近畿大学病院
[乾癬治療最前線~患者さんとともに歩む~]
2026年8月18日公開/2026年8月作成

- ●病院長:東田 有智 先生
- ●開設:1975年5月
- ●所在地:大阪府堺市南区三原台1丁14番1号
南大阪エリア唯一の大学病院
地域医療の拠点として
多様な患者さんに個別に対応
2025年11月、大阪狭山市から堺市南区に新築移転し「おおさかメディカルキャンパス」として新たなスタートを切った近畿大学病院は、南大阪エリア唯一の大学病院として、高度医療はもとより幅広い患者さんを受け入れる市民病院的な役割も果たしている。皮膚科はアトピー性皮膚炎、悪性黒色腫、乾癬など難治性疾患の診療に定評があり、全国から患者さんがやってくる。地域の基幹病院として開業医などとの密な連携のもと、質の高い専門医療を提供している。
1. 病院の概要
大学創立100周年・医学部設立50周年を機に
「おおさかメディカルキャンパス」として新生
近畿大学病院は1975年5月、「近畿大学医学部附属病院」として開院した。2019年4月に「近畿大学病院」へ名称変更。2025年11月には「おおさかメディカルキャンパス」を新築して医学部・病院を移転した。今回の新築移転は、近畿大学創立100周年記念事業並びに医学部設立50周年事業の一環である。
大阪府大阪狭山市にあった旧病院は、南海高野線金剛駅からバスで約15分と、少々不便な環境にあったが、おおさかメディカルキャンパスは、南海電鉄泉北線 泉ケ丘駅改札からペデストリアンデッキで直結しており、通院は格段に便利になっている。地域の医療機関からも、「交通の便が良くなったことで患者さんを紹介しやすくなった」という声が多く届いているという。
一般的な大学病院の使命である教育・研究・診療にとどまらず、地域連携に力を注ぎ、地域医療発展への貢献を強く意識していることは、南大阪エリア唯一の大学病院として地域医療の拠点としての役割を果たしている同院の特徴である。
新築移転に際しては、高度急性期医療機能や外来機能の充実も図った。外来診療室を個室化して防音効果を高めプライバシー保護に努めるなど様々な工夫や設備の刷新がなされている。皮膚科診療部長を務める大塚篤司皮膚科学教室主任教授によれば、皮膚科外来では、旧病院で手狭だった美容医療専用の治療室を複数完備。各種レーザーも配備したゆったりした空間で治療を提供できるようになっている。
スマートホスピタルを指向し、アプリケーションを使った受付・会計手続きや、アバターによる患者さん対応など最新のデジタル技術を駆使した仕組みを導入したことでも注目されている。こうした取り組みにより、待ち時間の有効活用や短縮など患者さんの利便性の向上を目指している。

外来受付カウンターでもアバターを活用している
2. 皮膚科学教室の特徴
若手医師を中心に活発に活動
アトピー性皮膚炎、悪性黒色腫、乾癬治療に大きな実績

大塚 篤司
皮膚科学教室 主任教授
大塚主任教授の着任は2021年4月。以来、「仕事は楽しく、人にやさしく、医療を前進させよう」のモットーのもと、若手医師を中心に賑やかに臨床や研究に取り組んでいる。湿疹や白癬、帯状疱疹といったコモンディジーズから悪性黒色腫、重症薬疹など難治性の疾患まで幅広く扱っている。
大塚主任教授は2003年に信州大学医学部を卒業し、チューリッヒ大学病院客員研究員、京都大学医学部特定准教授などとして研鑽を積んできた。専門はアトピー性皮膚炎、悪性黒色腫、乾癬で、特にアトピー性皮膚炎については全国から患者を受け入れている。皮膚科専門医、アレルギー専門医、がん治療認定医などの資格を持ち、皮膚疾患に関する著書、ウェブなどによる情報提供にも力を入れている。
皮膚悪性腫瘍の症例数(がん登録による)において近畿大学病院皮膚科は、大阪府一を誇る。また、乾癬については、前任の教授の時代から取り組んでいる「乾癬外来」を中心に、やはり多くの患者さんをフォローしている。
アトピー性皮膚炎、乾癬ともにすべての生物学的製剤が使用可能で、重度の症例にも対応できるのは大きな強みだ。新しい治療法や新薬の開発により患者さんに提案できることは確実に増えている。それらを駆使することで多くの患者さんを症状改善や寛解に導いている。
「患者さん個々の問題に正面から向き合い、困りごとが解決するまでしっかり付き合います」と同教室の基本姿勢を大塚主任教授が語る。初診は上級医が担当し、状態を見極めたうえで再診以降の担当を振り分けることで診療の質を高めている。
研究面では、AIを搭載した画像診断支援ツールの開発に取り組んでいる。たとえば乾癬の場合は、写真を撮るだけでPASI(Psoriasis Area and Severity Index)スコアが表示されるようなイメージである。大塚主任教授は、「誤診や医師による診断のブレをなくし、診療の精度を上げることが目的の1つです。また、医師がその場にいなくても診断・治療ができるところまで持っていければ、医師不足に悩む医療過疎地域などにも貢献できると思います」と、この研究に大きな期待を寄せている。
3. 乾癬治療
ピラミッド計画を基本にPASIクリアを目指す
関節症状があれば早い段階で生物学的製剤を導入
乾癬治療は、基本的にはいわゆるピラミッド計画に沿って行っている。すなわち、外用療法、光線療法、内服療法、生物学的製剤による注射療法を段階的に行っていく方法である。ただし、乾癬治療の目的で近畿大学病院皮膚科を受診する患者さんには、他の医療機関で外用薬や光線療法、内服薬による治療を受けたものの、症状コントロールがうまくいかなかったケースが多い。そのため大半は、同科を受診した時点で生物学的製剤の検討対象となる。
乾癬患者さんが来院した場合、まずは初診を担当する上級医がPASIスコアや関節症状の有無、痛みの有無などによりスクリーニングを行う。その後はそのままその上級医が治療を担当する場合もあれば、「乾癬外来」で引き継ぐ場合もある。
乾癬外来は毎週木曜日に実施。現在は、乾癬のほか色素異常症や膠原病などを専門分野とする皮膚科専門医を中心に診療している。一般の皮膚科外来と乾癬外来のどちらが担当するかについては明確な区別はなく、患者さんの都合を重視して決めている。ただし、初診で関節症状が見られた場合には、乾癬外来につなぐことが多い。乾癬外来では関節エコーを実施しており、より正確な診断が可能だからである。
「乾癬性関節炎では関節破壊が不可逆的に進行する可能性があるため、できるだけ早い段階で診断し、生物学的製剤によって治療することが大事だと考えています」と大塚主任教授。多種類ある生物学的製剤のうちどれを使うかを判断する場合も、関節症状の有無が大きなポイントになるという。また、副作用が特に心配になる年齢か、どれくらいの頻度で通院できるか、といったことも薬を選択する際の検討事項である。
生物学的製剤の選択に際しては作用と副作用、治療頻度や費用について、主治医から患者さんへ十分な説明を行う。説明には各製剤の紹介パンフレットなどを活用するが、乾癬外来で生物学的製剤について詳細な説明を実施する場合は、近畿大学病院皮膚科で独自にまとめた資料「生物学的製剤による治療を検討している方」を使っている。
生物学的製剤による治療のゴールとしては、PASIクリアを目指すことが多いという。大塚主任教授は、「少なくともPASI-75でOKを出すことはまずありません。もしPASI-75で薬の効果が伸び悩むようであれば、違う薬を試すなど工夫をします。PASIクリアを達成した患者さんからは、外用薬が不要になって楽になった、気兼ねなく温泉に行くことができたといった声が聞かれます」と、寛解を目指す治療の意義を語る。
生物学的製剤により症状が改善してからは、外用療法などの併用治療が不要になるケースも多いが、中には乾癬ピラミッドの最下位である外用療法やその上の光線療法を続けるケースもある。近畿大学病院皮膚科では、外用療法としては、ステロイド外用剤、ビタミンD3外用剤、ステロイドとビタミンD3の配合剤の3剤を症例に合わせて使用。光線療法としては、311nmの波長の紫外線を全身の皮膚に照射するナローバンドUVBと、308nmの波長の紫外線を手、足、爪など局部に照射するエキシマライトを活用している。

乾癬外来の様子

オリジナルで作成した説明ツール、「乾癬とは」と「生物学的製剤による治療を検討している方」
4. 院内連携・地域連携
関節症状ではリウマチ科の協力を得ることも
地域の医師たちと直接会う機会を増やし連携強化
乾癬外来で関節エコーを実施するようになったのは、かなり以前に、皮膚科の医師がリウマチ科の医師から手ほどきを受けたのがきっかけである。その関係から、乾癬性関節炎の治療を皮膚科主導で行うようになった今でも、関節症状についてリウマチ科の医師に相談することが多く、ケースによっては皮膚症状を皮膚科、関節症状をリウマチ科というように治療を分担することもある。
地域連携にも力を入れている。大塚主任教授は2021年4月の就任当時から、地域の医師を交えた勉強会、研究会、病診連携の会などを関係者の協力を得ながら積極的に開催し、関係づくりを進めてきた。地域連携課のスタッフとともに、地域の医療機関を個別に訪問して情報交換を重ねた時期もある。
連携先医師とのメーリングリストも作成し、治験の案内など近畿大学病院からの通信をはじめ、ちょっとしたことでも連絡し合える体制を整えている。こうして、どの生物学的製剤の治療が可能かといった具体的な話も気軽にできる関係を確立。おおさかメディカルキャンパスに移ってからは、新病院の紹介も兼ねて新しい連携先との会合を毎月のように重ねている。
そんな大塚主任教授が乾癬治療の地域連携において、紹介元医療機関からの情報として重視しているのは、患者さんの治療歴である。「どんな治療を行って、どれくらいの成果があったのか、また、成果が得られなかったのかといった情報は、その後の治療計画を考えるうえで大変参考になります」と言う。
近畿大学病院皮膚科では、乾癬患者さんの紹介を受ける要件は特に設けていない。「治療環境も医師の専門性も様々ですから、当科としてはどんな患者さんでもお引き受けしています。こちらで診察した後、紹介元にお返しできる患者さんについては逆紹介します。特に密な連携関係が確立できている開業医が相手の場合には、生物学的製剤の導入のみ当科で行い、その後の治療は開業医が担当、検査や副作用が生じた場合の対応を私たちが担当するというようなかたちを取ることもあります」と地域連携の一端を紹介する。
「生物学的製剤に限って言えば、積極的に取り組んでいる医療機関はそう多くないこともあって、状況は個別に把握できています。普段はメールや電話で相談していますし、勉強会などで顔を合わせたときに患者さんの話をすることもあります。平日の日中の通院が難しい患者さんの場合、大学病院で対応するのは困難です。そうしたケースでは特に、診療時間や曜日が柔軟に設定されている開業医の存在は大きいと感じます」と大塚主任教授。病診連携はたいへん良好の様子だ。
5. 今後の課題・展望
皮膚科診療のAIモデルの実用化まであと一歩
地域医療への貢献につなげたい
大塚主任教授が患者さん向けに多くの情報を発信してきた背景には、一部の悪質なアトピービジネスの被害に遭う人を減らしたい、患者さんに不要な負担をかけたくないといった思いがあった。その役割は一段落し、現在は進歩する治療法の最新情報を提供することに重きを置くようになっている。「たとえば生物学的製剤の存在すら知らない患者さんもまだいらっしゃいますので、これからも有用な情報は、患者さんに届く言葉でしっかり伝えていきたいと思っています」と話す。
現在の最大の課題は、近畿大学病院皮膚科としても大塚主任教授個人としても、AIの研究で結果を出すことである。「2027年中には、実際に治療現場で使える皮膚科診療のAIモデルを世の中に公開したいと思います。研究レベルでは確立できていますので、国の承認をしっかり取って実用化し、地域医療への貢献につなげられれば嬉しいです」と話し、たゆまぬ努力を重ねている。
KKC-2026-00564-1
乾癬治療最前線
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2026年8月18日公開/2026年8月作成








