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茨城県厚生連 JAとりで総合医療センター
[パーキンソン病 med.front]

2022年11月15日公開/2022年11月作成

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病院外観
  • ●病院長:冨滿弘之先生
  • ●開設:1976年
  • ●所在地:茨城県取手市本郷2-1-1

「とりでPDメソッド」でエビデンスを創出し、
地域に開かれたリハビリの提供を目指す

JAとりで総合医療センターの脳神経内科は、パーキンソン病治療においてQOLの向上を重視してきた。こうした診療の一環として約10年前からリハビリテーション部と緊密に連携し、リハビリにも積極的に取り組んでいる。エビデンスの創出も視野に入れたオリジナルプログラムを開発し、2022年5月から新システムのもと、地域に開かれたリハビリをスタートさせている。

1. 地域における役割 充実した専門医体制で
神経系疾患に幅広く対応

冨滿 弘之 病院長

冨滿 弘之 病院長

JAとりで総合医療センターは、JA厚生連を母体とし、1976年に旧取手協同病院と旧龍ケ崎協同病院が合併し、現在地に開設された。以来、地域の基幹病院として発展を続け、現在では茨城県南部だけでなく千葉県北西部もカバーし、人口53万人の医療圏の健康と生命を守っている。

「414床を有する当院は、この医療圏において最大規模の医療機関となるため、"最後の砦"として高度急性期医療の提供に努めてきました。一方で、回復期リハビリテーション病棟や訪問看護ステーションを併設し、退院後も安心して生活できるように医療的支援も行っています。さらに地域医療支援病院の認可も受け、地域の診療所や福祉施設を後方支援する役割も担っています」と冨滿弘之病院長は説明する。

高度急性期医療では診療ニーズの高い救急医療とがん医療を中心に展開。冨滿病院長が診療科部長を務める脳神経内科においても、2005年に「脳卒中センター(Stroke Unit)」を開設し、専門医・看護師・リハビリセラピストによるチームで超急性期から一貫した脳卒中診療に取り組んでおり、2021年度は一過性脳虚血発作を含めると、約300人の脳卒中患者に対応した。

「当院が救急医療に力を入れていることもあり、当科において最も患者数が多いのは脳卒中ですが、さまざまな神経系疾患に幅広く対応できる診療体制を整備しています」と、脳神経内科の石原正一郎部長は話す。この診療体制を支えているのが脳神経内科医の多さだ。茨城県では脳神経内科医1~2名体制が一般的といわれる中、同科では東京医科歯科大学脳神経内科医局からの派遣により6名の脳神経内科医を揃える。県内でこの人数を確保する医療機関は同病院のほか2カ所(筑波大学附属病院、土浦協同病院)しかないという。

2. 診療の方針 QOLを向上する最善策を
患者や家族と一緒に考える

石原 正一郎 脳神経内科部長

石原 正一郎 脳神経内科部長

同科におけるパーキンソン病の患者数は診療科全体からみると決して多くはないが、それでも高齢化に伴い、後期高齢者を中心に患者が増えている。患者本人や家族が異変を感じて受診するケースが主流だが、他科やかかりつけ医からの紹介も少なくない。

「パーキンソン病の場合は、問診、身体所見、画像診断、治療薬への反応など、さまざまな診療情報を総合的に評価するスキルが必要で、正しく診断することが当科に与えられた重要な役割です」と石原部長は話す。そして診断後は、外来治療を中心に日常的なサポートを行う。同科には現在100~150人のパーキンソン病患者が定期的に通院している。

「私たちがパーキンソン病の治療で重視しているのはQOLの向上です。当科では脳深部刺激療法(DBS)ができないなど治療上の制約はあるものの、対応可能な範囲でその人のQOLを向上するために最もよい治療法を患者や家族と一緒に考えて選定し、実施することにスタッフ全員が注力しています」と冨滿病院長は診療方針を示す。

例えば、同科では茨城県で最初にレボドパカルビドパ経胃瘻空腸投与を行っているが、これも病状が進行して1日6回以上の投薬になると患者のQOLが著しく低下するため、この状態を改善する目的で実施に踏み切った。

さらに、同様の観点から積極的に取り組んできたのがリハビリテーションだ。冨滿病院長が同病院に赴任してきた2012年には、すでにリハビリテーション部では単発ながらパーキンソン病の短期集中リハビリテーションに取り組んでおり、得られた効果について学会発表を行っていた。「短期集中リハビリを行った3例のうち2例は内服薬の減量につながり、リハビリを受ける前より動きが改善していたという報告を聞いてパーキンソン病に対する運動療法の大きな可能性を感じました」と冨滿病院長は当時を振り返る。

冨滿病院長がこのように感じたのは、以前からリハビリや運動療法に関心があったからだ。「前任の大学病院で診療していた患者さんの中に毎朝、飼っている小鳥に向かって大声で『おはよう』と呼びかけるのを日課にしていた患者さんがいて、その人には小声症などの症状がみられなかったのです。また、5~6年ほど症状が進行していない人に日常生活を聞いてみると毎日4キロ走っていることがわかりました。一つひとつの臨床経験から運動療法を継続していると進行しにくいという手応えはすでに感じていました」

こうして冨滿病院長のリーダーシップのもと、2013年に脳神経内科とリハビリテーション部が多職種チームを組んでパーキンソン病のリハビリに取り組むようになり、以来10年近くの歳月をかけて実績を積み重ねてきた。

3. リハビリの特徴 パーキンソン病に特化した
外来プログラムを提供

高度急性期病院でリハビリ用の一般病床を確保するのは難しい面があり、パーキンソン病のリハビリは主に外来で行われてきた。2017年に『パーキンソン病診療ガイドライン2018』でも、その効果が認められている「LSVT®BIG」(以下BIG)を、2021年には「LSTV®LOUD」(以下LOUD)と呼ばれるプログラムを導入し、BIGは延べ36人の患者に、LOUDは延べ4人の患者に提供してきた(2022年9月現在/「LSVT®BIG」と「LSTV®LOUD」については別項の概要を参照)。

「BIGとLOUDは、いずれも米国のRamigらが考案したパーキンソン病に特化した訓練法です。最初に開発されたのは声の大きさに対する発声・発話訓練プログラムのLOUDで、LOUDから発展したのが動作の大きさに対する運動療法プログラムのBIGです」と解説するのは理学療法士の箱守正樹リハビリ主任だ。

これらのプログラムは、米国のLSVT Globalが主催する認定講習会に参加して、認定を取得したリハビリセラピスト(理学療法士/作業療法士/言語聴覚士)のみが実施できるもので、箱守主任は国内に780名余り(2020年)いるBIG認定療法士の一人だ。同リハビリテーション部には、箱守主任を含めBIG認定療法士が2人、LOUD認定療法士が1人在籍しており、この3人でパーキンソン病の外来リハビリプログラムを担当している。

「BIGもLOUDも週4回×4週間の全16回のプログラムです。外来で認定療法士の指導のもと1時間のリハビリを行った後、自宅に戻ってからも効果を持続させるために自主練習や認定療法士が個別に作成した宿題に取り組んでもらいます」と箱守主任は訓練内容について説明する。

箱守主任たちがBIGを終了した33名のリハビリ効果を検証したところ、日常生活上での動作や運動機能が改善するだけでなく、QOLの向上が3カ月持続することが示されたという。また、薬物調整と併用し、定期的に実施することで運動機能の悪化を一時的に軽減できる可能性も示唆された。

一方、LOUDは導入から日が浅いため、BIGのような効果検証は行っていないが、LOUD認定療法士の岡﨑颯士言語聴覚士によると、訓練を受けた患者には(1)声が大きくなった、(2)口が大きく動くようになり咀嚼がよくなった、(3)表情がよくなったなどの改善がみられたという。「患者さんの声が小さくて聞き取りにくいと困っていたご家族もプログラム終了後は悩みが解消したと喜ばれています」(岡﨑ST)。

外来プログラムに対する患者・家族の満足度は高く、毎年1回継続的に受けている人もいる。一度受けると効果を実感できるので、このリハビリを希望する人は大勢いるものの、認定療法士以外はBIGとLOUDの訓練に従事できないため、受け入れ患者数に制限がかかっている。また、遠方に住んでいる人は通院できず、容易に受けられないのも難点だ。

認定療法士たちはプログラム終了後も自宅で続けてもらうように指導しているが、半分はドロップアウトしてしまう。「実施しないと元の状態に戻るため、我々の提供体制を含め、いかに継続させるかということが次の大きな課題になっています」と豊田和典リハビリテーション技師部長は話す。

これらの課題を克服するべく、冨滿病院長が率いる多職種チームでは、これまでの経験と実績を反映させた新リハビリシステム「とりでPDメソッド」を開発し、2022年5月末から稼働し始めた。

4. 展望と課題 開発したオリジナルプログラムの
効果検証と地域への普及を目指す

「とりでPDメソッド」は「短期集中リハビリテーション入院プログラム」と「外来リハビリテーションプログラム」の2本柱で構成されている(図1)。この新しいメソッドには、BIGとLOUDのほかにリハビリセラピストなら誰でも指導できるように、これまでの経験と知見をもとに作成したオリジナルプログラムを加えた。

これらのプログラムは、いずれも個々の患者の主訴に着目し、その改善や回復を図ることを目的としているのが大きな特徴だ。そのため、最初の面談では作業療法士を中心に日常生活でどのようなことに困っているのかを丁寧に聞き取り評価したうえで、その患者に適切なリハビリを開始する。

また、入院プログラムでは脳神経内科医、薬剤師、リハビリセラピスト、看護師らによる講義の時間が設けられている。この狙いについて石原部長は次のように話す。「集中リハビリとはいえ2週間で運動効果を十分に引き出すのは難しいため、私たちはプログラム終了後も運動が継続できるように意識づけすることも目標の一つにしています。それには患者さん自身がパーキンソン病の病態や治療、リハビリ、ケアのことをよく知り、運動療法の重要性と必要性を理解することが欠かせません」(図2、図3)。

一方、家族に働きかけることも重視している。運動療法を効果的に行うためには、患者が動けることを家族も理解することが大切だからだ。「患者さんは自分が動けることがわかると明るい表情に変わり、行動も積極的になります。それは家族も同じです。この新リハビリシステムには患者さんや家族の気持ちと行動を押し上げていくような役割も持たせたい」と冨滿病院長は抱負を語る。

さらに入院・外来ともにオリジナルプログラムの効果検証を行い、エビデンスを創出していくことを目指している。BIGやLOUDの効果と比較するために外来プログラムの実施回数を、あえてBIGやLOUDと同数に揃えたという。「臨床試験によってオリジナルプログラムの効果が認められれば地域に展開し、リハビリの恩恵が受けられる患者さんをさらに増やすことに貢献したい」とチームメンバーは意気込む。

「地域医療構想が制度化される中、それぞれの医療機関がそれぞれの役割を持ち、緊密に連携する時代になってきました。それはパーキンソン病においても例外ではありません。当院はリハビリ機能が充実しているため、その強みを存分に生かし、茨城県南部さらには千葉県北西部の他院かかりつけの患者にも積極的にリハビリを提供していきたいと考えています」と冨滿病院長は近未来を見据える。患者のQOL向上を目指してきたJAとりで総合医療センターのパーキンソン病診療は今、新たなステージを迎えている。

KKC-2022-00901-2

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