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医療法人真鶴会 小倉第一病院
[透析施設最前線]

2022年10月25日公開/2022年10月作成

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病院外観
  • ●理事長・院長:中村 秀敏 先生
  • ●開設:1972年
  • ●所在地:福岡県北九州市小倉北区下到津1丁目12-14

透析患者の問題解決をとことん追求する
北九州市の代表的な透析施設

透析患者に社会生活を続けてもらいたいーーそんな思いから1972年に開業した夜間透析が可能な透析専門クリニックをルーツとしている。開業以来、透析患者のさまざまな問題を解決すべく、規模・機能を拡張してきた。そして2021年11月にはサービス付き高齢者向け住宅を併設した新病院に新築移転。「患者の高齢化」という現在の透析医療の大きな課題の解決に、また一歩大きく踏み出した。2代目である中村秀敏理事長は、近隣の複数の病院でも腎臓内科外来を担当。その取り組みの中で培った信頼関係が、円滑な地域連携につながっている。

1. 病院の概要 開設50周年を迎える夜間透析のパイオニア
高齢化の進行に伴い診療の幅を広げる

中村 秀敏 理事長・院長

中村 秀敏 理事長・院長

医療法人真鶴会小倉第一病院の前身は、夜間透析が可能な透析専門の「北九州クリニック」。同クリニックは、中村秀敏理事長(院長兼務)の父、中村定敏先生が1972年、35歳の時に創設した。開業にまつわるエピソードを中村理事長が次のように語る。

「私の父は、九州で一番古い透析医療機関とされる済生会八幡総合病院の透析室立ち上げメンバーでした。当時、透析といえば1回8時間が当たり前。週休2日制さえ一般化されていない時代に、働きながら週3回、透析施設に通える患者さんは皆無に等しく、透析イコール職を失うのが現実だったそうです。その問題の解決に挑んだのが北九州クリニックだったと、父からよく聞かされました」

小倉第一病院に改組したのは1985年12月。当時はほぼ透析医療に特化していたが、高齢化の進行に伴い合併症を併発する透析患者が目立ち始めたことから、内分泌内科、リウマチ科、循環器内科、形成外科、皮膚科などを順次開設し、これらの治療にも積極的に取り組むようになった。「現在勤務する常勤医6名のうち、私を含めて3名は腎臓内科や人工透析内科が専門ですが、他の3名は、それぞれ循環器内科医、形成外科医、皮膚科医です。専門性の異なる医師が協力し合うことで、患者さんのさまざま症状、合併症に、的確に対応しています」と、充実した診療体制を中村理事長が紹介する。

2021年11月の新築移転は、施設の老朽化を背景に前々から計画していたことではあるが、このようにさまざまな分野の常勤医が加わったのに伴い、それに見合った設備を整える目的もあったという。「あくまで透析医療を中心に据えつつ、より幅広い医療を提供できる身近な病院」というのが、現在の立ち位置で、各診療科の外来では、透析患者以外の一般の患者も診療している。

「透析に関係のない患者さんとは縁がありません、というのではあまりにも寂しい。そこで移転を機に多くの患者さんに開かれた病院にしようと思いました」と新病院の方向性を語る中村理事長。「お子さんの皮膚炎で皮膚科を受診した方が、後になって腎臓病の親御さんを連れて来られるなど、透析に限定した医療機関だった頃にはなかった流れ、広がりが出てきてうれしく思っています」と笑顔を見せる。

同院のスタッフは、医師6名、看護師70名、臨床工学技士20名弱、薬剤師3名、介護スタッフ20名強、PT・OT合わせて8名、管理栄養士6名、臨床検査技師2名、放射線技師1名、MSW1名、事務系スタッフ約30名と多彩。これらすべての職種が透析医療に関与し、透析室や病棟で患者に直接かかわっている。

2. 外来透析室 全長75m、全面ガラス張り
窓際の床を低くしプライベート空間を実現

中村理事長は、「週3回、年間156回通院し、病院での滞在時間も非常に長い特殊な医療」と透析医療の特徴をあらためて指摘し、「新病院のコンセプトは、その時間をいかに快適に、有意義に過ごしていただくかに着目し、病院らしくない内外装を目指して考えました」と話す。キーワードは「第2の住まい」。こうして木目を多用した、柔らかいイメージの建物ができ上がった。

新病院の立地は、北九州都市高速1号線と、八幡東区と小倉北区の旧市街地を流れる二級河川、板櫃川に挟まれたエリアだ。広大な工場跡地で、北九州市が公的な機関の誘致を進めていた。小倉第一病院はここに進出した第1号で、今後は特別支援学校や障害者就労支援施設、保育園ができることが決まっている。「このように福祉関係の機関が集まる場所に建築できたのは、いいご縁に恵まれたと感じます」と中村理事長は喜ぶ。

同院は板櫃川を正面にして横長に建つ造りで、1階が一般外来、透析室は2階と3階にある。2階の外来透析室は、全長75mのワンフロアに、90床の透析ベッドが3列に整列しているというだけでも圧巻だが、最も特徴的なのは、ガラス張りの窓際から1列目、チェアタイプの透析ベッドが並ぶエリアの床が、他のエリアよりも階段で4段分も低くなっていること。

「同じフロア内で床の高さに変化をつけている透析室は、全国的にもほとんど例がないのではないでしょうか」と中村理事長が言うように、かなり斬新なデザインだ。床を下げた部分をチェアの背中側の壁とし、左右にも仕切りをつけて、半個室を実現。また、その分天井が高く開放感抜群。デッキ越しに外の景色が眺められ、四季折々の変化を楽しみながら、動植物の生命感を感じることもできる。「階段を降りて、プライベート空間で思い思いに過ごしておられる患者さんたちの様子を見て、このデザインにして良かったと感じています」と中村理事長が言う。

3. 入院透析室 外来と完全に分離し病棟と同じフロアに設置
要介護透析室、隔離室なども設ける

3階の入院透析室は、3、4階にある病棟の入院患者が対象だ。透析ベッド数は35床。これらが透析室(24床)、要介護透析室(6床)、観察室(3床)、隔離室(2床)に分かれている。

外来透析室と入院透析室をフロアで分けた狙いは、もともとは外来患者と入院患者の動線を分けて混雑を避けることや、入院患者の移動の効率アップ、病棟と入院透析室の連携の円滑化、インフルエンザの感染予防などが主だったが、2020年からの新型コロナウイルス感染症の流行下では、入院患者と外来患者の接点がまったくないという意味で、コロナ対策の面でも功を奏した。

「第5波が去るまで、私たちが院内感染をゼロに抑えることができたのもフロア分離の大きな成果です。当院ではこれを"真鶴の奇跡"と呼んでいます」と中村理事長が笑う。かつてない感染爆発を見せた第6波でも、周囲の医療機関で次々にクラスターが発生する中、同院関係者の感染者数は一桁で済み、患者間、患者スタッフ間ともに二次感染はゼロだった。こんな実績も手伝い、いまでは感染対策を徹底した透析施設としても注目されている。

なお、2階、3階は、病院に隣接して設置された立体駐車場と渡り廊下でつながっている。渡り廊下は屋根付き。自家用車や介護タクシーで2階まで来れば、雨の日も傘をささずに入室できる。患者が急変した際などに救急車が出入り口のすぐそばまで来られるメリットもある。

4. 透析医療の特徴 選択肢の幅広さとスタッフの専門性の高さが強み
HHDやPD、訪問診療も実施

同院の透析患者の数は、外来・入院の合計で310~320人で推移。多くは院内で血液透析(HD)を受けているが、腹膜透析(PD)を選択している患者も10名ほどいる。PD患者のうち1名は訪問診療で管理している。また、在宅血液透析(HHD)の患者も1名おり、1名が現在訓練中だ(2022年6月現在)。外来透析時間は月水金が7:00~25:00と深夜まで対応。火木土も7:00~21:00と、できる限り患者の都合に合わせられる時間設定となっている。こうした幅広い選択肢の提示、柔軟な対応は、透析患者の問題解決にとことん取り組む同院の真骨頂である。

患者の居住地は北九州市小倉北区が大半で、平均年齢は全国平均とほぼ同じ。ただし、透析歴25年以上の長期透析患者の比率は全体の16~17%と全国平均の約4倍だ。これは同院の透析施設としての歴史の長さを象徴する数字であり、質の高い透析医療を提供し、患者に選ばれ続けている証でもある。

透析の質を追求できる背景として中村理事長が真っ先に挙げるのは、スタッフのレベルの高さだ。「当院には慢性腎臓病療養指導看護師(CKDLN)が9名、フットケア指導士の資格を持つ看護師が6名、腎臓リハビリテーション指導士の資格を持つOT、健康運動指導士やサルコペニア・フレイル指導士の資格を持つ管理栄養士、糖尿病療養指導士9名など、プラスαの資格を持つ専門職が多数在籍しています。独自の資格取得支援制度を設けるなど、スキルアップできる環境が整っており、さらに外部研修への参加を評価するポイント制度、『院外勉強会スタンプラリー』を2016年にスタートしたのを機に、学会や各種勉強会にも積極的に参加するスタッフが増え、学ぶことを楽しむ文化が醸成されてきたのも大きいと思います」

加えて、透析医療に取り組む地域の基幹病院との連携がうまくいっていることを挙げ、「当院の常勤医も皆、そうした基幹病院で研鑽を積んだ経験があり、いまでも良い関係を維持しています。たとえば当院の野坂秀行副院長は、全国でも指折りの循環器疾患治療施設である小倉記念病院の副院長まで務めた循環器専門医です。生命予後にかかわるような重篤な合併症にも、速やかに的確に対応できる体制、環境は、当院の強みだと思っています」と話す。

合併症予防のための各種検査は、検査部門による徹底した年間スケジュール管理のもとで漏れなく実施している。検査で異常が見つかった場合は、院内もしくは基幹病院で速やかに治療を受けてもらい、必要に応じて小倉第一病院で入院リハビリを実施する。「下肢の動脈硬化の患者さんなどは治療後2週間の入院を原則とし、病棟でリハビリスタッフの管理のもとシステマティックに運動療法を行って成果を上げています」(中村理事長)。また、透析患者のほぼ全員に毎年、筋力測定を実施し(コロナ禍では休止)、透析中の効果的な運動療法につなげている。

透析装置は移転後、125台すべてを同一メーカー製に統一し、効率化と安全性を確保。また、透析液供給装置も透析装置と同メーカーのものに統一し、透析状態に応じて透析液の供給量を自動調整できる仕組みを採用している。さらに透析液用水処理装置、電解質溶解装置、透析液供給装置をそれぞれ4台配備し、今後、透析患者がさらに増えても、また万一故障などのトラブルがあっても、余裕をもって安定的に対応できる準備が整っている。

もう1つ、移転を機にカルテを電子化したことも医療の質の向上に役立っている。「電子カルテで患者さん個々のサマリーを作成し、さらに各科サマリーの作成も進めています。たとえば、ある患者さんについて内分泌内科のサマリーを見れば、その患者さんがいつから糖尿病の治療を始め、どんな薬を服用しているかがわかります。栄養科のサマリーを見れば食事指導の詳細な内容が、リハビリ科のサマリーを見れば筋力の変化や運動療法の実施状況がわかります。これを多職種で共有し、1人の患者さんに多角的にアプローチすることで、より良い管理のあり方を追求しているのです」と中村理事長が説明する。

職員の情報共有には「MIP」も重要な役割を果たしている。MIPとは、Medical Information Plaza(医療の情報が集まる広場)の頭文字をとった言葉で、前理事長が命名した職員専用エリアだ。新病院ではこれを1階の職員食堂横に集約し、院長室、医局、オープンスペースである幹部エリア、広報室、パソコンスペース、カフェスペースなどを並べた。ここに来ればさまざまな職種が気軽にコミュニケーションできるし、幹部への相談もしやすい。医局秘書を兼ねたコンシェルジュも2名常駐している。

5. CKD対策 CKDの早期から多職種で介入
理事長は複数の基幹病院で腎臓内科外来を担当

小倉第一病院では透析医療を核としながらも、腎臓内科外来を中心に透析予防にも力を入れている。中村理事長は、「透析導入を少しでも遅らせることは、当院にできる社会貢献でもあります。また、長年にわたり慢性腎臓病の管理をさせていただき、患者さんと信頼関係を築いたうえで透析導入となったケースでは、その後も良いお付き合いができます。最初は外来、その後は入院、そしてお看取りまで、トータルに提供できることが、患者さんの安心感にもつながっていると思います」と話す。

中村理事長は地域でも貴重な腎臓内科医として、同院以外でも外来を担当し、CKD対策に貢献している。現在、定期的に外来診療枠を持っているのは、北九州市立医療センター、国立病院機構小倉医療センター、戸畑総合病院の3施設。いずれも腎臓内科専門医が在籍していない総合病院だ。

診療枠は各病院で月1回または2回。他院での外来診療を始める以前は、小倉第一病院を受診する腎臓病の新規紹介患者は月に5名未満だったが、これらの総合病院への紹介患者を合計すると、その数は一気に約20名まで増えたという。

「腎臓が悪いのにきちんと診断されていない患者さんがまだまだ数多くおられるということを実感しました」と中村理事長。また、「総合病院の医師から中小病院の小倉第一病院を受診するように言われるよりも、同じ総合病院に私が出向いて診療するほうが、患者さんにとっても抵抗感が少ないようです。総合病院の電子カルテで患者さんの病歴をかなり前まで遡って閲覧できること、病院の医師とフェイス・トゥ・フェイスで連携できることなども、私が他の病院に出向いて外来診療を行うメリットです」と、自らの取り組みの意義を語る。

CKD患者への説明には、総合病院の外来でも自院オリジナルの「腎臓病はじめてガイド」を使う。CKD診療ガイドラインのステージ分類が18枠あるのに対し、中村理事長作成のこのガイドでは、単純にGFR値で分けた6段階のみを用い、よりカラフルに色分けしている点が特徴的。CKD患者に高齢者が多いことを考慮し複雑な図は避けたのだという。このわかりやすい図を患者やスタッフとの共通言語と位置づけ、個々の状態については繰り返し口頭で話す。

中村理事長は、CKD患者にはステージの軽い段階から「食事療法入院」と称して、いわゆる教育入院をすすめている。「早期から、段階ごとに入院していただき、食事や薬の調整、運動療法を受けていただければ、年単位で透析導入を遅らせることができますから」と中村理事長。食事療法入院の期間は2週間が基本。各種調整や指導のための入院ベッドをしっかり2週間確保できるのも、専門病院の強みだ。

6. 今後の課題・展望 介護施設開設で高齢患者のニーズに対応
「腎臓病なら小倉第一病院」と呼ばれるような存在に

中村理事長は新築移転を機に通院が困難なCKD患者の訪問診療も開始した。「CKDの発症から最期までトータルにかかわりたい。その一環として、通院できない患者さんのもとへ私たち医師が出向くのは自然なことのようにも思います。当院をこれまで支えてくださった地域や患者さんへの感謝の意味も込めて、これからもできることはどんどんやっていきたいと考えています」と思いを語る。

サービス付き高齢者向け住宅を併設したのもそんな思いからで、比較的自立度は高いものの自宅での生活が難しい高齢患者の受け皿として病院5階に開設した。さらに、より状態の重い透析患者を中心に受け入れる介護施設の開設計画も進めている。

今後は自身の腎機能の悪化にまだ気づいていない患者の発掘に一層の力を注ぎ、早期介入と透析予防に努めていく方針。一方で、透析導入となった患者には、引き続き幅広い選択肢を提示し、その人に合った透析医療を末長く提供していく考えだ。発症からの継続性を高めるためにも腎臓内科の受診者数、自院での透析導入件数、HHD、PD、PDの訪問診療件数などすべてを増やしていくのが当面の目標。そうした患者たちが安心して暮らせる住居を求めた際には、上記のような施設で受け入れたいと考えている。

目指すのは、「腎臓病なら小倉第一病院」と呼ばれるような存在になること。そのための挑戦はまだまだ続く。

※循環器内科の野坂医師は2022年8月末に退職。

KKC-2022-00788-2

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