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医療法人健栄会 三康病院
[透析施設最前線]

2022年9月13日公開/2022年9月作成

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病院外観
  • ●理事長:小野 秀太 先生
  • ●院長:山本 員久 先生
  • ●開設:1980年8月
  • ●所在地:大阪府高槻市野見町3-6

透析、泌尿器科、VAセンターが3本柱
グループ内の連携で大阪北部の地域医療に貢献

1980年の開院以来、透析医療をはじめ泌尿器・腎臓疾患の専門病院として地域医療に貢献。3つのクリニックとともに三康病院グループを形成し、主に北摂地域(大阪府北部)に暮らす人々に良質な透析医療を提供し続けている。一般的な外来血液透析のほか夜間・頻回・入院・腹膜・在宅血液透析にも対応するなど患者のライフスタイルに合わせた選択肢を提供。また、VAセンターを擁し、シャント造設から長期的フォローまで一貫して担っている。近年は教育担当部門を設置して人材育成に一層の力を注いでおり、それが全体的な医療の質、サービスの質の向上につながっている。

1. 病院の成り立ちと理念 泌尿器科専門病院としてスタート
理念は「良質な医療・健全な経営」

小野 秀太 理事長

小野 秀太 理事長

三康病院は1980年8月1日、三島医療圏(高槻市、茨木市、摂津市、島本町)でもきわめて稀な泌尿器科専門病院として開院した。創設者である小野秀太理事長が、開業の経緯を次のように振り返る。

「私は大阪医科大学(現大阪医科薬科大学)を卒業後13年間、恩師のもとで近代泌尿器科学を学びました。その後、バルセロナ大学に留学して泌尿器科全般の手術の修行を積んだのですが、そのとき見学した教授のプライベートクリニックに触発され、自分の病院を持ちたいと強く思いました。そして帰国後、恩師にわがままを許していただき、三康病院を設立したのです」

当初は小野理事長の経験を生かし、外科手術中心の医療を展開。開院後の2~3年間は、透析患者は10名前後で推移していた。しかし、透析のニーズが急速に高まったのを受け、1984年には外来血液透析専門の三康病院附属診療所(人工透析センター)を三康病院(以下、本院)から徒歩2分の場所に開設。その後も地域のニーズに応えながらサテライトクリニックを開設し、1999年に法人化した。

2011年にバスキュラーアクセスセンター(以下、VAセンター)を、2013年に腎臓内科を開設。2017年に電子カルテと透析支援システムを導入した。2020年には大幅な改装を行い、以前にも増して明るく、快適な環境を実現している。

「設立以来、良質な医療を提供し、健全に経営することに力を注いできました。さらに近年は、透析によって元気になり、長生きされる患者さんに対して、医療だけでなく介護や福祉も含めて提供し、その生活をサポートしています」と、小野理事長が変化する患者のニーズに対応する様子を語る。

2. 法人の概要 グループ4施設が三島医療圏に点在
幅広い選択肢を提示する透析基幹医療施設

山本 員久 院長

山本 員久 院長

医療法人健栄会では現在、本院(入院ベッド22床)をはじめ三康病院附属診療所、三康クリニック、三康診療所の3つの透析クリニックを運営。これらは高槻市と茨木市に点在し、地域密着型の腎泌尿器科として、また北摂地域の透析基幹医療施設として医療サービスを提供している。透析ベッド数はそれぞれ10床、61床、48床、54床である。2000年には、高齢化する患者の利便性を高めるため、北摂地域で初めてドア・トゥ・ドアの無料送迎サービスをスタート。送迎サービスの利用者は現在までに、患者全体の56%まで増えている。

「外来血液透析(HD)に関しては、3つのクリニックのどこでも同様の医療が受けられる環境にあり、患者さんに通いやすい施設を選んでいただいています。腹膜透析(PD)、在宅血液透析(HHD)なども患者さんのライフスタイルに合わせた選択肢を提供していますが、これらは専門チームで対応するため本院に集約しています。入院が必要な状態になった場合も本院で受け入れますし、シャントの造設やトラブル対応も本院の役割です。災害時など有事の際はもちろん、平時でも日々連絡を取り合い、グループ全体で協力し合えるのは当法人の強みであり、患者さんの安心感にもつながっていると思います」と同グループの特徴を紹介するのは、山本員久院長だ。

こうした体制を整えるためには法人全体での人材育成が不可欠で、看護師、臨床工学技士をはじめすべての職種で教育を重視している。送迎を担当するドライバーにも、看護師によるBLS(一次救命処置)指導、標準感染予防策の指導などを受けてもらっている。

ワークライフバランスの確保にも法人全体で取り組んでいる。特に看護部では、2015年に日本看護協会主催の「ワークライフバランス事業(WLB)」をスタートし、2018年5月には同協会から表彰を受けるまでに活動が活発化している。

3. VAセンター 地域の開業医と信頼関係を構築
グループ内外の患者を幅広く受け入れる

寺田 真也
VAセンター センター長

寺田 真也 
VAセンター センター長

2011年11月に本院内に開設したVAセンターは、グループ施設の患者だけでなく他施設の透析患者も幅広く受け入れ、シャントの造設、術後のフォロー、シャント狭窄に対する血管再建手術やPTA(経皮的血管拡張術)などを適切に提供し、地域全体から頼られる存在となっている。同院のような透析の基幹施設がVAセンターを持つことの意義を、寺田真也センター長が次のように解説する。

「一般に、シャント手術や狭窄時の治療を行うのは、総合病院だったりクリニックだったり、医師の専門も心臓血管外科、循環器内科、泌尿器科、腎臓内科などさまざまで、体系だったシステムがないように思います。その点、当院では造設からその後の検査など長期的なフォローまで一貫して行っていますし、緊急時にも電話一本で受け入れる体制ができていますので、グループ内外を問わず、腎不全の患者さんの治療の流れをつくる際に活用していただきやすいと感じています」

同センターの治療実績は2021年実績でPTA466件、シャント造設術はAVF(自己血管内シャント)50件、AVG(人工血管内シャント)24件である。これらの数字は近年、大幅に増加しているが、その背景には、同センターが地道に築いてきた地域の開業医との信頼関係がある。寺田センター長は2020年の就任以来、年末年始などに法人幹部と連れ立って近隣の医療機関を訪問し、VAセンターの取り組みを紹介しながら顔の見える関係をつくってきた。「当院のような専門施設は、困ったときに頼っていただけてはじめて力を発揮できます。だからこそ気軽に相談していただけることが大事なのです」と寺田センター長が言う。

シャント手術を行う手術室は、ブルーとホワイトを基調とした爽やかな内装で、局所麻酔下で手術を受ける患者の不安を和らげるような明るい雰囲気となっている。手術に際しては、事前に血管エコー検査を行うが、同院のエコー検査の技術は高く、造影検査などはしなくても閉塞部分が正確にわかる場合がほとんどという。

「当グループの放射線技師は、全身の画像検査をしっかりできることを目指して日々トレーニングを積んでいます。中でもエコー検査は個人の力量による精度の差が出やすい検査であり、特に力を入れています」と話すのは、教育部の宇野喜之部長だ。宇野部長は勤続23年の放射線技師でエコー検査のエキスパートでもある。

VAセンターには泌尿器科医である柳原一隆医師も在籍している。2名の医師は診察も手術も曜日などを限定せず、患者の都合に合わせて行っている。これらの日程調整などを担っているのは外来担当看護師だ。

「開業医や患者さんからの電話相談に応じ、状況を確認し、いただいた情報をセンター長と共有して日程を組みます。シャントの状態によって緊急手術か予定手術かを判断します。ご希望があれば送迎の手配もしますし、患者さんの病状に合わせて入院ベッドも確保します」と、看護部の柿原由美子師長が、VAセンターでの看護師の役割を語る。手術室を含めて外来担当看護師は全部で6名。柿原師長と同部の西村成子主任がこうした業務全体を統括している。

西村主任は、日本フットケア学会フットケア指導士の資格を持ち、同じ資格を持つ2名の看護師とともに「フットケア外来」も担当している。「患者さんが自分の足で歩けるように足を守りたい、という現場の声をきっかけに、2010年代半ばにフットケア外来がスタートしました」と西村主任。現在は社会医療法人愛仁会井上病院副院長で心臓血管外科専門医・修練指導医、フットケア指導士でもある谷村信宏医師に月に2回来てもらい、連携して処置・ケアにあたっている。

4. 透析医療 患者の希望や状態に合わせ
グループ全体で幅広い選択肢を提供

三康病院グループの透析医療の特徴として第一に挙げられるのは選択肢の多さである。外来HDはもちろん、PD、HHD、頻回透析、夜間透析、入院透析などを、患者の状態や希望に沿って行っている。

外来HDは、グループ内3つのクリニックで行っている。たとえば本院近くに建つ三康病院附属診療所は3階建てで、2階に32床、3階に29床の透析ベッドを持つ。透析スケジュールは午前(8:30-14:00)、午後(12:30-19:00)、夜間(15:00-22:00)で通院患者は約180名。外来HDは4時間が基本だが、5時間の患者も複数おり、本人の希望で頻回透析(週5回)を行っている患者もいる。

「透析装置はすべて同一メーカー製で大半が最新機種です。また、透析の質を上げるため、ほぼすべての装置をオンラインHDF(血液透析濾過)、IHDF(間歇補充型血液透析濾過)対応型にしています。5年ほど前に透析支援システムを導入してからは、記録や計算のミスがなくなり業務が効率化されています。さらに、2021年には透析液の作成が全自動化されましたので、臨床工学技士の仕事に余裕ができ、その分、看護師とともに患者さんを受け持ち、日々の体調管理をサポートするなど活躍の場が増えています」と、臨床工学部の中尾努技師長が紹介する。臨床工学技士の人数はグループ全体で25名。うち10名が三康病院附属診療所に勤務している。

同診療所の看護師は15名がシフト制で勤務し、日によって1~2名の担当者を決めて患者一人ひとりの観察や、何らかの症状のある人への対応などを行っている。「もともと感染性の疾患のある人、発熱など感染症の疑いのある人、検査で陽性になった人などは、2階の隔離透析室に入っていただいたり、時間差で透析を受けていただいたりします。患者さんの状態、たとえば血圧、自覚症状などはタブレットを使って入力しグループ内で共有しています」と、看護部の高市恵五看護師が説明する。

高市看護師は日本腎臓リハビリテーション学会認定腎臓リハビリテーション指導士でもあり、グループ内に腎臓リハビリを広めるべく、有酸素運動とストレッチなどを組み合わせた運動療法の仕組みづくりや対象患者の選定を進めている。

透析患者の高血圧や糖尿病に関しては、それぞれ外部の専門医を月に2回ずつ招き、看護師が専門医の回診に同行することで適切に管理している。看護部の植西直美主任によると、すべての透析患者に定期的にさまざまな検査を受けてもらい、その結果を専門医に見てもらってアドバイスを受けているという。たとえば、心電図検査は心疾患のリスクによって3~4カ月に1回受けてもらい、循環器専門医に判断を仰ぐ。甲状腺機能については同様に糖尿病専門医に見てもらうといった具合だ。このほか、シャントエコーと心エコーは年に2回、頸部エコーは年1回、胸部CTは年1回、ABI(足関節上腕血圧比)はリスクによって3~6カ月に1回と頻度を定めている。こうした検査に漏れがないよう管理するのも植西主任ら看護師の役割だ。

HHDは2006年から本院のスタッフが担当して行っている。これまでにHHDを行った患者は通算9名。腎臓移植や体力低下などにより離脱した患者を除き、現在も3名が継続している。臨床工学技士で教育部の渡邉友也課長が、取り組みの経緯や成果を次のように紹介する。

「患者さんからの希望があったり、スタッフから見てHHDのほうが向いていると思われたりする場合に、事前の話し合いをじっくり行ったうえで、導入に向けて訓練を開始します。最初は穿刺に抵抗を示していた方でも、練習を重ねるとできるようになりますし、難しい場合はエコーを使って穿刺の場所や向きを示すことでコツをつかんでいただけます。導入後も本院の透析室で継続的にフォローしていることもあり、技術的な問題での離脱はこれまで1件もありません」

渡邉課長によると、HHDを行った患者は総じてそれ以前よりも元気になるという。「通院の負担がなくなり楽になった、自分の好きな時間を使える、うまくいかなければ翌日にやり直すこともできるなど、患者さんからもご家族からも喜びの声が届いています」と手応えを語る。

5. 感染対策 ICCの決定事項をICTが実践
看護師を中心に末端まで対策を徹底

感染対策は、決定機関としての感染委員会(ICC)と、実働部隊である感染対策チーム(ICT)で行っている。ICTのメインメンバーは、ICD(Infection Control Doctor /院長)、ICN(Infection Control Nurse)、薬剤師、臨床検査技師で、本院の各部門とそれぞれサテライトクリニックに配置したリンクナースとともに活動している。ICC、ICTともに、もともと月1回の活動日を設けていたが、2020年からの新型コロナウイルス感染症の流行に際しては、ICTにサテライトクリニックの看護師長を加えたメンバーで臨機応変に対応した。

ここで中心的な役割を果たしたのが、感染制御に深い関心を持ち、2019年に感染制御実践看護師(東京医療保健大学感染制御学教育研究センターが認定)の資格を自主的に取得した、看護部の谷掛真弓部長補佐である。

「透析患者さんは新型コロナ感染症による重症化率、致死率ともに高く、非常に緊張しました。一般には無症状の人も多かったので、まずは基本的な感染対策を徹底。それから、すべての人が感染している可能性があると疑ってかかり、迅速に検査をしてトリアージし、感染者や感染の疑いのある人は隔離することを繰り返しました。ウイルスに関する情報が変化するたびに対応策のフローチャートを改訂し、現場の末端までしっかり伝えることで、どうにか乗りきってきました」と、谷掛部長補佐が振り返る。

2022年に入って高齢者施設から入院した患者からオミクロン株が持ち込まれ、小さな伝播が起こったが、これも最小限にとどめることができた。山本院長は、「当グループのスタッフが発熱外来に匹敵するような対応を地道に繰り返してくれたこと、患者さんがスタッフの指導を守ってくださったことの成果だと思います」と感謝する。

コロナ禍を経験したことで、陽性者に関する報告がもれなく速やかに行われるようになった、ICTと薬剤部との連携が強化され治療薬の投与がより迅速になった、空気感染を強く意識し換気システムを見直したなど、感染対策はさらに強化されている。

6. 各部門の役割 それぞれの部門が明確な目標を持ち
常に協力し合って活動

先に山本院長が触れたように、日頃からグループ内で協力し合う体制ができていることは三康病院グループの大きな強みである。グループ内の連携においては、各部門が重要な役割を果たしている。ここで主な部門の概要や取り組み内容を紹介する。

・薬剤課
非常勤を含めて4名の薬剤師と1名の助手が在籍し、「透析患者さんへの安全で有効な薬物療法の提供」を目標に活動している。「いま特に目標にしているのは、医師の回診に同行する際のチェックリストの作成ができればと考えています。貧血、二次性副甲状腺機能亢進症、リン、カルシウム、アルブミンなどに関して、何をどう見ればよいかの指標を予め決めておくことで、回診を効率化できれば、薬剤師としてチーム医療にもっと貢献できると思うのです。他には、抗菌薬やTPN等について独自のマニュアルを作ることで、治療の均一化の一助になればと考えています」と、薬剤課の山本里佳係長が言う。

・栄養課
栄養課には3名の管理栄養士が在籍し、それぞれが「臨床」「給食」の役割を担っている。「臨床」を担当する管理栄養士は、患者の食事の内容や摂食状況と、体重、血液検査の結果などを総合的に見ながら栄養状態を評価し、栄養指導を行っている。「給食」を担当する管理栄養士は、たんぱく質や塩分を抑えつつエネルギーを十分に確保しなければならない保存期腎不全の患者には、低たんぱくご飯や粉飴ムースなどを活用した腎臓食を提供している。また、透析患者には、保存期の患者と同様の食事制限が必要であるものの、たんぱく質の制限がやや緩くなるので、高機能の炊飯器を導入し、ふっくら美味しいご飯の透析食を提供している。

3名の管理栄養士がともに大事にしているのは、栄養管理を持続するために、患者の心理に寄り添うこと。透析患者は一生治療を続けることの心理的負担が大きいと考え、そうした気持ちに理解を示すことも常に心がけている。食思不振やターミナルの患者には、本人や家族の希望や食事への思いを聞きとり、なるべく食べたいものを食べていただくように対応している。今後は、患者や患者家族の都合に合わせてオンライン栄養指導も行っていく計画だ。

・地域医療連携課
看護師(主任)、社会福祉士(SW)、2名の事務職が在籍し、患者の入退院支援などを行っている。「いろいろな問題や思いを抱えた患者さんとご家族に寄り添い、より良い着地点を一緒に探すことをモットーとしています」と、同課の高木一平SW。外来HDにかかわる地域連携には主に、他院で透析導入となった患者が同グループで維持透析を行う場合と、本院で導入した人が他の透析施設に移る場合とがある。高木SWは、「どちらの場合も何より情報共有が大切です。近年は特に通院手段の確認が重要で、歩行状態を確認するためにリハビリ職が作成した資料を確認したり、私たちが患者さんの施設見学に同行したりすることもしばしばです。足の悪い方が引っ越しなどで転院される場合は、送迎サービスのある透析施設を必ず確保します」と言う。

・医事課
グループ全体で10名の職員を擁する。「現在は、笑顔での窓口対応とインシデント予防を主なテーマとしています」と、同課の前田健五職員。「高齢になってから透析導入となる患者さんも多い中、笑顔で接することで安心感を持っていただきながら、各種制度や申請手続きの説明などを噛み砕いて行うようにしています。インシデント予防に関しては、医師の指示により透析条件や使用する薬剤が変更されたときに、間違いなく入力することに注力しつつ、定期的に内外研修に参加することで、意識の強化も図っています」と説明する。透析支援システムとレセコンが連動しているため各種請求業務は効率化されており、その分、対人業務に力を割くことができている。今後も診療報酬改訂をしっかり睨みながら、コスト削減、新たな加算へのチャレンジなどを続けていく方針だ。

・情報管理室
医療機関におけるICT(情報通信技術)の活用が進む中、2020年に設置された。診療情報管理と情報システム管理が業務の2本柱。前者については、診療情報管理士の資格を持つ山口弥生係長が主に担当し、記載内容から保管場所までカルテ本体をしっかりと管理するほか、各課から依頼される統計調査にも対応している。情報システムの管理は2名の職員が担当。現在は特にネットワーク環境の整備を進めている。「患者サービスの一環として、透析室にWi-Fiを完備しました。今後はICTが苦手な方でも活用できるように、サポート体制も整えたいと思っています」と山口係長が言う。山口係長は個人情報委員会の委員でもあり、セキュリティリスクに関する職員向け研修なども担当している。

・教育部
教育部は人材育成の強化を目的に2019年に本院内に発足した。現在のメンバーは放射線技師である宇野部長、臨床工学技士の渡邉課長、看護師の柴田由紀課長ら6名。「新人からベテランまで幅広い職員を対象とし、基本的な技術の習得や、新しい知識・技術の啓発、再教育、資格取得や学会発表のサポートなどを行っています」と宇野部長が紹介する。

渡邉課長は目下、エコー下穿刺の普及に力を注いでおり、まずは本院で少しずつ取り組みを進め、2022年からはグループ全体に広げている。「患者さんに協力していただいたり、コンニャクにストローを刺したものを使って練習を重ねたりして、皆で技術を身につけました。これにより穿刺の失敗がほぼゼロになり、患者さんにも喜ばれています」と渡邉課長が成果を語る。

柴田課長は、「医療機関で働く以上は専門職であるかどうかに関係なく、安全に仕事をすることが大前提ですので、医療安全にからめた教育に着眼しています」と話す。具体的には、転倒事故が起こった時、防犯カメラの画像で転倒前の行動を確認し分析したり、穿刺トラブルがあった時、全員の穿刺手技を動画で撮影しスタッフ全員でマニュアル通りに行えているか検証したりすることを重ねている。この方法だと、本人も含めて第三者の目で冷静に手技を見ることで、小さな問題にも気づく。「見えていること、思い込んでいることだけが事実ではないことに気がつくと、行動の仕方が変わってきます」と柴田課長は言う。

透析に関しては、透析室で行う業務をすべて文章化したチェックリストを独自に作成。経験年数に応じて到達目標を定め、他者評価、自己評価を行って個々の成長度合いを評価している。また、困ったときにはいつでも気軽に教育部に相談してほしいということを職員向けに繰り返し呼びかけ、一人で悩む職員がいなくなるように努めている。

7. 今後の課題・展望 求められるフレイル・サルコペニア対策
職員教育を強化しサービスの質をアップ

今後の課題として小野理事長、山本院長はともに患者の高齢化を挙げる。「いま、透析患者さんの2割程度は80歳以上で、90歳近くなって導入される方もおられます。そういう方々への介護や福祉を含めた対応は、今後も重視していきます」と理事長。「フレイルやサルコペニアの問題が顕在化してきていますので、リハビリテーションを強化するなど対策を強化できればと思います」と院長が続ける。

一方で、腎臓内科を中心に、透析予防にも努めていく方針だ。「今後も専門病院として質の高い医療・介護・福祉を提供し続けていきたい。そのためにも職員教育には一層の力を注いでいくつもりです」と小野理事長。透析医療のフロントランナーとしての同グループの役割はますます高まっていきそうだ。

KKC-2022-00688-2

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