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岡山済生会総合病院
岡山済生会外来センター病院
[透析施設最前線]

2022年12月27日公開/2022年12月作成

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2つの病院が役割分担しながら一体的に活動
CKD治療、PD推進、内科医による手術が3本柱

急性期医療を担う地域中核病院として主に救急医療と入院医療を担う岡山済生会総合病院と、外来診療および在宅医療支援で力を発揮する岡山済生会外来センター病院。腎不全医療においては、透析導入のための入院、シャント造設やPTAなどは前者で、保存期腎不全の診療・管理、外来透析は後者でというように、2つの病院がそれぞれの役割を果たしながら一体的に活動している。腹膜透析(PD)を推進する医療機関としても知られ、継続的にサポートしている約200人の透析患者の半数弱はPD患者だ。2010年には全国的にもまれな「腎臓病・糖尿病総合医療センター」を総合病院内に設立。早期から糖尿病性腎症に着目し、その治療にも力を注いでいる。

1. 病院の概要 救急・入院医療を得意とする総合病院と
外来・在宅支援を主に担う外来センター病院

平松 信
岡山済生会外来センター病院
名誉院長/
岡山済生会総合病院 腎臓病・
糖尿病総合医療センター
センター長

平松 信 
岡山済生会外来センター病院 名誉院長/ 岡山済生会総合病院 腎臓病・糖尿病総合医療センター センター長

1931年創設の岡山済生会が1938年に開設した済生会岡山診療所がルーツ。1948年には済生会岡山病院になり、1957年に岡山済生会総合病院(以下、総合病院)に名称変更された。JR岡山駅の北方約1kmほどの場所に新築移転したのが2016年1月。このとき旧病院のあった場所(新病院と岡山駅との中間辺り)に外来機能を残すかたちで岡山済生会総合病院附属外来センターを開設し、さらに2018年9月、同センターに地域包括ケア病床80床を設置したことで、岡山済生会外来センター病院(以下、外来センター病院)が誕生した。

「岡山済生会の病院が狭い範囲に2つあるわけですが、総合病院は主に救急や入院に対応し、外来センター病院は主に外来診療や在宅医療支援を担うというように役割分担しています。それぞれ独立した病院ではありますが、両者は一体としてさまざまな医療に取り組んでいます」と、外来センター病院の平松信名誉院長が紹介する。

平松名誉院長は同院の初代院長であり、総合病院腎臓病・糖尿病総合医療センターのセンター長も務めている。また、PDの先駆者としてもその名を広く知られている。

2. 腎臓病・糖尿病総合医療センター 腎臓病と糖尿病にチーム医療でアプローチ
略称には「CKDをDefenseする」という隠れた意味も

総合病院では2010年4月に「腎臓病・糖尿病総合医療センター」を設立し、腎臓病と糖尿病を総合的に診察する体制を整えた。透析導入に至る最大の理由である糖尿病性腎症の問題をいち早く捉えての対応だ。診療報酬としての糖尿病透析予防指導管理料が新設されたのが2012年度であることから、糖尿病性腎症に対する同院の取り組みが先進的なことがわかる。

同センターのベースとなったのは、従来から今日に至るまで、岡山県の中心的なセンターとして高い評価を受けている「腎臓病センター」(センター長:丸山啓輔診療部長)と「糖尿病センター」(センター長:中塔辰明診療部長)である。「これらの機能を合わせて、さらに良質な医療の提供、地域医療連携、信頼の向上を目指して腎臓病・糖尿病総合医療センターを設立し、私が総合医療センター長に就任しました」と、平松名誉院長が説明する。

実は腎臓病センターを発足させたのも、平松名誉院長の実績。「私が岡山済生会に赴任して6年目の1993年、高齢の透析患者さんが増えたことから、そうした患者さんたちをチーム医療で支えていこうと看護師たちとも相談してセンター化を実現させました。糖尿病センターができたのはこの5年後の1998年。以降はセンター化の波に乗って、当院にもほかの医療機関にも、たくさんのセンターができていきました」

腎臓病・糖尿病総合医療センターの設立を機に、同院では腎臓内科と糖尿病内科が隣り合ったブースで外来診療を行うようになった。これにより、腎臓病と糖尿病を併発している患者を診るときに、お互いに相談しながら、より良い医療を提供できるようになったという。

また、糖尿病性腎症は一般に、第2期までは尿所見も腎機能も正常に見えることから、糖尿病専門医から腎臓病専門医への紹介が第3期以降になりがちだが、情報交換をしながら並んで診療を行うことで、早期から糖尿病性腎症への介入が可能になった。一方で、糖尿病専門医による血糖値のコントロールも早くから開始できるようになるなど成果を上げている。

ところで、腎臓病・糖尿病総合医療センターの名称は、英文にすると「Center for Kidney and Diabetic Diseases」となる。略称は「CKDD」。「これにはCKD(慢性腎臓病)をDefense(防御)するという隠れた意味があります。CKDの代表的な疾患が糖尿病性腎症。そして、Diseasesには、腎臓病、糖尿病のほかにも糖尿病性腎症、糖尿病網膜症、糖尿病性神経障害など、糖尿病に起因するすべての病態が含まれています。腎臓病と糖尿病の総合的かつ集学的医療をチーム医療で実践するのが、CKDDの役割と考えています」と、同センターの明確な位置づけを平松名誉院長が語る。

CKDDが掲げる理念は、「腎臓病と糖尿病の生涯医療・全人的医療・チーム医療を実践し人と社会に貢献します」である。この理念に沿った行動方針(表参照)もしっかりと掲げられ、スタッフ間で共有されている。

3. 透析医療の特徴 HD患者90人、PD患者90人をサポート
療法選択支援から維持透析まで同じスタッフが対応

丸山 啓輔 診療部長/
腎臓病センター センター長

丸山 啓輔 診療部長/ 腎臓病センター センター長

2022年7月現在、外来センター病院に通院している透析患者は、血液透析(HD)、腹膜透析(PD)ともに90人。ほかに、総合病院でHD患者の入院に対応している。外来HD患者の多くは岡山市民だが、PD患者は郡部を含めてもう少し広い範囲から来ている。岡山県内のPD患者は総計約250人。そのうち4割弱が同院に集まっていることになる。

透析ベッド数は、総合病院が12床(うち2床は完全陰圧個室)で血液浄化療法室にあり、外来センター病院が37床(うち3床は完全陰圧個室)で腎臓病センター内の透析室に設置されている。どちらもそれぞれの病院の8階にあり、窓から市内を見渡せる。

「総合病院には、透析導入の患者さんや重い合併症の患者さんなどが入院されており、一般的なHDのほかにもさまざまな体外循環療法に対応しています。ここでは病棟担当薬剤師による薬の管理もしっかりなされています。一方、外来センター病院には透析室と並んで2つのCAPD診察室とフットケア指導室を備えています」と、透析医療に取り組む環境を、腎臓病センターのセンター長である丸山啓輔診療部長が紹介する。

総合病院に入院している腎不全患者の薬の管理、服薬指導を担当しているのは、監物寛紀薬剤師だ。「私がかかわるのは主に透析導入期で、導入目的で入院してこられた患者さんの持参薬を、検査値や添付文書と照らし合わせるなどして入念にチェックし、その薬が腎不全患者さんに使ってよい薬なのか、その患者さんの腎機能に合った量なのか、また、減量規定が守られているかなどを確認します。それと同時に残薬の量にも注力しており、バラツキがあれば剤形による飲みにくさなども含めて患者さんに事情をお聞きし、コンプライアンスの状況を把握するようにしています」と言う。

監物薬剤師によれば、持参薬に問題が見つかるのは、緊急入院した際に初めて腎機能の悪化が判明したケースなどが主。こうした場合には、監物薬剤師から主治医に直接、気づいた点を伝え、主治医の指示があれば速やかに代薬の提案などをする。

患者への服薬指導に関しても透析導入期を最も重視しており、処方内容に変更があった場合には、変更の理由や、起こりうる副作用、副作用が生じた際の対処法などについてじっくり説明するという。「便秘や吐き気など、検査値に現れない副作用もあるので、患者さんの訴えにもしっかり耳を傾けます」と監物薬剤師。他の職種との情報共有は、病棟カンファレンスや個別の相談によって行っている。

外来透析を行っている腎臓病センターにはHDとPDの設備が集約されているため、センター所属の看護師は、必然的に、随時両方の患者に対応することになる。また、腎臓内科の外来診療における患者サポートや、腎臓病看護外来なども腎臓病センターの看護師が行っている。「保存期腎不全の管理からHD、PDも、すべて同じスタッフが担当するのは当院の特徴です。PDからHDに移行したり、併用療法を行う方も多いのですが、一貫して同じ顔ぶれで担当するので、患者さんには安心感があると思います」と、丸山診療部長が言う。

具体的な看護師の役割や体制については、透析看護認定看護師の資格を持つ大脇浩香主任が、次のように紹介する。

「腎臓病センター所属の看護師は15名で、看護外来で患者さんの生活ぶりや思いを聞き取ったり、診察に同席したり、療法選択をサポートしたりしています。導入後のケアや各種相談対応など、すべてをこの15名で行っています。私たちが大事にしているのは、患者さんが透析中心に生きるのではなく、それぞれの生活の中に透析がうまく組み込まれるように、あくまで生活が中心になるようにサポートすることです。制限ばかりでなく、できることに目を向け、その幅が広がるような支援を目指しています。そのためにも患者さんをよく観察し、折に触れて声かけをし、お話に耳を傾けます。こうしたプロセスを大事にすることで、結果的に患者さん一人ひとりの生き方を支えることができればと思っています」

なお、腎臓病センターでは、透析中の腎臓リハビリ、多職種がかかわる腎臓病教室、腎臓病料理教室、皮膚科医と連携したフットケア、近隣の循環器内科・心臓血管外科を有する施設との連携による循環器系の合併症対策、PD患者の在宅療養支援などにもチーム医療で取り組んでいる。

PD患者を初めて受け入れてもらう訪問看護ステーションや介護事業所などに、大脇主任ら看護師が出向いて、腎臓病やPDについての説明や指導を行うこともある。「PDは本来、患者さんの在宅生活を支える治療法です。その意味で、当院のような中核病院だけでなく、かかりつけ医や介護事業所なども対応できることが望ましいと思います。今後も啓発活動に力を入れたいと思います」と大脇主任は言う。

4. PDへの取り組み PD患者数は全国でもトップレベル
85歳以上の約5割がPDを選択

外来透析患者に占めるPDの比率が高いのは、平松名誉院長が1987年に赴任して以降、特に高齢者へのPD導入を積極的に進めてきたからにほかならない。

「私が赴任した当時、当院の外来透析ベッドは5床しかなく、多くの患者さんは透析導入後にほかの透析施設に移行し、当院に通っておられるのは合併症のある高齢の患者さんばかりでした。その方々の様子を見ていて、なんとかHDによる負担を減らせないかとPDを試してみたところ、思いのほかうまくいったのが始まりです」と平松名誉院長が振り返る。

その後、同院のPD患者は右肩上がりに増え続け、1990年代には透析導入患者の半数以上がPDという状況になり、2001年にはPD患者数が112人と日本一多くなった。現在の90人という数も、依然、全国トップレベルである。また、PD導入患者の年齢分布を見ると、高齢になればなるほどPDを選択する比率が高くなり、85歳以上では48.1%がPDを選択している(図1、2参照)。

同院でPDを受けた高齢患者は、81歳で導入し94歳で死亡、91歳で導入し97歳で死亡、90歳で導入し91歳で死亡など透析期間はさまざまだが、共通しているのは寿命を全うしていることだと平松名誉院長は言う。

「高齢の腎臓病患者さんには『透析をしてまで長生きしたくない』とおっしゃる方が多くいます。そんなとき私は、透析は長生きするための治療法ではなく、神様に与えられた寿命まで生きるための治療だとお話しします。中でもPDは、自宅や施設など生活の場で老衰で亡くなることができる、より自然な療法なのだと」

この話をよりわかりやすくするために名誉院長がよく使うのが、透析療法を船に見立てた以下のようなオリジナルの例え話だ。

「腎臓が弱ってきたら、ヨットのごとく風の力をかりて腎臓を助ける。これによって残された腎臓の力を生かすのがPDで、自然に生活しやすいし尿も残せる。対してHDは、透析装置というエンジンをフルに使うモーターボートで、自分の腎臓はあまり使わない。ギリギリ(ドライウエイト)まで体内の水分を抜く除水が必要なので体の負担も大きくなる。だから高齢者にはPDが合う。まずはヨットに乗ってみて、難しかったらモーターボートに乗り換えてみてはどうですか」

こうした丁寧な説明によりPDのメリットを患者や家族が十分理解できるからこそ、PDを選ぶ人が多いのかもしれない。

丸山診療部長によれば、同院でPD導入となった患者は、基本的に継続して定期的に同院に通院してもらって管理する。導入に際してはMSWが関与し、利用できる制度や訪問サービス事業所などにつなげているという。

導入の流れとしては、まずは看護外来での聞き取り・指導を、CKDステージ4~5の患者に対し繰り返し行い、タイミングを見て医師による説明・指導を実施。必要に応じて管理栄養士による栄養指導も実施する。

療法選択支援において心がけていることとして丸山診療部長は、「HD、PD、併用療法、腎臓移植など選択肢を提示し、それぞれの良い点、ご家族も含めて負担となる点などをしっかりお伝えします。そのうえで透析を見合わせることを選ぶ方もおられますが、十分に理解したうえでの選択であれば尊重します。とにかく後になって『知らなかったから選べなかった』と患者さんが後悔されることがないように、できるだけ支援をしたいと思っています」と話す。

同じく大脇主任も、「患者さんお一人おひとりの生き方として、適切な方法を選べるようにお手伝いしています。透析という言葉に、重大な病気の告知を受けるのに似た衝撃を受ける患者さんもおられますので、その気持ちを十分汲み取り、時間をかけて不安を和らげていくことも大切にしています」と話す。

5. オペ・PTA シャント手術・PTAを腎臓内科医が担当し
透析により適した状態を実現

丸山診療部長は、糖尿病性腎症を含めた保存期腎不全の治療、PDへの積極的取り組みと並ぶ、総合病院・外来センター病院の3つめの大きな特徴として、「腎臓内科医による手術」を挙げる。担当するのは、総合病院内科・腎臓病センター・IVRセンターに在籍する野中慶佑内科医長。丸山診療部長が「岡山県内の腎臓内科医でも指折りの存在」と、その技術に全幅の信頼を寄せる医師である。

野中医長は名古屋の病院で研鑽を積んだ後、「PDについてもっと勉強したい」と、平松名誉院長を慕って2016年に同院に赴任した。

「透析に関連する手術を何科の医師が行うかは、地域差があるようです。私が経験を積んだ名古屋周辺では腎臓内科医が行うのが通常でしたが、岡山では外科医が行うのが一般的です。そのためいったんはメスを置く覚悟をしたのですが、これまでの経験をアピールし、ご理解いただいて、こちらでも手術を担当できることになりました」と野中医長。シャント作成から少しずつやり始め、並行してPDのカテーテル留置術の研修を行い、そちらも担うようになった。

同院には現在、9名(研修医2名を含む)の腎臓内科医が勤務しているが、そのうち手術を担当するのは野中医長を含む3名。この3名による近年の手術件数は、シャント作成が年間70~80件、PDカテーテル留置術が年間40件程度。また、PTAについては放射線科医と腎臓内科医の共同で行う体制を確立し、年間150件前後をこなしている。

野中医長は、腎臓内科医が手術やPTAを行うことのメリットを、「患者さんとの信頼関係が一番」と言い、「保存期から継続的に診ていた医師、普段から透析室で顔を合わせている医師が行うのこともあって、安心していただけていると感じます」と語る。また、「素早い対応もメリット」とし、自らの都合で日程が組めることを挙げる。平松名誉院長も、「腎臓内科医は、術後にどのように透析を行うかをイメージして手術やPTAを行うので、術後がとてもスムーズです。その意味でも、直接透析に携わる医師が手術を行うメリットは大きいと思います」と評価する。

6. 今後の課題・展望 3本柱のさらなる強化と
ACPの実践を目指す

今後について丸山診療部長は、「当院の特徴である保存期腎不全治療、PDの推進、腎臓内科医による手術の3つの柱を一層強化していきたい」と語る。特にPDについてはこれまで以上に啓発に力を注ぎ、より適切な療法選択支援を実践していきたい考えだ。加えて透析ベッドを50床程度まで増やし、同時に人材を確保することで、さらに多くのHD患者を受け入れることも目指している。

ACP(Advance Care Planning)の実践も大きな課題だ。「患者さんがこれからの人生とどう向き合おうとされているのか、私たちがそれをどのように理解し、どう寄り添っていけばいいのか、難しいことですが、やっていかなければ」と丸山診療部長。この新しい取り組みも、培ったチームの力で進めていきたいという。

KKC-2022-01143-2

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