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国家公務員共済組合連合会 虎の門病院
[希少疾病診療~未来への扉~]

2024年9月11日公開/2024年9月作成

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病院外観
  • ●病院長:門脇 孝 先生
  • ●開設:1958年
  • ●所在地:東京都港区虎ノ門2-2-2

「多科連携」の強みを生かした
総合的な内分泌疾患治療を展開

2004年に設立された虎の門病院 内分泌センターでは、内分泌内科、小児科、間脳下垂体外科、耳鼻咽喉科、泌尿器科、消化器外科、婦人科などの診療科が連携して総合的な治療を展開し、この分野をリードしている。なかでも間脳下垂体手術は、他施設より年間の手術件数が1桁多く、全国から患者が紹介されてくる。さらに、近年は希少疾患の紹介患者も増えている。

1. 内分泌診療の特徴 外科医の育成にも熱心に取り組み
総合的な内分泌診療体制を構築

竹内 靖博 副院長/内分泌センター長

竹内 靖博 
副院長/内分泌センター長

1958年に国家公務員共済組合連合会の中核病院として開院した虎の門病院は、開院当初から国家公務員以外の一般患者にも広く開かれ、日本を代表する総合病院の一つとして発展を遂げている。2019年5月1日には、地下3階、地上19階の新病院がオープン。患者の多様なニーズに応え、高度急性期医療を担う医療機関として、より充実した診療機能と設備を備えている。

そして、同病院の最大の特徴は、各領域のスペシャリストが揃っていることだ。内分泌代謝科においても、創成期から内分泌部門と糖尿病・代謝部門が、それぞれ独立した形でより専門性の高い診療を行ってきた。内分泌代謝科内分泌部門(以下、内分泌部門)では、小児内分泌を専門とする小児科医と緊密に連携し、内分泌疾患のシームレスな診療を展開。その発展の過程において間脳下垂体の手術をする脳神経外科医、甲状腺・副甲状腺の手術をする外科医などの育成にも積極的に貢献し、現在では総合的な内分泌診療に取り組む国内有数の施設として知られている。

「当院は、医療人の育成とともに第二代病院長である冲中重雄先生が設立された冲中記念成人病研究所と密接に連携し、医学研究にも熱心に取り組んできました。大学病院と同等の機能(診療・教育・研究)を有する中、これらの3機能のうち、診療に最も重点を置いたことから診療科・部門の連携なども有機的に行われ、質の高い医療を提供できているのも当院の大きな特徴の一つです。それは患者さんにとって大きな安心感につながっていると思います」と内分泌センター長を務める竹内靖博副院長は語る。

竹内副院長が同病院に赴任してきた2004年、この多科連携の特徴をさらに生かすために、内分泌部門を中心に関連する診療科を統合した「内分泌センター」が設立された。

2. 内分泌センターの活動 間脳下垂体手術では全国をリード
地域の医療機関との連携も推進

多科連携を特徴とする内分泌センターでは、週1回、定期的に合同カンファレンスを開催している。「内分泌部門、小児科、間脳下垂体外科の3診療科は必ず参加し、必要に応じて耳鼻咽喉科(甲状腺・副甲状腺の手術を担当)、泌尿器科(副腎の手術を担当)、消化器外科肝胆膵グループ(膵臓の手術を担当)などが参加します」(竹内副院長)

また、診断・検査の場面では放射線科との連携も緊密に行われている。例えば、副腎や膵臓に局在する内分泌疾患の場合は、病巣の場所の特定が非常に難しく、血管カテーテルを用いた詳細な検査が有効だ。そのため、放射線科にも積極的に関与してもらっているという。

「間脳下垂体手術においては全国から患者さんが紹介されてくるため、他施設よりも年間の手術件数が1桁多く、当センターの特徴としては間脳下垂体疾患の症例数が突出していることが挙げられます」と竹内副院長が言う通り、全国でも手術件数が100件に満たない施設がほとんどだが、同病院は2021年175件、2022年179件、2023年170件と常に三桁で推移している。その理由として、そもそも紹介元の病院で"手術ができない"と言われて紹介されてくる患者が一定数いる。ほかにも、間脳下垂体疾患の原因となる腫瘍の大半は良性のため、QOLとのバランスを考慮した結果、手術で腫瘍が取りきれない場合がある。腫瘍の残存は、内分泌学的なホルモン過剰症の治療に大きく影響するため、再手術を希望して同病院に紹介されてくる患者も少なくない。このような背景があることから「各地の基幹病院となる大学病院や総合病院とも連携し、難治例の治療も積極的に受け入れています」と竹内副院長は説明する。

さらに内分泌疾患の特徴として「手術で原因となる腫瘍を切除すれば治療が完了」というわけにはいかず、手術後もホルモン補充療法などの継続治療が必要になる。これまでは内分泌内科医の数が少ないこともあり、この分野の病診連携は進んでいなかったが、近年は"2人主治医制"の診療体制を推進している。「当センターで治療方針を決め、その方針に従って地域の診療所で継続治療を行っていただき、何か問題があればすぐに相談を受けるという形で取り組んでいます」(竹内副院長)。

3. 希少疾患への取り組み 生涯にわたる治療継続のために
多科連携が欠かせない

近年、骨代謝領域を専門とする竹内先生のもとには、骨の難病・希少疾患の患者が紹介されてくることも増えてきた。「この要因の一つには、学会等の啓発活動によって希少疾患に対する認知度が高まってきたことがあります」と竹内副院長は状況を分析する。

「希少疾患には先天性のものも少なくなく、その場合は小児科が中心となって治療を担ってきました。一方で、生命予後に大きく影響する疾患でない場合は、成人すると内科や整形外科に引き継がれず、治療が中断されることが多かったのです。ところが最近になって成人後の問題、特に中高年期における骨や筋肉等の障害が認識されるようになり、生涯にわたっての継続治療の必要性が見直されてきています」(竹内副院長)。

そして、希少疾患の治療や日常生活のフォローに関しても多科連携が欠かせないという。「例えば、希少疾患が腫瘍性の場合、原因となる腫瘍は骨や筋肉、皮下など、さまざまな部位に発生するため、治療にあたっては整形外科、皮膚科、消化器外科との積極的な連携を推進しているところです。また、先天性の希少疾患の場合は、歯や顎の骨も脆弱なので、歯科口腔外科との連携が必要になることもあります。インプラントをはじめ、特殊な歯科治療を実施する際には、患者さんのかかりつけ歯科医または当院の歯科口腔外科に相談したうえで、一般歯科では治療できないと判断されたときは、この疾患に対応した経験がある歯科口腔外科と連携しています」(竹内副院長)。

4. 今後の展望 医師の研修を積極的に受け入れ、
各地で診断・治療できる体制を

内分泌疾患や希少疾患に分類される疾病を、日々の診療の中で確実に拾い上げるためには、内科医がこれらの疾患について一度でも経験していることが重要だと竹内副院長は指摘する。

「例えば、骨や筋肉に症状が出た患者を診て整形外科医が"何かおかしい"と思ったときに、多くの場合、内科医に相談するわけですが、その内科医に希少疾患の知識と経験がなければ拾い上げることは難しいものです。"百聞は一見に如かず"のことわざ通り、実際の経験は何物にも代え難い。知識の定着という観点からいえば、教科書や文献を読むより自分が担当医として診療した患者さんが一人いることのほうがはるかに効果的なのです」(竹内副院長)。

そのため、内分泌センターでは同病院が整備する『受託研修医制度』を活用し、各地から若手医師(卒後10年目まで)を積極的に受け入れている。「当センターでは、半年間の研修でこの分野の希少疾患は一通り経験できます。ただし、研修医の事情を考慮し、研修期間は3カ月から認めています」(竹内副院長)。研修医の大半は大学病院に所属する医師で、なかには数回にわたり、若手医師を研修に派遣してくる大学病院もある。

「医師教育は地道な活動であり、一定の成果が出るまでには相当の時間がかかります。骨の難病・希少疾患の中には血液中の物質を測定することでスクリーニングできる体制が整ってきたものもあり、近い将来、日常診療で測定した血液データを活用したAI診断ツールが開発されることも期待しています」(竹内副院長)。

全国有数の内分泌疾患専門施設である虎の門病院 内分泌センターは「連携」をキーワードに、さまざまな診療科とともに、そして医師教育を含め施設を越えた取り組みを通して、希少疾患治療の発展に貢献している。

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希少疾病診療~未来への扉~

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