されているのか明確にする必要性を感じるようになり、当院のビッグデータを活用して調査したのが始まりでした。さらにPD及び関連疾患の患者さんの医療的ケア、特に胃ろう造設に絞って実態調査を行いました。その結果、PD患者さんは高齢かつ長い経過の中で、発症から比較的時間が経ってから医療的ケアを選択されていることがわかりました。その時点で患者さんの意思表示が可能だったケースは約80%でした。こうしたデータをPSP(進行性核上性麻痺)、CBD(大脳基底核変性症)などと比較しながら、課題も含めて発表しました」と花井看護師長。

この調査結果を見る限り、時間的余裕を持って、本人の意思により選択しているケースが大半であるように見えるが、花井看護師長は論文の中で、「PDは生活の時々において症状の進行とともに、様々な苦悩の中にあると報告されており、医療者は早期から身体的・精神的苦痛の緩和をはかり、今後の生活や医療的ケアの選択についてともに検討できるよう伴走者であり続けることが重要」と記している。

さらに花井看護師長は、同論文を英語に翻訳して日本神経学会英文誌『Neurology and Clinical Neuroscience』に投稿。「A fact-finding survey of medical care provided to neuromuscular disease patients at the National Center of Neurology and Psychiatry in Japan」の演題名で掲載された英語論文を、同誌のウエブサイトに誰でも閲覧できるオープンアクセスで公開し、世界に向けて情報発信をしている。

研究はいまも継続しているとのことで、「一般的には延命治療とされる胃ろう造設もPD患者さんにとってはQOL向上になりえるものなので、実態を知ったうえで最良の選択ができるように支援していくことが私たちの務めであると改めて感じています」と話す。

5. ブラッシュアップ入院 定期的に生活を見直し最適な医療を提供
得られた臨床データを研究に活用

PMDセンターでは、PD・パーキンソン症候群の患者専用のプログラム入院として「ブラッシュアップ入院」を提供している。これは、定期評価入院の仕組みで、リハビリテーションや生活上の注意点を見直し、最適な医療を提供することを目的としている。基本は2週間コース。ほかに忙しい人などを対象とした1週間コース、さまざまな指導、調整などを盛り込んだ4週間コースがある。

1週間コースの内容は「評価・検査」のみだ。医師による神経学的診察、MDS-UPDRS(Movement Disorder Society Unified Parkinson's Disease Rating Scale)による評価、脳MRI、心臓交感神経シンチグラフィー、ダットスキャン®、脊椎レントゲン、筋CT、骨密度、重心動揺計、血液・髄液、嗅覚、心理といった各種検査が含まれる。

2週間コースは「評価・検査+リハビリテーション」のコースで、1週間コースの内容に、脳血流シンチグラフィー、睡眠検査、栄養評価、心臓超音波検査が加わり、さらにリハビリテーションを行う。

4週間コースは「評価・検査+強化リハビリテーション+生活指導等」のコース。2週間コースの内容に、生活指導、服薬指導、栄養指導が加わり、リハビリテーションが強化リハビリテーションとなり、さらに必要や希望に応じて薬剤調整、在宅環境調整、嚥下造影検査、認知行動療法、他科の受診まで追加されるなど、"しっかり・みっちりやりたい人"向けに設定されている。

「たとえば高齢者に多い骨粗鬆症を早期に見つけて治療につなげ転倒を防止するなど、PDに関連する検査だけでなく、ほかの検査も行うことで全身状態を把握しリスクを軽減することを考えています」とブラッシュアップ入院の特徴を語る髙橋診療部長。どのコースも診断が確定した人が対象で、全国から患者さんが集まっている。毎年利用しているPD患者も少なくないという。

ブラッシュアップ入院の参加者はこれまでに述べ568人(2023年3月現在)。このうち同意の得られた患者の臨床データは蓄積されており、それを元に合併症の起こりやすい条件などに関する研究もなされている。

6. リハビリテーション 海外発のメニューからオリジナルメニューまで充実
経験豊富なPT、OT、STへの患者の信頼も厚い

PDのリハビリテーションには充実した内容で取り組んでいる。経験豊富なPT、OT、STが揃っていて、誰が担当しても、海外のメソッドを取り入れたメニューからオリジナルのメニューまでさまざまなプログラムでの実施が可能。そのプログラムは、実施前と実施後の変化を把握できるように組まれており、グローバルスタンダードな臨床指標を活用して客観的に評価している。

リハビリの実施にあたっては、患者に楽しんでもらうことを重視し、音楽に合わせてリズミカルに動くプログラムや、趣味や娯楽の要素を取り入れたメニューも用意している。また、自宅でも安全にリハビリが継続できるように写真入りのオリジナル・リハビリマニュアルを配布したり、動き方の見本を示した動画配信を行ったりといった活動にも力を入れている。同院のリハビリスタッフと地域の医療・介護スタッフとの連携も進んでおり、退院後も同レベルのリハビリが継続できるように指導や情報提供に努めている。

花井看護師長によれば、同院のリハビリセラピストは患者からの信頼が厚く、ブラッシュアップ入院ではリハビリを含めた2週間コースを希望する人が多いという。また髙橋診療部長は、「中には指導してほしいセラピストを指名する患者さんもおられます。うまく担当してもらえると患者さんのモチベーションもアップするようです」と笑顔で話す。

7. 今後の課題・展望 PD患者のあらゆる面での改善が目標
研究の基盤づくりにも尽力

髙橋診療部長は、「PDは、神経難病の中で最も治療研究が進んでいる疾患です。しかし、まだまだアンメット・メディカル・ニーズが多いのも現実ですし、PDに対する捉え方も変わってきていて、特に非運動症状の重要性が高まってきています。ですから我々はこれまで以上にPD患者さんの全体を見る必要があります。いわゆるパーキンソン症状だけでなく、たとえば高い比率で出てくる不安症状、その先にあるうつ症状までケアできなければ不十分です」と指摘。「今後はあらゆる面での改善を目指していきます」と明快に語る。

研究面の目標は、根本治療に向けた研究を推進すること。「併設の研究所をはじめ国内外のさまざまな機関との連携のハブ、あるいは基盤として当院を有効に活用していただければうれしいです。精神・神経疾患の幅広い研究を下支えし、推進していくことがナショナルセンターとしての役割だと思っています」と言う。

「臨床医の立場としては、一人でも多くの患者さんの協力を得てバイオバンク、ブレインバンクをより充実させるなど研究の基盤づくりに尽力していきたい」と髙橋診療部長。精神・神経分野唯一のナショナルセンター病院としてのNCNP病院の存在感は、今後ますます高まっていきそうだ。

KKC-2023-00747-1

パーキンソン病 med.front

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