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医療法人 にしむら皮フ科クリニック
[乾癬治療最前線~患者とともに歩む~]

2023年5月23日公開/2023年5月作成

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  • ●理事長・院長:西村 陽一 先生
  • ●開設:2008年
  • ●所在地:福井県福井市木田3-2605

「乾癬治療ピラミッド」を完備し
300人以上の患者に希望に沿った治療を提供

基幹病院や大学病院などで経験を積み、特に悪性腫瘍と紫外線療法のエキスパートとして知られるようになった西村陽一理事長兼院長が、その専門性を活かして地域医療に貢献しようと2008年に開業した。乾癬は最も力を入れている疾患の1つで、外用療法、光線療法、内服療法、生物学的製剤療法のすべてに幅広く柔軟に対応し、患者のニーズに応えている。各種紫外線照射装置の配備状況は全国有数。継続的に管理している乾癬患者は300人以上で、うち15人は生物学的製剤療法を行っている。

1. 開業の経緯 基幹病院での実績をベースに
理想の皮膚科医療を目指して開業

西村 陽一 理事長・院長

西村 陽一 理事長・院長

医療法人にしむら皮フ科クリニックの西村陽一理事長兼院長(以下、西村院長)は、京都大学大学院医学研究科を修了し博士号を取得後、関西を中心に複数の基幹病院に勤務しながら皮膚科医としての経験を積んだ。京都大学医学部附属病院皮膚科助教(副病棟医長)を経て2005年、福井赤十字病院皮膚科部長に就任。同院を「県下有数の皮膚科に育てる」という目的を果たしたことから部長職を後輩に譲り、培った専門性を活かして地域医療に貢献すべく、2008年12月、JR福井駅南方3kmほどの場所に同クリニックを開業した。

「私も妻も越前海岸をこよなく愛するダイバーです。加えて妻が福井出身ですから、福井には特別な思い入れがあり、私の強い希望で福井赤十字病院に赴任しました。実は福井赤十字病院には1999年に一度、現在は大阪の星ヶ丘医療センター皮膚科部長であられる立花隆夫先生が部長をされていたときに副部長の立場で勤務した経験があります。ここにあらためて部長として勤務するからには、さらに良い皮膚科にしたいと思いました」と、西村院長が福井との縁や赴任した当時の心境を語る。

赴任後は、当時最先端だったナローバンドUVB照射装置を導入し、乾癬をはじめ白斑、アトピー性皮膚炎などの紫外線療法を推進した。一方で皮膚がんの治療にも力を注ぎ、ほどなくして皮膚がんの症例数が福井県下で一番に。さらに「円形脱毛症外来」や「下肢静脈瘤外来」を設立し、こちらも県下一の患者数を誇る特殊外来へと育て上げた。まさに"県下有数の皮膚科"になったわけだが、ジレンマもあったという。

「大きな総合病院であるだけに、皮膚科にかけられる予算には限界があるのです。私たち皮膚科医としては、レーザーも使いたいし紫外線療法の機械もいろいろな種類を使いたい、でも、思うように導入できない、という状況が就任以来続きました。ほしい機器を導入するには開業するしかないのですが、開業すれば皮膚がんの治療は難しくなります。ずいぶん悩みましたが、結果的には新しい光線療法に挑戦し、地域の患者さんに最先端の皮膚科医療を提供したいという気持ちが勝りました」と語る。

2. クリニックの概要 新しい光線療法を積極的に導入
皮膚がんの早期発見・治療にも貢献

開業した2008年当時は大病院はもとより、皮膚科専門の診療所でも、それほど光線療法に積極的なところは福井県内には見当たらなかったという。そんな中、にしむら皮フ科クリニックでは、当時、TL-01型ナローバンドUVB電球が国内最高である48本配備された全身照射型ナローバンドUVB照射装置、150mW/cm2というこれまた国内最強のスペックであるターゲット型エキシマライト治療器、各種レーザー治療器(すべて保険適用のあるもの)などを導入。他に類を見ない光線療法専門施設とも言うべき環境を構築した。

新しい治療法・治療器を導入し、治療の幅を広げていくことはその後も可能な限り心がけており、2020年には、最先端のエキシマレーザー装置を全国に先駆けて導入している。紫外線やレーザーが効果的な乾癬、白斑、アトピー性皮膚炎、ざ瘡、円形脱毛症、赤あざ(苺状血管腫、単純性血管腫など)、青あざ(異所性蒙古斑、太田母斑など)といったものは、同クリニックに通う患者に特に多く見られる皮膚疾患である。

皮膚がんに関しては、手術を行う設備こそないものの、検査と診断、基幹病院へつなぐ役割など、主に早期発見・治療においてその役割を発揮している。西村院長は、「日本皮膚科学会認定皮膚悪性腫瘍指導専門医」「日本がん治療認定医機構がん治療認定医」を持つ皮膚がんのエキスパートでもある。「この2つを持つ医師は全国的にもきわめて稀で、開業医がこれらを維持しようとするとかなりの努力がいります」と西村院長。それでも資格を維持し続けるのは、皮膚がんを少しでも早く見つけて治療につなぐことができるよう、自らの研鑽を怠らないためだ。

にしむら皮フ科クリニックの1日平均患者数は、夏季は平日180人前後、土曜日250人前後。冬季はこれより少し少ない。これに対して医師は、平日は西村院長のみ。土曜日のみ非常勤医師との2名体制となっている。患者の居住地は、原則として福井県内。県外からの問い合わせも少なくないが、皮膚疾患の場合、継続的な通院を要することがほとんどなので、通院が難しい患者は断っている。

ただし、もともと同クリニックにかかっていて症状の安定している患者が他県に移住した場合などは、オンライン診療も活用しながら診療を続けている。2022年9月現在、ざ瘡の患者を中心に約90人がオンライン診療を利用している。「皮膚科でのオンライン診療の仕方については関係機関とともに十分な検討を重ね、2019年に開始しました。福井にはまだオンライン診療に対応している皮膚科が少ないので患者さんに喜ばれています」と西村院長が紹介する。

スタッフは院長以下、非常勤医師1名、院長の妻でクリニックの運営面でも大きな力を発揮している西村美和看護師長を含めて看護師が3名、看護助手3名、事務職4名である。

3. ファストパスの活用 患者の状態やリスクに配慮
バイオ患者や妊娠後期の患者を優先的に診療

毎日多くの患者が訪れる中、待ち時間の短縮や待合室の混雑緩和にも心を砕いている。これについては、西村看護師長が次のように紹介する。

「当院には、緊急を要する患者さん、治療や説明に十分な時間が必要な患者さん、感染リスクの高い患者さんなど、特定の疾患、あるいは特別な状況にある患者さんを優先的に診療する仕組みがあり、ファストパスと呼んでいます。治療法による優先順位は高い順に、生物学的製剤療法、光線療法、比較的高額な内服療法、となります。バイオの患者さんの場合は感染予防の観点から、その方だけしか院内にいない状況をつくって診療するケースもあります。それ以外では、妊娠8カ月以降の妊婦さんは優先しますし、平日には80歳以上の高齢患者さんも、できるだけ待ち時間が少なくなるように配慮しています」

こうした仕組みは、福井赤十字病院の皮膚科部長を引き継いでくれた院長の後輩医師が提案してくれた。西村院長はこれに限らず外部からの提案やスタッフのアイデアなどを積極的に採用する方針である。

たとえば、新しいタイプの薬を使う場合の説明では、副作用や患者の負担もしっかり伝えながらも、その薬を使うと生活がどう良くなるかによりフォーカスするようにしているが、これは西村看護師長のアイデアだ。「患者さんの治療に対するモチベーションは、医療者が使う言葉一つひとつに大きく左右されます。ですから、私たちはいつも、患者さんが前向きになれるような話し方を心がける必要があると考え、皆で実践しています」と看護師長が言う。

4. 乾癬治療 幅広い選択肢をわかりやすく提示
医師と看護師の連携で300人以上をサポート

乾癬治療は、下から外用剤、光線、内服薬、生物学的製剤と積み上げる乾癬治療のピラミッド計画に則って行っている。この、乾癬治療ピラミッドの完成は、西村院長の悲願だったという。というのも、前述したように基幹病院の皮膚科部長時代は、必要な機器を自由に揃えることができず、どうしても光線療法の部分が手薄になってしまっていたからだ。

「外用剤だけで良くなる患者さんもたくさんおられますが、それで不十分な場合は紫外線やレーザーを用います。機器は患部の面積と状態によって使い分けます。症状が全身に及ぶ場合は全身照射型ナローバンドUVB照射装置、肘や膝など特に難治性の部位にはターゲット型エキシマライト治療器、それでも難しい場合はより効果の高いエキシマレーザー装置を使うといった感じです。こうした光線療法がよく効く患者さんもおられるし、次の段階の内服療法と光線療法と併用することで格段に効果の高まる種類もあります。それでも難しいケースには生物学的製剤があるわけです」

生物学的製剤療法を行う場合の連携先は、福井県済生会病院である。迅速な検査、患者の希望に沿って西村院長が指定した薬剤による導入など、同院皮膚科との連携はとても円滑に行われている。また、乾癬性関節炎が疑われる場合の検査依頼などにもすぐに応えてもらえる関係性が維持されている。にしむら皮フ科クリニックで生物学的製剤療法を継続している患者は2022年9月現在、15人である。

治療は乾癬治療のピラミッド計画の下から順番に行うだけでなく、患者の状態や希望に合わせて上述の各種治療方法を選択する場合もある。「いずれにしても、患者さんにより多くの選択肢を提示できることがポイントです。その意味でも、ピラミッドの要素を十分に揃えることはとても重要です」と院長が力説する。

5. 看護師の役割 医師と連携し治療内容をわかりやすく説明
患者の困りごとに耳を傾け的確にアドバイス

新規の乾癬患者が来院した場合には、西村院長がまず診察し、病状を説明し、治療法を提示する。軽症であれば外用剤だけで十分と伝え、患者の納得が得られれば外用剤による治療を開始する。外用剤だけで治療できる患者は、300人以上いる同クリニックの乾癬患者全体の半数程度だという。

複数の選択肢を提示し患者の希望を聞くのは、中等症以上の場合である。それぞれの治療法についてさらにくわしく説明するのは西村看護師長の役割だ。看護師長はこれまでの経験から、大半の乾癬患者が最も知りたがっているのは、治療効果と費用だと感じているそうだ。そこで、説明ではこの2点を最初に明確に伝え、そのうえで治療の内容や副作用を伝えるようにしている。

「必ず患者さんの目の前で乾癬治療ピラミッドを手書きし、金額や通院頻度などのポイントを話しながら記入していきます。印刷されたものを渡すよりも、こうして目の前で書いたほうがずっと理解されやすいことはたくさんの患者さんを見てきて明らかです。よく理解していただけると、治療法の選択も早いのです。医学的な内容以外のこと、特にお金のことを気にしていると医師に悟られたくないと思われている患者さんも多いようなので、看護師である私がそうした心情を汲み取りながら説明し、患者さんが知りたいことを細かい部分まではっきりとお話しするようにしています」

治療費が高額になるときはクレジット決算を勧めるが、ときには同じクレジットカードでも特典が違うこと、患者の生活によってどのカードを使うのが最も得かといったことまで、きめ細かくアドバイスすることもあるという。

看護師長による説明は、医師の診察の後、患者に診察室に残ってもらって行う。このとき、医師はほかの診察室に移動して次の患者を診る。診察室は3つあり、こうした連携で多くの患者を効率的に診察している。

治療が始まってからも、看護師は常に患者に寄り添い、的確なアドバイスをすることを心がけている。「外用薬がうまく塗れない場合は、塗れない原因を患者さんと一緒に探り、改善方法を考えます。内服薬の副作用で便秘になってしまい、処方した便秘薬もなかなか効かない患者さんには、どの市販薬を使うと良いかなどを具体的にお伝えします。気分が悪いと言う方には、食事の指導を回数や内容まで含めて詳細に行います」と看護師長。

このように一人ひとりの困りごとに親身になって応え、情報提供していくことが、看護師への信頼につながり、いまでは患者からいろいろなことを相談してもらえるようになったという。患者との信頼関係を維持し、より有用な情報を提供できるように、看護師長は西村院長とともに各種学会に積極的に参加したり、さまざまな分野のプロフェッショナルの実践に倣ったりしながら、そこで得た知識を他の看護師や看護助手と共有している。

乾癬の場合はできるだけ患部を撮影して記録し、変化を見ているが、この撮影も医師の指示のもとで主に看護師が行っている。「300人の患者さんのお顔を覚えることはできませんが、患部を画像で見ると、どの患者さんかをすぐに思い出せますし、前回の状態を明確にイメージできます。少しずつ良くなっていることを患者さんが気づいていない場合などは、以前と現在の写真を示すと説得力があります。重症度についても、毎回PASIスコア(皮疹の重症度評価)を算出しなくても、必要なときに画像を元に計算することができます。このように皮膚疾患の診療では画像がとても役に立ちます」と、写真で記録する意義を西村院長が説明する。

6. 今後の課題・展望 紫外線療法のさらなる充実と
医療連携の拡充を目指す

今後の目標について西村院長は、専門である光線療法のさらなる充実と、生物学的製剤療法の患者を増やすことを挙げ、そのためには地域の医療機関との連携強化が不可欠と語る。 は続く。

「まだまだほしい機器はたくさんありますし、それを揃えることで治療効果をさらに上げていきたいと思います。また、光線療法に関しては、この地域では当クリニックにしかない機器がほとんどですから、他の医療機関にかかっている患者さんでも、光線療法だけは当クリニックでというように、柔軟に利用してもらえるようになったらうれしいです」

医療連携の拡充が求められるのは、生物学的製剤療法においても同様だ。幸い、基幹病院に理解ある医師がいることで、同クリニックでは15人のバイオ患者を診ることができているが、「ほかにも生物学的製剤の対象となる患者さんは当クリニックだけでもたくさんおられるし、地域全体を見れば相当数いるはずです。患者さんにより適切な治療を受けてもらうためには、地域をあげて病診連携の意義を共有し、推進していく必要があります」と指摘する。 は続く。

「福井県は全国的にも医療連携が遅れていると指摘されていますので、その分、広げていく余地があると思うのです。まずは医療関係者の理解を得られるように、地道に意見交換を重ねながらネットワークを広げていきたいと思っています」と、地域づくりも視野に入れつつ、理想の医療の追求は続く。

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乾癬治療最前線

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