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医療法人社団観世会 腎健クリニック
[透析施設最前線]

2025年3月10日公開/2025年3月作成

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病院外観
  • ●理事長:髙橋 裕一郎 先生
  • ●院長:髙橋 浩雄 先生
  • ●開設:1992年10月
  • ●所在地:神奈川県海老名市扇町15-1

柱のない開放的な70床の透析室で安全快適な透析医療を提供
専門医2名体制で透析予防にも力を入れる

1992年、透析施設がほとんどなかった神奈川県海老名市に開院した腎健クリニック。以来、血液透析を中心とした内科・腎臓内科・泌尿器科のクリニックとして多くの患者を受け入れてきた。2020年には、最寄駅である海老名駅周辺開発を機に新築移転。柱のない広々とした透析室(70床)と陰圧の隔離透析室を新設したほか、専門医による外来診療機能の強化、検査・手術設備の拡充、一般患者と透析患者、患者とスタッフの動線分離なども実現し、保存期から維持期まで安全で一貫した透析医療を提供している。

1. クリニックの概要と特徴 海老名市周辺の透析医療を牽引して30余年
親子2代で患者中心の医療を実践

髙橋 裕一郎 理事長

髙橋 裕一郎 理事長

医療法人社団観世会腎健クリニックは1992年10月、髙橋裕一郎現理事長によって開設された。髙橋理事長は北里大学医学部を卒業後、医局の派遣先であった相模台病院(神奈川県座間市)に15年間勤務し副院長まで務めた。いずれは郷里の仙台で開業するつもりでいたが、多くの患者と触れ合う中で情が生まれ、同市に隣接する海老名市での開業を決めたという。血液透析を中心に内科、腎臓内科、泌尿器科を標榜する有床診療所。JR、小田急、相模鉄道の各線が乗り入れる海老名駅東口でのスタートだった。

「当時、この地域には透析施設がほとんどない状況で、新しい施設の開設を待ち望んでおられた方は多かったと思います」と髙橋理事長。この言葉どおり腎健クリニックには開業時から多くの透析患者が集まった。当初は4階建ての建物の2階に透析室(35床)、3階に19床の入院病床を設けていたが、外来透析患者が増加したことから入院病床を透析室に転換。2フロア・64床の透析施設に生まれ変わった。

開院時から自家発電装置を備え、2011年の東日本大震災時も電力の心配なく乗り切った。送迎サービスにも早期から着手。当時のダイアライザーの性能をシビアに見極めつつ透析時間を設定するなど透析の質向上にも努めながら、海老名市内のみならず座間市、綾瀬市、藤沢市などからも患者を受け入れた。

髙橋理事長のモットーは大学病院時代から変わらず、「患者にお尻を向けず、顔を見て笑うこと」。「患者さんと触れ合うことが私の喜び。スタッフにも恵まれ楽しくやってくることができました」と、これまでの医師人生を振り返る。現在は海老名市医師会会長も務めており、医療・介護連携、災害医療など地域医療を推進する中心人物でもある。

髙橋 浩雄 院長

髙橋 浩雄 院長

大学病院に勤務していたご子息の髙橋浩雄現院長が、腎健クリニックで診療するようになったのは2019年。その翌年の2020年に海老名駅前開発を機に西口に新築移転した。透析ベッド数は少し増えて70床となり、柱のない広々したワンフロアの透析室を実現。一般の外来患者と透析患者の動線を出入り口から分離したほか、陰圧管理ができる隔離透析室を備えるなど感染対策も強化している。

初代が理事長、2代目が院長という現在の体制になったのは2023年のこと。さらに2024年4月には、髙橋院長と親しい磯﨑雄大診療部長が常勤医に加わった。現在はともに腎臓専門医・指導医、透析専門医、総合内科専門医、腎代替療法専門指導士などの資格を持つ髙橋院長と磯崎診療部長の2名体制で、慢性腎臓病保存期から透析導入、維持透析まで一貫した医療を提供している。

基本理念である「患者さんを中心とし、医師およびスタッフとともに個々のライフスタイルに合った最善の医療を行うこと」を、医療スタッフのみならず事務職や送迎車ドライバーなども含めて全81名の職員間で共有。「患者さんの命を預かっているという責任感や、患者さんのためにベストを尽くすという高い意識が理事長の時代から受け継がれ、クリニック全体に広がっています」と髙橋院長が腎健クリニックの強みを語る。

新クリニックは、海老名市の「災害時医療救護関連透析施設」の指定を受けていることもあり、定期的な防災会議、さまざまな災害を想定した防災訓練の実施など災害対策にも一層の力を注いでいる。目標は、「スタッフ全員が有事に迷いなく行動できるようになること」と話す髙橋院長は、「神奈川県透析危機対策協議会」の県央エリア・エリア長としても活動している。

2. 透析室の概要と特徴 一般患者とは入り口から動線分離
厳重な感染対策と透析中の快適性を両立

新しい腎健クリニックは、開発の進むJR海老名駅西口から徒歩5分のところにある。小田急線とJR相模線の線路に囲まれた特殊な場所で、土地の形も一辺の長さがまちまちの五角形。建屋はこの形を巧みに利用して建てられている。

敷地内に入ると向かって左側に6台分の駐車場。ここは透析患者専用で、一般患者用の駐車場(42台)は少し離れた場所にあってシャトルバスで送迎する。玄関前には広い空間があり、キャノピー(庇)も完備され、患者は雨の日でも濡れることなく送迎車に乗降できる。

玄関への入り口は2つある。左の入り口は一般外来患者用で、中に入ると各種画像検査室や相談室などがあり、2階に上がると診察室、検査室、手術室などが並ぶ。血液検査のレベルは大学病院並みで即日結果が出る。シャント造設手術、PTAなども院内で実施している。右の入り口が透析患者専用で、入るとすぐに透析ラウンジ手洗い場があり、患者はここで手洗いを済ませてからラウンジ、更衣室、そして透析室へと進む仕組みだ。床の段差はなく完全バリアフリーである。

透析室は13.5m×46mの長方形のワンフロアで、ここに70床の透析ベッドが十分な間隔を保って並ぶ。大地震を想定し、コンソールはすべて特注の器具によりベッドに固定してある。この手法は保崎誠臨床工学技士チーフのアイデアで、「耐震構造、免震構造の建物であっても、地震の規模や建物との相性によってはコンソールが倒れてしまうことがあると知り、安全性を高める方法として院長に提案し、新クリニックで実現できました」と保崎チーフが言う。

透析室内は無柱の設計で、室内にいるスタッフは死角なく全体を見渡すことができるため見守りがしやすく、アラームライトが点灯した際にも迷うことなく駆けつけることができる。

透析室の周囲は高窓が並び、自然光がたっぷり降り注ぐ。カーテンで遮光をコントロールすることもでき、高窓を開け放てば室内の換気が一気にできる。また、万が一火災が発生した場合には、この窓が排煙設備として機能する。ほかにも無風空調設備、間接照明、体圧分散マットレスの採用、Wi-Fi設備完備など、透析中の快適性に配慮した工夫がさまざま見られる。

70床中9床は、可動式のガラスパーテーションで通常の透析ベッドとは完全に仕切られた陰圧透析室となっている。「透析室が2フロアだった旧クリニックでは自然に隔離ができましたが、今回、ワンフロアにするにあたり、隔離の仕方は大きなテーマでした」と髙橋院長。隔離透析室には外部から同室に直結された感染患者対応出入口から出入りすることができる。透析機械室もクリーンルーム化されている。院内での動線はプライバシーの保護と感染対策を目的に、一般患者と透析患者だけでなく患者とスタッフについても分離されている。

ここまで厳重な感染対策を実施しているクリニックは珍しい。新築移転の工期が2020年2月から11月だったということもあり、新型コロナウイルス感染症対策かと思われるが、必ずしもそうではないという。「インフルエンザなど予防すべき感染症は昔からいろいろありました。また、透析患者さんはもともと免疫力が弱いので感染対策は特に重要です。こうした考えから、できる限りの感染対策を施しました」と髙橋院長は説明する。

透析室スタッフは2025年2月現在、医師3名、看護師18名、看護助手16名、臨床工学技士17名。各時間帯の患者数に合わせたスタッフの人員配置を行っている。

「私たちは患者さんの各種症状に対する対応や処置、生活背景を配慮したサポート、家族支援などを担っています」と看護師の主な業務を紹介するのは廣瀬ななえ看護師チーフ。「入退院調整、送迎バスの調整、新規の患者さんの受け入れ準備など各種調整業務、新規導入患者さんへの指導パスを用いた教育も看護師の役割です」と中村梓看護師チーフが補足する。

フットケアも看護師の重要な役割の1つで、高濃度炭酸泉で足浴ができるフットケア室で行っている。下肢末梢動脈疾患のリスクの高い糖尿病性腎症の患者は月2回、その他の患者は月1回が基本で、フットケア指導士の資格を持つ看護師が担当している。

臨床工学技士は主に機器の保守管理、水質管理に関する業務を主に担い、透析回路の準備、穿刺業務、患者対応などは看護師と協働している。看護師と臨床工学技士は毎日、日勤、準夜勤ともに透析開始前に合同のミーティングを開き、透析条件の変更などその日の患者に関する情報を共有。栄養指導は、2021年4月から常勤となり現在2名の管理栄養士が実施している。

透析は月曜から土曜まで毎日8:00〜22:30で実施。「開始時間により8:00、9:00~10:30、16:30~18:30の3クールを設定していますが、実際には7:45開始の患者さんが10名ほどいらして、その後9:00前から順次60名ほどが入室するかたちです。月水金には最初の患者さんが終わった直後の12:00からも2名受け付けています。16:30以降の患者さんは60名弱となっています。お仕事の関係で遅くなった患者さんなどは19:00頃まで入室を受け入れ、不足分は別の日に透析時間を少し長めにして補うような工夫をしています」と、柔軟な透析スケジュールで対応する様子を藪内啓輔臨床工学技士チーフが紹介する。透析時間は4時間を基本に、一番長い人で6時間弱である。

現在通院している透析患者数は230名余りで、近隣地域に透析施設が増えた現在もなお増加傾向。海老名市以外の地域から、腎健クリニックを選んで通っている患者も多くいる。

3. 透析医療の特徴 2種類の透析液を2系統の配管で供給
個々の患者の状態に合わせた透析を実施

腎健クリニックでは、磯﨑雄大診療部長が2024年4月に常勤医となったことで、腎臓専門医2名による腎臓病の予防、早期発見、慢性腎臓病保存期から透析導入、維持透析まで包括的に管理できる体制が強化された。磯﨑診療部長が、腎健クリニックとの縁を次のように紹介する。

「髙橋浩雄先生と私は東海大学医学部付属大磯病院(現徳洲会湘南大磯病院)腎臓内科の同僚で、以前から親しくさせていただいていました。腎健クリニックの診療に参加するようになったのは5年ほど前の旧クリニック時代から。髙橋裕一郎先生からも多くの教えを受け、先生の診療に対する姿勢、スタッフ教育、理念などに感銘を受けたことから常勤医になりました。ここでは腎臓内科外来と透析患者さんの管理、手術全般を担当しています」

髙橋院長によると、磯﨑診療部長が来てくれたことによる最大のメリットは手術の充実だ。「当クリニックでは以前からシャント造設など手術を行っていましたが、十分とはいえませんでした。専門医2名体制になったことで、手術が必要な時に迅速に対応することが可能になりました」と髙橋院長。現在、腎健クリニックでは年間10人程度の患者の透析導入を行っている。PTAの件数は年間200件以上である。

透析医療の特徴として髙橋院長は、カルシウム濃度の違う2種類の透析液を血液検査の結果などに応じて使い分けていることを挙げ、「新薬が次々に発売される中、骨の管理には特に注力しています」と言う。保崎臨床工学技士チーフによると、薬剤溶解装置を2台使って2種類の濃度で調整し、2系統の配管で透析液を透析室に供給しているという。

続いて磯﨑診療部長が、70台すべての透析装置がオンラインHDFに対応していること、個人用透析器(2台)により無酢酸透析やオフラインHDFも行っていることを挙げ、「不快な症状や合併症の予防、アレルギー対応なども踏まえ、患者さんの状態に最も合った透析療法を提供することに努めています」と話す。

心電図検査、骨密度測定、ABI検査、SPP検査など合併症予防のための検査は全患者を対象に定期的に行っている。超音波を使った骨密度測定など最新の検査も近く導入予定で、検査の精度を高める努力も続けている。

4. 腎臓内科 健診で異常が見つかった人、他科からの紹介など
約400人のCKD患者を継続管理

髙橋院長と磯﨑診療部長が担当する腎臓内科外来には、健診で腎機能の低下を指摘された人や、他の医療機関から紹介された人などが受診する。前者の場合は通院の必要はなく経過観察とするケースも少なくないが、後者の場合はほぼ全員が何かしらの治療を要するケースがほとんどで、腎機能の状態や合併症の有無、患者の意向、紹介元医師の専門性などにより、その後の治療方針を決めていく。腎健クリニックで継続的に診ているCKD患者は約400人を数える。

「慢性腎臓病(CKD)の患者さんは成人の7〜8人に1人程度いるとされており、腎臓内科医だけではとても診きれませんので、地域の医療機関としっかり連携することが必要だと考えています。健診でわずかな異常が見つかった程度の初期のCKDの人、大学病院はじめ急性期病院で治療を受けている中でも症状の安定している人などを積極的に受け入れる一方で、患者さんによっては他科のクリニックに任せるなど、適切な連携を考えていきたいと思います」と磯﨑診療部長が言う。

5. 今後の課題・展望 初代が培った地域からの信頼をベースに
時代の変化に合わせた新しいクリニックをつくる

廣瀬、中村両看護師チーフ、保崎、藪内両臨床工学技士チーフはともに昨年、チーフになったばかりで、新人の育成などに試行錯誤しながら取り組んでいる。4名は、「腎健クリニックへの通院が長くなればなるほど、患者は高齢化していくので、フレイル予防などこれまで以上に高齢患者への対応力の強化を図りながら、個々のスキルアップとともに、医療チームとして成長していきたいと思います」と声をそろえる。

磯﨑診療部長は診療面の課題として2つの軸を示す。1つはCKDの管理で、前述の通り地域連携推進により透析予防に努めること。もう1つは、透析の質のさらなる向上だ。「透析療法そのものの工夫はもちろん、スタッフの関わり方、薬の使い方、食事療法、運動療法などさまざまな面から、それぞれの患者さんに寄り添ったより良い透析を提供していきたいと思います」と今後の抱負を語る。

髙橋院長は、腎健クリニックのこれまでの歩みについて、「理事長を中心にスタッフの力を生かして、良い医療を提供するために突っ走ってきたことで成果を上げてきました」と話し、「これからの時代はスタッフの満足度を高めることが患者サービスの向上につながる、という視点が重要と考えています。まずは新築移転によってハード面はかなり良くなりました。そのうえでスタッフの意見に耳を傾け、できるだけ要望に応えること。考えや価値観は人それぞれなので、皆一緒というのではなく、時代の変化を見据えつつ、個々を重視したチーム医療を推進していきたいと思います」と経営者としての方針を語る。

地域の人々に愛され、頼られ続けてきた腎健クリニックは、新築移転と世代交代を経て、新たな歴史を刻み始めている。

KKC-2025-00152-1

透析施設最前線

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