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医療法人社団 静岡メディカルアライアンス
今里クリニック
[透析施設最前線]

2023年1月24日公開/2023年1月作成

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病院外観
  • ●院長:後藤 巨木 先生
  • ●開設:2015年
  • ●所在地:神奈川県海老名市今里1-10-12

関連施設のバックアップで多くの透析患者をサポート
フットケアに力を注ぎ足病変を予防

今里クリニックは、社会医療法人ジャパンメディカルアライアンス(JMA)のグループ再編に伴い新設された、医療・介護・高齢者住宅の複合施設「海老名ケアサポートセンター」の一角に、2015年にオープンした。51床の透析ベッドを毎日2クール制で稼働させ透析医療を提供。炭酸泉コーナーを設けるなどフットケアに特に力を入れており、足病変予防や患者の意識変革といった成果を上げている。グループ施設である海老名総合病院、海老名メディカルプラザとも連携しながら、多くの透析患者をサポートしている。

1. クリニックの概要 医療・介護・住居の複合施設内に開設
外来診療と透析医療を提供

後藤 巨木 院長

後藤 巨木 院長

今里クリニックは、グループ施設である海老名メディカルサポートセンター(現・海老名メディカルサポートクリニック)の人工透析機能を移転するかたちで、2015年4月にオープンした。経営母体として地域の中核病院である海老名総合病院など複数の施設を運営するJMAグループもこのとき組織再編を行っており、同クリニックは社会医療法人ジャパンメディカルアライアンス(JMA)から医療法人社団静岡メディカルアライアンス(SMA)に移行している。

今里クリニックがあるのは、小田急線・相鉄線海老名駅から車で10分ほどの住宅街に建つ、クリニック、リハビリステーション、サービス付き高齢者向け住宅などの入った4階建ての複合施設「海老名ケアサポートセンター」の1・2階だ。1階には外来診察室と検査室、2階に透析室がある。外来診療科目は内科、整形外科、皮膚科、耳鼻咽喉科。3・4階は、サービス付き高齢者向け住宅「カサボニータ海老名」で、今里クリニックはこの施設の入居者のかかりつけ医としても機能している。同じ建物内にはほかに、「今里リハビリステーション」や「今里ヘルパーステーション」なども入っている。

「施設の外観のイメージから、地域住民の中には、単なる高齢者施設だと思われていた方も多かったようですが、開院から数年経ってようやく当クリニックの存在を知っていただけるようになり、皮膚科や、2021年6月に開設した耳鼻咽喉科などにはお子さん含めて若い世代の患者さんもよく来てくださるようになりました」と、近年の状況を語るのは、後藤巨木(なおき)院長だ。

後藤院長はもともと勤務医だったが、同クリニックの開院1年後に初代院長の後任に選ばれ着任した。「はじめてクリニックの責任者になり、50床(現51床)の透析ベッドを任されて、最初は苦労の連続でした。スタッフの協力もあってここ数年は組織運営が安定化してきたと感じています。いまは、より多くの患者さんに当クリニックを支持していただけるように、皆で頑張っているところです」と後藤院長が言う。

2. 透析室 ベッドとチェア計50床を毎日2クール稼働
新型コロナ対応の隔離室も完備

2階の透析室には、透析ベッド45床とリクライニングチェア5床が並ぶ。室内は広く、ベッド間隔が十分にとられている。「以前はもう少しリクライニングチェアの比率が高かったのですが、患者さんが高齢化し、長時間座っていられない方が増えてきて、順次ベッドに置き換えている状況です」と変化に対応する様子を話す後藤院長。急なスケジュール変更などに対応するためには、どんな状態の人でも使えるベッドをより多く確保する必要があると事情を語る。

透析室と同じフロアには個室(1床)もある。「新型コロナウイルス感染症の流行を機に設けた隔離室です。以前は外来診療室だった場所を活用したので少々広すぎるくらいですが」と話す大久保真紀子看護科長が案内するのは、大きな部屋の中央に透析ベッドが1床置かれた部屋。奥にはポータブルトイレが設置され、感染した患者と他の患者は接点を持たないようになっている。

個室を含めて51台、すべての透析装置がオンラインHDFに対応しており、患者の体格や栄養状態に合わせて15種類ほどのダイアライザーを使い分けている。

2020年10月に導入した透析管理システムは電子カルテと連動しており、透析管理システムに入力したデータは自動的に電子カルテに取り込まれる。また、各種書類をPDF化して電子カルテに保存することもできる。一人ひとりの身体状況や透析条件などの入力や確認、コスト管理などが素早くできるようになっている。全透析患者について定期的に行う心エコー、腹部エコー、ABI(足関節上腕血圧比)測定、骨密度測定、内視鏡検査などの検査結果もここに記録されている。

透析スケジュールは月〜土曜を通して午前・午後の2クール制で、午前透析の穿刺は8:30にスタート。午後透析の穿刺は午前透析の返血作業と併行して13:00頃から行う。すべての透析は18:45までに終了する。透析時間は4時間が基本だが、検査データが思わしくない人、体重の増加が著しい人などには、5時間、6時間と、長めの透析も行っている。透析患者数は2022年10月現在129人(一部入院中)。希望者全員が利用できる送迎サービスがあり、高齢患者を中心に7〜8割が利用している。

3. 人員配置 透析室を4区画に分け担当看護師を配置
リーダー看護師が統括し看護師・MEが効率的に役割分担

透析室のスタッフは、医師が後藤院長と海老名総合病院や東海大学病院から派遣される非常勤医6名で、後藤院長は週3日担当。残り3日を非常勤医が当番制で担当している。看護師は8名、臨床工学技士(ME)は5名が配属されており、1日の勤務人数は看護師が6名、MEが4名(うち1名は半日勤務)となっている。

後藤院長を含めた3職種が揃ってのカンファレンスは、水曜・木曜の午前・午後にそれぞれ実施し、全患者の情報共有を図っている。看護師とMEによるミーティングは毎日、透析開始15分前と午後透析の落ち着く時間帯に行い、体調の悪い患者、各種変更事項、最新の情報などを確認し合っている。

透析室内はA・B・C・D、4つのエリアに区分けされ、看護師、MEが分担して準備やケアにあたっている。1エリアの患者数は多くて12人。プライミング(透析を始める準備)はMEメイン、透析中の血圧管理や投薬、各種処置は看護師メイン。穿刺作業は共同で行うシステムだ。

「看護師は毎日1名、リーダー看護師を配置し、各エリアを担当する受け持ち看護師との情報共有を図りつつ、全体への指示命令を担っています。残り1名の看護師はフリーの立場で働きます。MEとの情報共有もリーダー看護師の役割で、受け持ち看護師からの情報を集約しMEに伝えています」と、大久保看護科長が看護部門の体制を紹介する。

一方、MEの仕事内容については、開業時からのスタッフで海老名総合病院での勤務経験もある貫田顕士郎臨床工学科主任が、次のように紹介する。
「すべての透析装置がオンラインHDF対応のためプライミングは透析液を使って行います。私たちMEは出勤したら、最初に機械室で透析液をつくります。それを使って透析開始時間に間に合うようにプライミングを行います。その後は透析室で、医師の指示の元で看護師とともに穿刺などの作業をします」

最近、現場主導で始めたものに、透析中のEMS (ElectricalMuscle Stimulation:電気刺激による筋肉収縮運動)による訓練がある。学会に参加してこの療法を知った貫田主任が、「患者さんのADL低下を少しでも和らげるために」と、後藤院長に導入を提案、実現した。

「ベルト電極式骨格筋電気刺激法といって、EMSベルトを患者さんの大腿やふくらはぎなど下肢に巻きつけ電気刺激を与えることでインナーマッスルが鍛えられます。現在、20人弱の患者さんにお使いいただいていて、人によってはこちらが見ていて効果がわかるくらい体の動きが良くなっています。また、むずむず脚症候群の症状が気にならなくなったとおっしゃる患者さんもおられ、手応えを感じています」と貫田主任が言う。

大久保看護科長も、「透析のために当クリニックにいらっしゃる以外は家にこもりがちで、通院も送迎バスを利用していてほとんど歩かない、といった患者さんがたくさんおられます。そういう方々にとっては貴重な運動の機会になっています」と語る。

4. フットケア 計画的に丁寧に全透析患者に実施
末梢循環器障害予防に炭酸泉コーナーを活用

今里クリニックが特に力を入れているものにフットケアがある。「1カ月に必ず1回は、『足回診』と称してすべての患者さんの足観察とケアを行っています。漏れがないように、どの患者さんに対して、どの看護師が、いつ行うかまで詳細に計画して実施しています。1日に実施する患者数は4、5人に押さえ、その分、時間をかけて十分なケアを行っています。そのうえで、患者さんの状況に応じて観察やケアの頻度を増やす仕組みです。フットケアについては皆で勉強を重ね、いまでは透析室所属の看護師全員がグラインダーなどの専用の器具を使ってフットケアを行えるようになっています」と大久保看護科長が紹介する。

フットケアの内容や皮膚状態などの観察結果は毎回、「足カルテ」に記入し、PDF化して電子カルテに保存している。ここには年1回、患者によっては3カ月〜半年ごとに行うABI測定の結果も記録されており、毎回のケアの参考にするとともに、悪化が見られるケースは、下肢切断などに至らないように、早めに循環器科に紹介し、対応してもらっている。

こうした定期的なフットケアのほかに、足病変のリスクの高い人などを中心に、透析開始前に10分程度、炭酸泉浴も行い効果を上げている。「炭酸泉には血流を良くする効果があり、末梢循環器障害など足の合併症を防ぐために有効です。また、リラックス効果がありますので、透析前に心身をほぐしていただけたらと考えています」と後藤院長。透析室に隣接して炭酸泉コーナーを完備。患者の希望によっては透析中に座位で足浴のかたちで行うこともある。

同クリニックのフットケアは、2016年の診療報酬で「下肢末梢動脈疾患指導管理加算」が新設されたのを機に後藤院長が着手した。「フットケアのできるスタッフが育っていなかったのが一番の理由ですが、普段から医師である私が一人ひとりの患者さんと十分コミュニケーションをとるのは難しいですから、フットケアをしながら会話をしたり、体調を聞いたりできるという意味ではたいへん有意義です」と言う。

フットケアに取り組んできだ成果として後藤院長は、「全体的に足の状態が良くなったことに加えて、日頃から患者さん自身がご自分の足を意識されるようになったと感じます」と喜ぶ。大久保看護科長も同様の感想を持っており、「当初は私たちに足を見せること自体に抵抗を示していた患者さんも、いまでは進んでセルフケアをされるようになってきました」と話す。フットケアは足病変の早期発見・予防だけでなく、患者の意識変革にもつながっているのだ。

5. 人材育成 透析看護のあり方をマンツーマンで指導
MEはケースの振り返りを通して力をつける

人材育成は、看護師、ME、それぞれの職種ごとに行っている。看護師の場合は、新人として入職した人から他の施設を含めて十分な経験を積んできたベテランまで幅広い人材がいるため、各自のキャリアを活かしてステップアップすることに主眼を置いている。

「入職した看護師にはプリセプター(指導を行う先輩看護師)をつけます。新人なら3カ月かけて一般的な看護業務から透析にかかる業務、考え方などを教えますが、ベテランの場合は透析分野に絞って、1カ月程度で教育を終えることもあります。透析は一般の外来診療とも入院医療とも違う独特のもので、看護師と患者さんとの距離感や関係性も他の医療とは少し違います。そのような環境下で、患者さんの個性にどう対応するか、若い看護師が高齢の患者さんに接する際の態度はどういうものが望ましいか、ご家族との接し方はどうかなどを、マンツーマンで指導しながら考えるようにしています。基本的には、教科書的な対応にとどまらず、その方の価値観や背景を知りながら寄り添う姿勢を共有したいと考えています」と、大久保看護科長。

MEの人材育成は、実際に行った透析を詳細に振り返ることで課題を見つけ、より良い透析に変えていく、という作業の中で行っている。
「日々の透析を振り返ると、これといった問題のないケースでも、たとえばもう少し除水速度を落としたら患者さんはもっと楽なのではないか、ほかのダイアライザーのほうがより適しているのではないか、といった課題点が見つかります。こうしたことをどう改善していくかを個々に話し合うことで視野を広げ、ただ透析をするだけではない、常に患者さんを中心に考え、より良い透析を目指して仕事をする人材を育てたいと思っています」と貫田主任が語る。

後藤院長は、「当クリニックに来てくれたスタッフが人間的に成長できるような職場でありたい」と話す。そのために最も大事なことは「思いやり」と言い、「どんなときも思いやりを持って対応することで解決策が見えてくる」と、繰り返しスタッフに話している。

6. 医療連携 入院、救急、透析導入は海老名総合病院で実施
CKD患者の診察は主に後藤院長が担当

今里クリニックでは冒頭で紹介した通り、内科、整形外科、皮膚科、耳鼻咽喉科の外来診療を行っているので、透析患者に不調が見られたら、すぐに各診療科の医師に相談することができる。

入院が想定されるケースや救急の場合は、海老名総合病院に紹介する。海老名総合病院と今里クリニックとは同じ電子カルテシステムであるため、紹介患者の情報を電子カルテ上でいつでも確認し合うことができる。

シャント管理についても海老名総合病院に依頼している。「当クリニックのMEにエコーで見てもらい、トラブルが起きそうな場合は早めに病院に紹介してPTAを行ってもらいます」と後藤院長。

透析導入に際してのシャント作成や各種指導なども、海老名総合病院に入院してもらって行うのが基本だ。入院を希望しない人に限り今里クリニックの外来で、後藤院長が導入を行うこともある。

また、海老名駅すぐそばでJMAが運営する、健診センターとクリニックの複合型医療施設「カラダテラス海老名」では、健康診断・人間ドックを行っているが、ここで見つかったCKD患者は、後藤院長に紹介されることがたまにある。後藤院長は海老名総合病院の腎臓内科外来でも診察を担当している。

ほかに、透析患者の定期検査のうち、心エコー、骨密度測定、内視鏡検査などは海老名総合病院に依頼するなど、グループ内の密な連携により、今里クリニックの患者が必要な検査や治療を迅速に受けられる環境がつくられている。

7. 今後の課題・展望 アットホームで食事も楽しめる
"また来たくなる透析施設"を目指す。

後藤院長は目指すクリニック像を、「明るく元気になって、また来たいと思えるような施設」と表現。「患者さん同士でおしゃべりができたり、ゆっくりできる環境を作りたい」と話す。そのためにも、できる限り苦痛のない透析を提供する努力を続けるとともに、アットホームな雰囲気づくりを心がけていきたいという。

「具体的に考えているのは外部の人も利用できる食堂です。当クリニックには厨房があり、透析患者さんや施設の入所者さんに温かい食事を提供しています。新たに食堂を運営するためには厨房を増設するなど準備が必要ですが、自由に外食に出かけたりできない患者さんにとって、食事はとても大きな楽しみです。また、食事が美味しいからこそよく食べられて栄養がとれ、元気になれるのです。これからも手づくりの食事にこだわり、それを透析施設の特長として育てていけたらと思います」と後藤院長。感染が収束する日を念頭に、具体的計画に入る考えだ。

院長就任から約6年。院内の運営が安定化したいま、後藤院長の問題意識は、外部に向けた施設のアピールに向いている。外来部門やグループ施設によるバックアップ、リハビリ施設や入所施設の併設、手づくりの食事など今里クリニックの強みを再認識し、特に食事の部分を強化して、選ばれる透析施設を目指していく。

KKC-2022-01269-1

透析施設最前線

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