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社会医療法人 北海道恵愛会 札幌南一条病院
[透析施設最前線]

2024年1月24日公開/2024年1月作成

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病院外観
  • ●理事長:西田 憲策 先生
  • ●院長:土田 哲人 先生
  • ●開設:1981年12月
  • ●所在地:札幌市中央区南1条西13丁目

夜間透析、旅行透析、送迎などを先駆的に展開
最大210人受け入れ可能な広く快適な透析室を新設

1981年の開業時から、循環器科医が中心となって透析医療に取り組み、夜間透析、送迎サービスなどをいち早く導入。循環器と腎臓・透析を得意とする医師が集まった循環器・腎臓内科を標榜し、心腎連関に焦点を当てた腎臓病医療を展開している。2020年に新築移転した現在の病院は広く快適で大きな駐車場も完備。2階全体を透析フロアとし、広々した空間に48床の外来透析室と22床の入院透析室が並ぶ。3つの病棟(各49床)はすべて一般障害者病棟で、HD、PDの入院透析、重症患者の透析にも対応している。充実した設備を擁する透析施設として地域でも頼られる存在である。

1. 病院の概要 循環器・腎臓の慢性疾患、障害者医療の専門施設
快適な空間で効率よく診療

土田 哲人 院長

土田 哲人 院長

1971年に開設された十勝恵愛会病院をルーツとし、1981年12月、循環器科及び呼吸器科の医師の有志が集い、既存の病院を買い取って医療法人恵愛会南一条病院を設立した。循環器科は透析と心血管インターベンション治療を、呼吸器科は肺がんの治療を得意とし、これらの専門施設として知られるようになった。

法人の理念、「専門性と質の高い医療を通じ、地域の発展に寄与する」に則り、専門分野をさらに追求すべく、肺がん専門施設としての札幌南三条病院、肺がん以外の慢性呼吸器疾患と循環器、腎臓の慢性疾患に特化した札幌南一条病院に棲み分けを図ったのが2004年。札幌南一条病院は障害者医療にも力を入れており、「これらの分野では、札幌市中央区の中心的存在であると自負しています」と、土田哲人院長が言う。

札幌市中央区には、脳神経外科、心臓血管外科などの専門施設、札幌医科大学附属病院、北海道大学病院、市立札幌病院、NTT札幌病院をはじめとした総合病院が数多く存在する。土田院長は、「それぞれの医療機関が力を発揮しながら協力し合い、中央区を1つの枠と考えて医療を展開しています」と、同区の医療の特徴を語る。

現在の札幌南一条病院は、2020年7月に新築移転した新病院である。「旧病院は築50年以上経過して老朽化が進み、夏暑く冬寒く、雨漏りも悩みのタネでした。しかも9階建ての縦長の造りで効率が悪く、受付と外来のフロアが分かれていて、患者さんも職員も移動に苦労していました」と土田院長。

これに対し新病院は、地下1階、地上7階建ての横に広い建築で、受付、検査部門、外来診察室、処置室などを1階に集約。4〜6階が一般障害者病棟(1フロア49床)となっている。正面玄関前には35台収容の駐車場も完備し、利便性は抜群だ。また、7階に設けた広々したテラスは眺めがよく、患者や職員の憩いの場であり、野菜や花を育てながら園芸療法も行っている。

オール電化をはじめ建物全体に環境配慮がなされているのも大きな特徴だ。高性能省エネ建材や高性能省エネ設備機器を導入することにより建築物における一次エネルギー消費量の削減を目指す、「環境省ネット・ゼロ・エネルギー・ビル(ZEB)実証事業」に2018年度に北海道内で唯一採択されている。

新病院の内部は上品なカラーと木材の組み合わせにより温もりを感じる空間となっている。空調で管理された1年中快適な環境の中、患者は動線をスムーズに移動できる。駐車場が広くなったことで、車で通院している人たちにも大変喜ばれている。

2. 腎疾患治療 関連部門全体で腎疾患を多面的にサポート
心腎連関に焦点を当てた包括的治療を提供

札幌南一条病院では「腎臓病センター」をコンセプトに、循環器・腎臓内科、心大血管リハビリテーション、透析部門などが力を合わせ腎疾患の治療にあたっている。「保存期腎不全の管理から、腎代替療法の選択支援、各種人工透析、腎移植の移植希望登録手続きや、他院で移植を受けた患者さんのフォローまで、腎疾患をトータルにサポートしています」と青山眞也副院長が紹介する。

近年、特に力を入れているのが、心臓病と腎臓病の合併、いわゆる心腎連関に焦点を当てた包括的な治療だ。土田院長は、「循環器・腎臓内科が中心となり、生活習慣病や心不全、虚血性心疾患、腎疾患、透析まで含めて、心臓と腎臓、双方の臓器に有益な影響をもたらす薬剤の選択や治療法のバランスをとっています。命を救うためであれば、結果的に一方の臓器の機能を一時的に犠牲にせざるを得ない場合もありますが、慢性期においては、長期の予後を考えることが重要です」と解説。さらに心腎連関に糖尿病を加えた心腎代謝連関にも注力しており、「食事、運動、定期的な健康チェック、治療法の選択までトータルに、適切なアプローチをとっています」と言う。

透析患者については、「適切な透析管理が行われなければ急速に動脈硬化が進行します。これも心腎連関の1つ」とし、「水分管理、血圧コントロール、リンやカルシウムのバランス維持、続発性副甲状腺機能亢進症の治療、副甲状腺ホルモンのコントロールにも努めています。透析条件の適切な設定、薬物治療だけでなく、運動療法や食事療法にもしっかり取り組んでいくのが当院の方針です」と語る。

3. 透析室 外来透析と入院透析をワンフロアに集約
広々した開放的な空間でゆったり治療

札幌南一条病院では、2階ワンフロア全体が広々した透析フロアとして活用され、外来透析室(298㎡)と入院透析室(229㎡)が並んでいる。透析ベッド数は前者が48床、後者が22床(うち2床は陰圧の個室)、マックスで210人の透析患者の受け入れが可能だ。

ここでは血液透析(HD)、腹膜透析(PD)、各種血液浄化療法に対応している。透析装置は旧病院時代から透析支援システムで集中管理し、安全性と効率性を両立している。ほかに、人工呼吸器を使用している人など重症透析患者のための透析ベッドが4階病棟、5階病棟に各2床、計4床ある。

外来透析室に隣接して、患者が自由に使えるラウンジがあり、一角には盲導犬専用の待合スペースも確保されている。盲導犬も含めた補助犬同伴の受け入れは、「身体障害者補助犬法」によって医療機関にも義務づけられているが、実際には受け入れ体制が不十分な施設も多いのが現実だ。「糖尿病性腎症の方など、病状が進行して目が不自由になられた患者さんは少なからずおられるはずです。そんな方でも不安なく来院していただけるように、専用スペースをつくりました」と土田院長。現在は盲導犬同伴の透析患者が1名、同院を利用している。看護部の福島亮科長(透析室看護師長)は、「愛玩犬ではないことはわかっているのですが、盲導犬がここにいる日は、私たちもなんとなく癒されます」と笑顔を見せる。

「男性更衣室にはシャワーブースがあり、特に夜間透析の患者さんに喜ばれています。トイレは車椅子でも楽に入れる広さがあり、手すりや安全バーを完備しています。室内では無料Wi-Fiが利用できるのですが、これは毎年行っている『患者満足度調査』で要望をいただいたもので、新病院がオープンした後に設置されました」と、福島科長が透析フロアのさまざまな設備を案内する。

透析患者のためにこのように広いスペースと充実した設備を用意したことについて土田院長は、「新病院に移るにあたり、透析室もゼロからつくり直すことになりました。そこで、せっかくつくるなら最高のものを目指そうと、スタッフ皆で知恵を出し合った結果が現在の透析フロアです」と説明する。

4. 透析医療の特徴 多職種・多部門が連携して多様な患者をサポート
PD、夜間透析、旅行透析にも幅広く対応

スタッフ数は、外来透析室が看護師10名(うち2名はパート)、臨床工学技士が7名、入院透析室が看護師8名、臨床工学技士3名、いずれも専従でシフトを組んで業務にあたっている。ほかに、病棟所属の介護士が2名、透析フロア専属で働いている。

福島科長によると、スタッフは特定のゾーンや患者を受け持つのではなく、全員で全患者をみているという。すべての透析ベッドにアルファベットと数字からなる番号が振られ、札幌市内でもきわめて早期に導入し旧病院時代から活用している透析支援システムで集中管理しているため、スタッフは穿刺やケアに集中できる。穿刺も含めて業務のほとんどを看護師と臨床工学技士が協働で行っている。また、介護士は、患者の体位変換、おむつ交換、資材の準備・片付けなどを担当している。

医師は循環器・腎臓内科の医師7名と、消化器内科の医師1名が透析患者の診察などに携わっている。「消化器内科医がいることで、たとえば貧血や下血などが見られた際に迅速に診断、治療ができますし、呼吸器症状があれば、呼吸器内科医に気軽に相談できます。これは当院の強みだと思います。さらに、旭川医科大学名誉教授の菊池健次郎先生と、札幌医科大学名誉教授の三浦哲嗣先生に顧問として診療の支援をいただいています。両先生には常に相談に乗っていただけますし、私たちの目の届かないところまでチェックしていただけるので非常に助かっています」と青山副院長が充実した人員体制で質の高い透析医療を目指す様子を語る。

透析に携わるスタッフ間、さらには他部門のスタッフも含めた院内連携は円滑に進んでおり、たとえばシャントの異常音や脱血の悪さなどに看護師や臨床工学技士が気づいたら、エコー検査に長けたスタッフがポータブルエコーで速やかに検査を行い、狭窄が疑われればすぐに医師に伝え、院内の血管造影室で循環器科医がPTA(経皮的血管形成術)を実施する。また、皮膚温の低下などPAD(末梢動脈疾患)の兆候をスタッフがキャッチしたら、直接、検査室に超音波検査のオーダーを入れるなど、早期発見・早期治療につなげる仕組みを構築している。褥瘡予防にも力を入れており、皮膚・排泄ケア認定看護師の協力を得ながらエアマットの活用なども積極的に進めている。

透析スケジュールは、月・水・金が午前(8:15〜)、午後(13:15〜)、夜間(17:00〜23:00)の3部制、火・木・土が午前のみの1部制。透析時間は4時間が基本。夜間透析は就労している人限定で、20年以上前から実施しており、現在は21名が利用している。終業後に職場から急ぎ車で駆けつける患者もいる。

透析患者の数は、外来透析が125〜130人、入院透析が55〜60人で推移している。外来透析患者には自力での通院が困難な患者も多く、約70人は同院の送迎サービスを利用している。送迎サービスも札幌市内で先駆的に開始し、現在は車椅子対応の送迎車3台で3ルートを回っている。「運転手はヘルパーの資格を持っていますし、ルートごとに担当者が決まっているので、患者さんも安心して利用されています」と土田院長が言う。

なお、同院で透析導入となる患者は年間5人程度だが、他院で導入となった患者の維持透析を担うケースも多い。

また、以前から旅行透析にも取り組んでいて、新型コロナウイルス感染症の流行前には年間50〜60件を受け入れていた。コロナ禍では中止していた旅行透析の受付を2023年7月に再開したところ、1カ月半で14件の申し込みがあったことから、年間の受け入れ件数はコロナ前を上回ることが予想されている。

青山副院長は、「札幌は人気の観光地である北海道の中心ですから、旅行透析の希望者は海外の方も含めて多いです。1回だけの方もいれば、2週間程度滞在し、その間、当院で透析を受けられるケースもあります。ご希望の日にベッドが空いているかぎり受け入れるようにしています」と話す。同じ日に患者が集中してしまい断らざるを得ないケースもあるというが、近隣に旅行透析に対応している施設は少なく、受け入れ体制整備は地域全体の課題といえる。

PDも実施しているが、近年は、合併症が深刻なためにPDを選択できない状態の患者や、腹膜劣化などの理由からHDに移行する患者が増加したことから、PDの患者は減少傾向にある。現在はPD単独の患者が5名、PD+HD併用療法の患者が2名。これらの患者には毎月の診察に加えて、年に1回の腹膜機能検査と年に2回の透析効率測定を受けてもらい、安全に治療継続を図っている。また、病棟でPDを実施することもできるため、入院治療が必要と診断されたPDの患者が他院から紹介されてくることもある。

5. 合併症対策 日々のチェックと定期的検査でPADや骨折を予防
腎臓リハビリテーションも本格化

合併症対策にも力を入れている。たとえばPADについては、皮膚温測定を毎月、また、ABPI (足関節上腕血圧比)測定を半年ごとに行うなど定量的な評価で状態を把握している。また、前述したようにスタッフが透析中に患者の皮膚を見たり触れたり、聞き取りを行ったりすることで、異変に気づいた段階で速やかに検査につないでいる。青山副院長は、「スタッフの日頃の観察により、検査では捉えきれなかった異常が見つかることもありますので、患者さんをすくい上げるという意味で、日々のフットチェックは非常に大事だと感じています」とスタッフの目の重要性を語る。

骨折予防の観点からは、カルシウム、リン、インタクトPTH(副甲状腺ホルモン)などの管理に加え、骨密度測定を年に2回実施している。このほか胸部CT、腹部CT、頸部エコーなども活用して血管の異常の早期発見・治療に努めている。

2022年からは、以前、トライアルで実施したことのある腎臓リハビリテーションを本格的に開始し、透析中にエルゴメーターやゴムバンドを用いたトレーニングを行っている。「心肺機能と筋力を維持することで転倒・骨折予防につなげるのが目的です。すでに6分間歩行テストの距離が伸びるなど成果も出ています。今後はCPX(心肺運動負荷試験)も組み合わせるなど、より積極的にやっていきたい」と青山副院長。「4時間、ベッドに横になっているだけでなく、手足だけでも動かせることがストレス解消にもなっているようです」と、メンタル面での効果も感じているそうだ。福島科長によれば、腎臓リハビリを体験した患者の多くから、「帰宅後の体が軽い」「足がつらなくなった」「もっと早くやればよかった」などポジティブな感想が寄せられている。

腎臓リハビリを開始するにあたっては、最初の数回はリハビリスタッフが関わり、心電図モニターやパルスオキシメーターなどを装着した状態で運動する。これによって問題がないことが確認できたら、看護師や臨床工学技士にバトンタッチし、透析開始時から20〜30分程度運動してもらう。独歩が可能な患者から声掛けし、順次、対象患者を広げているところだ。

6. 今後の課題・展望 充実した設備、機能でニーズに応える
災害時の透析医療の拠点としても力を発揮したい

札幌南一条病院は開業時から各種透析医療を行い、夜間透析、送迎サービス、盲導犬の受け入れなどさまざまな取り組みを札幌市内でも先駆的に実施してきた。障害者医療を得意とし、病棟も持つ透析医療機関は現在も稀だ。また、都市部にありながら広い駐車場を完備しているのも特徴的である。「今後はこの強みをもっとアピールし、目の不自由な透析患者さん、合併症のある透析患者さん、入院が必要な透析患者さんなどに安心してご利用いただけたらと思います」と土田院長は言う。

もう1つ、地域における大事な使命と考えているのが、災害時透析の拠点となることだ。2018年の北海道胆振東部地震の際には、中央区は比較的早くライフラインが復旧したこともあり、他施設の患者の透析依頼が殺到。そのときは1回3時間で24時間稼働して依頼に応えた。2011年の東日本大震災のときも同様だった。これらは旧病院時代のことで、現在は当時以上に効率的な管理が可能で、より快適な透析環境を提供できる。「一度にたくさんの透析患者さんが来られても、入院が必要な透析患者さんでも、当院なら受け入れが可能です」と土田院長は力強く語る。今後はこうした設備と機能を、地域のためにも活かしていく考えだ。

KKC-2023-00999-1

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