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医療法人さくら さくら記念病院
[透析施設最前線]

2023年1月12日公開/2023年1月作成

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病院外観
  • ●理事長・院長:黒澤 範夫 先生
  • ●開設:1992年
  • ●所在地:埼玉県富士見市水谷東1-28-1

全室個室の透析室で「24時間いつでも透析」
地域密着型の腎臓病専門病院

2022年春、創立30周年を迎えた医療法人さくら さくら記念病院は、外来透析ベッド64床、入院透析ベッド26床を擁する、埼玉県南西部の代表的な透析施設である。近年は特に、「24時間いつでも透析」をスローガンに、夜間透析、深夜透析に力を注ぎ、仕事を持つ比較的若い透析患者のニーズに応えている。また、3つのサテライトクリニックと協力しながら、保存期CKD診療にも積極的に取り組んでいる。

1. 病院の概要 「慈悲の心」「人々に快をもたらすこと」を重視し
地域のニーズに応え続ける

黒澤 明 医師

黒澤 明 医師

医療法人さくら さくら記念病院は、富士見第一病院を継承するかたちで1992年4月に設立された。「当院は慈悲の心をもって、医療の実践をはかり人々に快ををもたらすことを使命とする」を基本理念に掲げ、設立以来、地域に根ざした医療を展開。内科(腎臓内科、透析内科、一般内科)、外科、泌尿器科、整形外科、形成外科の外来診療に取り組むほか、入院医療にも力を注ぎ、通院困難になった患者を速やかに受け入れ、長期入院患者へのリハビリテーションも提供している。

「創設者で私の父でもある黒澤範夫理事長は、"慈悲の心"や"人々に快をもたらす"ということに強いこだわりを持ち、これらを実践するべくさまざまな取り組みを行ってきました。私もその思いを引き継ぎ、地域医療に力を注ぎたいと思っています」と話すのは黒澤明医師だ。黒澤医師は、日本腎臓学会認定専門医(以下、腎臓専門医)、日本透析医学会認定専門医ほか、消化器内視鏡専門医、救急医学専門医、移植認定医、腎臓移植認定医といった数々の資格を持ち、その専門性を日々の診療に活かしている。

透析センター棟の竣工は1999年。当初から多数の外来透析ベッドを設置し、地域の透析患者を受け入れてきた。一般的な血液透析(HD)のほか、長時間透析、腹膜透析(PD)、在宅血液透析(HHD)などにも対応している。2005年には新館を竣工。さらに、2006年に「北朝霞駅前クリニック」、2012年に「北浦和腎クリニック」、2015年に「鶴瀬腎クリニック」と、サテライトクリニックを順次開設している。法人全体の透析患者数は年を追うごとに増えており、2022年10月現在、およそ600人となっている。

現在の病院に新築移転したのは2019年12月。新病院では2020年9月から地域包括ケア病棟(全3棟、48床)をスタートさせたほか、2022年9月から介護関連事業所や住居型有料老人ホーム(ふじさくら有料老人ホーム)を併設するなど、超高齢社会のニーズにも対応しながらサービスの幅を広げている。

2. 透析室 外来透析ベッドは全室個室で24時間透析可能
快適性を追求しシャワールームも完備

新病院の外来透析室の透析ベッド数は64床で、そのすべてが個室という点に大きな特徴がある。各個室は3方を壁に、前面をカーテンで仕切られ、中に入ると周囲の音はほとんど気にならない。「照明は各ベッドの枕元で調節できるほか、エアコンの風も患者さんに直接当たらない構造です。各室に設置したテレビはCS・BSが視聴でき、イヤホンを挿さないと音が聞こえないタイプを採用しています」と、アメニティ面の工夫を紹介するのは、臨床工学技士で血液浄化部の鈴木隆司部長だ。

「全室個室にした最大の目的は、オーバーナイトを含めた深夜透析により多く対応するためです」と黒澤医師。同院は新築移転する以前の2017年2月から徐々に深夜透析を始めていたが、移転による個室化を機にこの取り組みをさらに強化した。

現在の透析スケジュールは、月・水・金の9:00に午前透析がスタートし、同13:30〜午後透析、18:30〜夜間透析、22:30以降が深夜透析となり、日付が変わって火・木・土の6:00〜を早朝透析と位置づけている。このうち午後透析から早朝透析までは、何時に開始しても、何時に帰宅しても患者の自由だ(図1)。なお、送迎サービスを利用できるのは午前・午後のみとなっている。

このスケジュールを実現するために、透析装置を2台配備した個室を11室つくり、前の患者が使用した透析装置を洗浄している間にも、もう1台を使って次の患者がすぐに透析を始められるようになっている。こうした個室は30床まで増やすことが可能だ。

「透析時間も患者さんの自由に設定できるので、仕事の都合に合わせたい患者さんはもちろん、いろいろ情報収集して長時間透析が体に良いことなどを勉強している患者さんにも、『24時間いつでも透析』はたいへん喜ばれています。長時間透析を受けている患者さんからは、『ご飯がおいしい』『透析をしない土日から月曜の朝まで楽に過ごせる』といった声が届いています」と鈴木部長が手応えを語る。

外来透析室の一角にはシャワールームも2室設けてあり、仕事先から直接来院して透析を受ける人、透析後に直接仕事に向かう人などに便利に利用されている。血液浄化部の宮下光江師長によれば、ほかにも自宅での入浴が難しい人などに、リフレッシュを兼ねてシャワールームを利用してもらっている。ルーム内には非常ベルも備えている。

外来透析室と同じフロアに、入院透析室もある。こちらは患者の見守りがしやすいようオープンフロアに26床の透析ベッドが並ぶ。

透析にかかわる専門職は、外来、入院ともに血液浄化部のメンバーで、看護師20名、臨床工学技士27名。この中には国家資格以外の資格を持つ人も多く、透析技術認定士15名、呼吸療法認定士1名、アフェレシス学会認定技士1名、フットケア指導士1名、血管診療技師2名、弾性ストッキング・圧迫療法コンダクター1名、リフレクソロジスト1名がいる。

看護師と臨床工学技士は専門性を発揮しながら協力して業務にあたっている。バスキュラーアクセス(VA)エコー、下肢動脈エコー、体液量等測定、血管機能検査(SPP、ABI)といった検査も両職種で手分けをして計画的に行っている。

ほかに看護助手7名、メディカルアシスタント2名、メディカルクラーク4名が在籍し、専門職の業務をサポートしている。また、管理栄養士が医師の要請により透析室で栄養指導を行うこともある。

透析室の回診には、黒澤医師ら5名の常勤腎臓内科医、4名の非常勤医、深夜担当の2名の非常勤医などがあたっている。

3. 個室化のメリット 各室の状況をシステマティックに管理
深夜透析を中心に患者数が年々増加

透析に際して着替えるか着替えないかは患者の自由で、着替える場合も、個室でできる。荷物もベッドサイドに持ち込めるので、患者用のロッカーは人数分確保しているものの、"マイ枕"を使う患者が枕を保管している程度の使用状況だという。透析ベッドのシーツは患者が入れ替わるごとに必ず交換するなど、室内の清潔も維持されている。

個室に患者が入室しているか、準備中か、透析中か、問題が生じているかなどは、各室外側に設けられたライトの色で識別できる。また、患者それぞれの透析条件、穿刺部位、除水量などは透析支援システムで管理しており、スタッフステーションのモニターでもベッドサイドに1台ずつ置かれたモニターでもいつでも確認できるので、個室であることによりスタッフが不便を感じることはないそうだ。透析室専任救急専門医として緊急時に備えながら回診にあたる黒澤医師も、「周囲を気にせず患者さんとコミュニケーションができます」と、個室透析室のメリットを語る。

同院の外来透析患者数は、サテライトクリニックを開くたびに少し減少してはまた増えることを繰り返してきたが、外来透析室を個室化して24時間対応を強化して以降は年々増加傾向にある。図2は、深夜透析を開始して以降の5年間の透析患者数を透析時間帯別にグラフにしたもの。これを見るとわかるように、深夜透析開始前の2017年1月の外来透析患者数は196人であったが、開始した同年2月には208人となり、2018年2月には227人に。直近の2022年7月にデータでは259人となっている。このうち夜間・深夜透析の患者は合計72人と約3割を占めている。

2017年に深夜透析を始めることを患者に伝えると、多くの希望者が集まった。そのうちに他県からの問い合わせも増え、群馬県、茨城県、千葉県などからも患者が来るようになった。同院の近所に引っ越して来た患者も複数いるという。

4. コロナ禍での透析 病棟5床をコロナ専用病床に
コンテナ3床も増設し濃厚接触者にも対応

2020年以降の新型コロナウイルス感染症の蔓延に際しては、上記外来透析室とは別に、病棟の3人部屋と4人部屋合計5室を新型コロナウイルス感染症患者専用の透析室として活用している。コロナ病床として使用している一角では、病室を1室監視部屋としてモニターなど必要な機器を設置し、スタッフができる限り病室に入らないで済むよう工夫することで院内感染を防いでいる。

「院内の体制を整え、正式にコロナ患者さんや感染が疑われる患者さんの受け入れを開始したのは、埼玉県内の感染者数が増えた2021年1月からです。当院の病棟は、2019年の新築時から、全136床にRO水の配管を完備しているため、いつでも入院病床での透析が可能な状況にありました。通常は人工呼吸器を使用している患者さんなどのために活用していましたが、感染拡大を受けて、一部をコロナ病床にしたかたちです」と鈴木部長が説明する。

さらに感染者が増えた2021年夏以降、旧病院や駐車場の一角に臨時の「コロナ患者・濃厚接触者用透析ベッド」を設置した。感染者・濃厚接触者専用送迎車も走らせ、入院できない、またはしたくない患者はこの臨時透析ベッドに通ってもらっている。

5. PD・療法選択支援 高齢者のPDラストが増加傾向
療法選択支援には各部門の看護師がかかわる

同院ではPDにも積極的に取り組んでおり、最も多かった時期には40人のPD患者が通院していた。夜間・深夜透析を強化したことで若い世代がこちらに流れ近年、PD患者は減少傾向ではあるが、それでも希望者には常に応える体制を維持している。

以前からPDに深くかかわってきた看護部の小川里絵部長が言う。
「近年は、いわゆるPDラスト、HDが難しくなってきた高齢の患者さんがPDに移行するケースが増えています。PDを始める方には病棟でトレーニングを受けていただいたうえで在宅に移行していただき、その後は訪問看護と連携しています」

療法選択支援については、「HDについてのくわしい説明は血液浄化部の看護師に、PDについてのくわしい説明は病棟看護師にというように、より具体的でわかりやすく情報を伝えられるように各部門のスタッフが協力し合っています」と小川部長が説明する。

療法選択支援に際しては、腎臓移植についてもしっかり紹介する。「当院では実際の移植手術はできませんが、黒澤(明)医師が腎移植認定医ということもあり当院は移植に積極的です。可能な限り腎移植のニーズにも応えられるよう登録などを迅速に行い、専門施設に紹介することで移植に至ったケースも複数あります」と小川部長。他の病院で黒澤医師が移植手術を行った患者のその後の管理を行ったり、移植後の患者のリハビリテーション入院を受け付けたりもしている。

6. フットケア 日中はベッドサイドで実施
「フットケア外来」も毎日開設

透析室ではフットケアにも力を入れている。中心となって進めているのはフットケア指導士である宮下師長。「すべての透析患者さんに対し月に1度フットチェックを行い、足病変の早期発見に取り組んでいます。その際、ケアが必要な方にはベッドサイドで行っています。夜間透析以降の患者さんは就寝されることもあるので、別途、毎日1名ずつ、15:00から予約制で行っている『フットケア外来』に来ていただいています。リスクの高い患者さんには、フットケアと合わせて下肢動脈エコーやSPP、ABIなどの検査を行うこともあります」と紹介する。

同院で本格的にフットケア外来を始めたのは2020年度。初年度は周知を目指しながらだったこともあり利用者は少なめだったが、2年目には年間のべ100人が受けるように。現在は毎月15人ほどの予約が入っている。

宮下師長は、「フットケアを受けられた患者さんは皆さん、気持ちいいとおっしゃいます。患者さんがご自分の足を意識してくださるようになることに意義があり、やりがいを感じています」と話す。

フットケアにあたるのは、宮下師長が指導し確かな技術を身につけた看護師のみ。透析室の看護師は技術を習得し、透析室やフットケア外来で活躍している。

7. CKD対策 5名の腎臓専門医が在籍し「CKD外来」を毎日実施
開業医との連携で軽度腎障害患者に早期に介入

さくら記念病院では、慢性腎臓病に対して腎臓専門医が検査、診断、治療を一貫して行っており、保存期CKDの診療にも力を入れている。2021年には近隣の開業医などとともに「CKD連携の会」を組織し、情報交換を行いながら、早期にCKD患者を発見し専門医が介入できる仕組みづくりを進めている。同院には常勤だけで5名の腎臓専門医が在籍。さらに、著名な腎臓内科医である乳原善文先生(虎の門病院分院腎センターリウマチ膠原病科)も診療に参加し、毎日、専門医による「CKD外来」を開設して、検査、診断、治療、透析導入の場合の療法選択支援などを行っている。

「具体的には、クレアチニン値が1.5、尿蛋白、尿潜血のいずれかに当てはまった時点で開業医から当院に患者さんをご紹介いただく流れを定着させようとしています。紹介にあたっては特別な紹介状は必要なく、決まった書式でデータを提供いただければよい仕組みです。埼玉県南西部の内科や循環器内科を中心に、現在約20のクリニックが参加してくれています。これを徐々に広げていくことで、成人の8人に1人といわれるCKD患者さんの早期発見・早期介入につなげていければと思っています」と黒澤医師が言う。

黒澤医師は一般的なCKD医療について、「開業医が専門医に患者さんを紹介するタイミングがどうしても遅れがち」と指摘。「CKDは早期の介入がとても大事ですから、とにかく早い段階で検査・診断を行い、必要な指導や治療を行うことが必要です。鑑別が難しいケースについては、大学病院と連携して腎生検を行えますので、正確な診断に基づく指導・治療が可能です」と解説する。

現在はまだ、紹介されてきた時点でかなり進行しているケースが多く、結果的に透析に至るケースが目立つそうで、「こうしたケースを食い止めるのが連携の狙いです」と、黒澤医師は強調する。

8. 今後の課題・展望 院内勉強会と学会参加でスタッフの知識を底上げ
質の高い腎臓病専門病院を目指す

黒澤医師は、さくら記念病院のある埼玉県南西部、特に富士見市水谷東地区について、「高齢者が多く、腎臓病についてあまり教育されてこなかったこともあり、ご自身のCKDに気づいていない方が多いのではないかと感じています。そういう患者さんを早く拾い上げるのも当院の使命だと思います」と話す。

病院の現在の状況については、「透析医療をかなりの質で提供している病院であることは地域にもご理解いただいていると思います。ただ、保存期CKDの診療への取り組みはまだまだ知られていないので、今後は『CKD連携の会』などを通してアピールしていきます。さらに、在宅医療や有料老人ホームも含めてCKD患者さんをトータルにサポートできることを広く伝え、これまで以上に地域に貢献していきたいと思っています」と言う。

「そのためには人材育成が不可欠」と、院内では月に2回、勉強会を開き、スタッフの知識の底上げを図っている。また、専門職には最新の知見が集まる各種学会への参加、特に発表を推奨し、研究の後押しもしている。

「こうした研鑽を重ねることで、一人ひとりに何かしら専門分野、あるいは強みを持ってほしいと願っています。私自身も積極的に学会に参加して新しい情報を収集しています。皆で頑張って、病院全体のレベルを上げていければと思います」と黒澤医師。「当院では腎臓病・腎不全診療において、外来から入院、診察から治療・手術まで、すべてを網羅しています。今後も質を一番に考え、より良い腎臓病専門病院を目指していきます」と明確な未来像を語る。

KKC-2022-01217-2

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