KYOWA KIRIN

このサイトは、日本国内の医療関係者(医師、薬剤師、看護師、技師・技士等)を対象に、弊社が販売する医療用医薬品を適正にご使用いただくための情報を提供しています。国外の医療関係者、一般の方に対する情報提供を目的としたものではありませんのでご了承ください。
このサイトのご利用に際しては、協和キリンメディカルサイトのご利用条件が適用されます。

公益社団法人東京都教職員互助会 三楽病院
[乾癬治療最前線~患者とともに歩む~]

2022年10月18日公開/2022年10月作成

印刷用PDF

  • ●病院長:和田 友則 先生
  • ●開設:1933年
  • ●所在地:東京都千代田区神田駿河台2-5

診療科の狭間で取り残される
関節症性乾癬を掘り起こす

三楽病院皮膚科では地域医療の担い手として皮膚科全般の治療に取り組みつつ、日本皮膚科学会乾癬生物学的製剤使用承認施設として乾癬治療にも注力する。近年は診療科の狭間で取り残されている関節症性乾癬(PsA)の患者を掘り起こし、治療に早くつなげることに熱心に取り組んでいる。

1. 地域における役割 地域医療のニーズを満たすため
医療連携の拡充に力を入れる

三楽病院は、教職員有志によって組織された互助会を母体とし、1933年に交通の便の良さもあり神田駿河台に教職員のための医療機関として開設された。しかし、1988年には保険医療機関の指定を受けて職域病院から一般病院に転換したため、現在は近隣で暮らす住民や周辺の職場で働く勤労者の受診者も増えている。ただ、全体的には退職者(元教員・学校関係者)の割合が圧倒的に多く、患者の大半を高齢者が占めている。

こうした背景の中、一般診療においては二次救急医療機関や労災指定病院の役割を果たす一方、近年は地域医療の充実と医療連携の拡充にも力を入れている。内科を中心に機能性と機動性のある診療体制を構築し、千代田区や中央区と協働しながら在宅医療後方支援事業にも熱心に取り組んでいる。

さらに早くから総合健康管理事業を展開し、一般健診、学校健診、保健指導などさまざまな場において、メンタルヘルスサポートを含め、心身両面から健康維持・増進、疾病予防などのニーズに応えている。

2. 皮膚科の役割と特徴 皮膚科全般の治療に対応しつつ
皮膚腫瘍や乾癬治療を得意とする

川嶋 智彦 皮膚科科長

川嶋 智彦 皮膚科科長

皮膚科では、川嶋智彦科長を含め2名の常勤医と3名の非常勤医で日々の診療に従事している。地域医療のニーズに応えるために一般的な皮膚疾患から皮膚腫瘍、色素異常症(しみ、あざ等)、美容皮膚科まで幅広く診療できることをモットーとする。増加傾向にある皮膚腫瘍の早期診断・早期治療にも重点を置き、外来手術や良性腫瘍に対する高周波メス・炭酸ガスレーザー治療を積極的に実施している。また、外傷治療、しみやあざに対するレーザー治療も得意とする。

美容皮膚科に関しては、いわゆる美容外科とは異なり、皮膚科の保険診療では提供しにくいスキンケアのみを行い、エレクトロポレーションやケミカルピーリング、外用療法などを提供している。

乾癬生物学的製剤使用承認施設にも認定されており、乾癬治療にも注力する。同科に通院している乾癬患者は数百名(PDE4阻害剤約200症例・生物学的製剤約50症例/2022年5月現在)。東京都内が中心だが、埼玉県や神奈川県などの隣県から受診する患者も少なくない。多くは乾癬の確定診断がついていない紹介患者だが、地域の皮膚科診療所から専門的な治療(生物学的製剤の導入など)を依頼されることもある。また、内科診療所から皮疹や強いかゆみを主訴に紹介されてくる患者も多い。

川嶋科長が力を入れているのが関節症性乾癬(以下、PsA)の早期発見・早期治療だ。この取り組みは川嶋科長の個人的な体験がきっかけになったという。「実は私の身内がこの疾患に罹患していたのに長い間診断がつかなかったのです」と川嶋科長は打ち明ける。

川嶋科長のご家族はステロイド外用薬・内服薬に異常な抵抗性を示す難治性重症アトピー性皮膚炎という診断のもと30数年以上にわたって治療を受けており、さらに原因不明の関節リウマチに似た関節症状にも悩まされていたというのだ。あるとき、ふと川嶋科長が家族の爪を確認すると、典型的な爪乾癬であることに気づいた。「その瞬間すべての点が線でつながりました。乾癬の治療薬(PDE4阻害剤)の服用をすぐに開始したところ、関節を含めて症状が改善したのです。私の患者さんの中にも同じような状況で苦しんでいる人がいるに違いないと思いました」(川嶋科長)。

3. 乾癬における診断ポイント 手指の爪を丁寧に診察し、
PsA患者の早期発見に努める

川嶋科長は、乾癬・PsAに罹患しているにもかかわらず診断がついていない患者のことを"隠れ乾癬患者"と呼んでいる。「いわゆる極軽症(BSA〈皮疹が体表面積に占める割合〉が1%にも満たない)の乾癬皮疹と軽微なPsA症状がある患者のことを、個人的にはそのように認識しています」(川嶋科長)

隠れ乾癬患者にはさまざまな主訴があるため、最初は乾癬に罹患しているとは皮膚科医も気づきにくい。乾癬罹患を疑う主訴があり、ステロイド外用薬に抵抗性があるなど治療がうまくいかない場合は乾癬を疑うことが可能だが、川嶋科長によるとPsAを見抜くポイントは爪だという。「患者さんの利き腕側の手指の爪を必ずチェックし、点状陥凹、横溝、脆弱化、白斑、爪甲剥離、線状出血、Oil Drop Sign(油をたらしたような点状の班)、爪甲下角質増殖、Red Lunula Sign(赤い爪半月)といった爪乾癬の代表的な病変がないかどうかを確認しています。皮膚と関節の接続部位はまさに爪といっても過言ではなく、PsAを早期に発見するうえで欠かせないポイントです」。

同時に川嶋科長はへバーデン結節様の手指関節の変形、腫れ、こわばりの有無のほか、腱鞘炎、肩関節周囲炎、首の痛みなどの併存症状についてもClosed Question(選択肢のある質問)で問診し、短時間でPsAをスクリーニングすることを心がけている。「特徴的な爪所見があれば皮膚科専門医であれば診断はおおよそ視診のみで対応できると考えますが、判断に迷うときは皮膚生検も考慮しています」と川嶋科長は説明する。

血液検査については、現時点で検査可能なバイオマーカーがないため、積極的に行わないが、Th2・Th1免疫バランスの間接的評価、白血球分画の確認、炎症所見の評価、関節リウマチの除外・合併有無の確認などを目的に行うこともある。さらに関節症状を評価する際には必要に応じて皮膚エコー検査を併用しつつ、判断に迷う場合はリウマチ内科や整形外科にコンサルテーションを依頼する。

「当院では早期発見に力を入れていますが、一方で推定罹患期間が長いと思われる高齢患者が多いため、罹病期間の長さによりPsA発症リスクが上昇するという知見どおりPsA患者の割合が多いのが特徴です。だからこそ、皮疹が軽微で診断されていないPsAを見つけ出すことがとても重要であると考えています。というのも、落屑、鱗屑、紅斑といった典型皮疹が広範囲に出現すれば、誰でも容易に乾癬と診断することができますが、その段階で発見されてもPsAはさらに進行していることが多く、関節の変形もすすみ、原因不明の関節痛に長年悩まされ、患者さんのQOLが著しく低下してしまうことも少なくないからです」と川嶋科長は指摘する。

川嶋科長は診療科の狭間に取り残されているPsAを主とした隠れ乾癬患者を掘り起こし、その力になれることに日々の診療の生きがいを感じていると話す。

4. 治療のポイント 疾患の全体像と治療の見通しを示し、
患者のアドヒアランスを高める

患者は元教員や学校関係者など比較的インテリジェンスの高い層が多いため、重症度にかかわらず治療に対するアドヒアランスは良好で、例えば内服薬(PDE4阻害剤)の継続率は9割を超えている。ただ、症状が軽微あるいは皮疹をそれほど伴わないケースでは、外用薬を処方している患者は治療が中断したり一時的に症状が悪化したりすることを繰り返す傾向が強いという。

「治療を行う前提として、乾癬は慢性の全身性炎症性疾患であり、単なる皮膚の病気ではないことを、患者さん自身によく理解してもらうことが重要です。皮膚は内臓の状態を映し出す鏡のような存在であることを説明し、乾癬にはメタボリック症候群や心血管系イベント、ぶどう膜炎、炎症性腸疾患などの併発がよく観察され、それらの影響を直接的・間接的に受けていることもわかっていただくようにしています」

そのうえで皮疹が同じ場所にしつこく出現するのを防ぐために外用治療を継続することの重要性を説明している。つまり、「疾患の全体像と治療の見通しを示すことによって患者のアドヒアランスが高まり、治療意欲も向上します」と川嶋科長は指摘する。「といっても、なかには性格の問題から継続できない人もいるので状況に応じて皮疹悪化時のみ間欠的外用を可としたり、患者ごとにゴール設定を変えて対応したりしています」

また、外用治療から全身治療にステップアップする際にはQOL、費用対効果、費用負担、症例ごとのアンメットニーズ(潜在的な要求・需要)を考慮することを心がけている。中等症以上の場合は「外用治療を続ける自信がありますか」といった質問を投げかけ、患者の意向を確認する。「外用薬を毎日塗ることがストレスになっている、なかなか完治せず治療の終わりが見えないことに疲れているといった悩みがあれば、薬剤費がやや高くなることを説明したうえでリスクベネフィットバランスにすぐれた内服薬(アプレミラスト)を提案します。それでもコントロールが不十分であれば、費用負担がほぼ同等の生物学的製剤の必要性を説明し、納得された患者さんに導入しています」と川嶋科長は薬剤選択の方針について語る。

5. 乾癬治療における展望 他科との連携を視野に入れながら
治療の介入に寄与していきたい

一方、根本的には完治しないことがわかると治療意欲が低下する患者もいる。そのような場合には誘因(生活習慣、体重、食生活、メタボリック症候群)が改善すれば乾癬そのものも軽快する可能性を強調し励ますようにしている。

こうした患者サポートにおいて頼りになるのが外来看護師だ。診察の待ち時間や生物学的製剤の自己注射指導のタイミングを活用して患者の話を聞いたり相談を受けたりしている。「医師に話しづらいことも看護師には言えるので、患者さんのアンメットニーズ(満たされていない要求)を満たしてくれていると思います。また、看護師は比較的ゆっくり対応できるため、製薬企業などが制作した患者さん向け資料を用いて簡単な食事指導や健康指導も行ってもらっています」と川嶋科長は説明する。ちなみに、患者には日本皮膚科学会が認定する皮膚疾患ケア看護師の資格を有する看護師(2名)が対応しており、専門性の高い看護師が担当することにより医師業務のタスクシフトも図れているという。

「乾癬治療において皮膚だけを診ていればよいというのは過去の話です。重症例など最後まで治療できない患者さんはいるものの、皮膚科専門医である以上、他科との連携を視野に入れながら治療の介入に寄与することが重要だと考えています。そして、これからもこの姿勢を崩さずに乾癬の治療に積極的に取り組んでいきたいと思っています」と川嶋科長は抱負を語る。

全国の皮膚科においても例外なく高齢患者が増えている。川嶋科長の隠れ乾癬患者に対する診断のポイント、診療の実践は、乾癬とりわけPsAの早期発見・早期治療に取り組む皮膚科専門医の大きな力になることだろう。

KKC-2022-00643-1

乾癬治療最前線

おすすめ情報

  • おすすめ情報は、協和キリンのウェブサイトにおける個人情報の取扱い方針に基づき、お客様が閲覧したページのアクセス情報を取得し、一定の条件に基づき自動的に表示しています。
    そのため、現在ご覧いただいているページの情報との関連性を示唆するものではございません。

くすり相談窓口

弊社は、日本製薬工業協会が提唱するくすり相談窓口のポリシーに則り、くすりの適正使用情報をご提供しています。
弊社医薬品に関するお問い合わせは、下記の電話窓口で承っております。

フリーコール

0120-850-150

受付時間 9:00~17:30
(土・日・祝日および弊社休日
を除く)

※新型コロナウィルスの感染予防・感染拡大防止を全社方針として徹底していくことから、お電話が繋がりにくい可能性があります。

※お電話の内容を正確に承るため、また、対応品質の維持・向上等のため通話を録音させていただいております。あらかじめご了承ください。

お問い合わせ